この夜は冬の到来

2004-11-16 01:10:40 | 日記・エッセイ・コラム
0時を過ぎて帰宅(仕事で遅くなった)

帰り道。
朝から降っていた雨はすでにやんでいた。
湿った路面は街灯に照らされ、
その鈍い輝きの上を歩く。
吐く息は白く。道行く人もまばらに
静かな夜を演出していた。

坂道をくだり、交差点を抜ければ終着点。
寒さのあまり、駆け出したくなる衝動を
傘を持つ右手にたくし、私は傘を振り回した。

おもいっきり。

私の力が頂点を迎えるとともに、
傘に与えられた遠心力は、傘の柄の部分から先を
容赦なく奪っていった。
音もなく飛び
透明だと思っていた安物の傘は、
夜のしじまに真白な放物線を描き
その本来の役割とは別の終焉を迎えた。

ガラス窓にあたる音が響き渡り。
あの音ならガラスは割れてはいないと思いつつ
振り返ることなく無言の全力疾走で
私は坂道を駆け抜けた。

34度目となる冬の到来を感じたこの夜。
息も絶え絶え、35歳の到来も感じたこの夜であった。

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