7/2 (火) 晴れのち曇りのち雷雨
テントから顔を出すと晴れ間が見えた。ここだけぽっかりと雲がないようだ。キャンプ指定地から昨日歩いた忠別岳の頭が見えた。気持ちのいい朝となった。
隣人に挨拶をしてテン場を後にする。今日彼女は行けたら南沼、天気が悪かったらヒサゴ沼まで行き次の日にトムラウシにアタックするとのことだった。僕は南沼まで行く予定だ。
忠別岳避難小屋前の雪渓を横断して尾根を目指す。尾根からこれから向かう化雲岳方面が見えた。山はやっぱり晴れがいい。
五色岳を経て低いハイマツの登山道を抜けると木道が現われた。途中エサを求めて動物が掘ったと思われる穴があった。熊ではないかもしれないが、一度熊を見てみたいなと思う、近くではなく遠くからだ。
先に見えたのが化雲岳だと思ってこの写真の先の雪渓を登ったら違っていた。雪渓ではよくあることだ。雪渓を降って登山道に戻り先に進むと化雲岳への分岐に出た。
ようやく稜線の登山道に戻ると化雲岳のあたりに小さく人影が見えた。もしかすると忠別岳避難小屋のテン場で一緒だった人かもしれない。
トムラウシ山の頂まではもう少しだがガスっていて距離感が掴めない。
トムラウシの頂上に着いてホッとしたが周りは全く見えない。写真をLINEで家族に送って足早に下山する。
標高を200メートルほど降れば南沼のキャンプ指定地だ。半分ほど歩くと本降りとなってしまった。
キャンプ指定地は川の横にありどこも濡れていた。雨の降るなか少しだけ高い場所にテントを張った。浄水器を使って横の川で水をたっぷり汲んだ。その後濡れた服を着替えてご飯を食べて身体を温めた。何かを食べることは精神を落ち着かせてくれる。
その間にも雨は強まり雷雨となった。すぐ近くで雷が轟き、結露がボタボタ落ちるくらいの雨がテントを叩き続ける。風がないのがせめてもの救いだ。
しばらくするとテントの下を水がジャカジャカ流れてテントの中もビショビショになってしまった。ここは水の通り道だったようだ。なんてこった。結局明け方までスポンジで水を抜く作業を続けることになったのだった。
7/1 (月) 霧
朝起きると周りは霧に包まれていた。出発の準備をしているとテン泊していた一人の女性が近づいて来てどちらまで行かれますかと尋ねた。今日は忠別岳避難小屋であることを伝えると、同じ予定で今夜の宿泊が一人にならなくてなくてよかった、とのこと。
一人きりの野営はとても心細い。僕の場合、誰もいない場所での野営の緊張感が好きなのだけれど、全ての人がそうではないのだ。もちろんウェルカムなので、お先に行っていますと言って白雲岳避難小屋を後にした。
霧のため良くても視界は数百メートル、晴れていれば素晴らしい景色だろう。それはまた来たときのお楽しみだなと思い、足下の花を見つけながら歩いて行く。
蝦夷御山の豌豆 (エゾオヤマノエンドウ)
岩梅 (イワウメ)
猩々袴 (ショウジョウバカマ)
蝦夷鹿の足跡。羆 (ヒグマ) のいる気配はない。
細葉得撫草 (ホソバウルップソウ)
ホソバウルップソウは今回楽しみにしていた花である。丈の短いホソバウルップソウも咲いている。
綿菅 (ワタスゲ)
黄花塩竈 (キバナシオガマ)、日本ではこのあたりでしか見られないらしい。
稚児車 (チングルマ)
風雪に晒された道標は高原温泉を指していた。高原温泉は沼巡りのために訪れたことがある。その時の日記はこちら。
ただ霧の中を進んで行く。本当にただ進んで行く。
進行方向左側は急峻な崖になっているが下の様子は見えない。この下には綺麗な沼がいくつもあるのだ。
蝦夷の白山一華 (エゾノハクサンイチゲ)
駒草 (コマクサ)、コマクサは他の植物が生えていない砂礫地に生えている。砂礫の開拓者だなぁ。
黄花石楠花 (キバナシャクナゲ)、ホッとするの好きな花。
忠別岳山頂に着いたが何も見えず。向こう側は崖のはず。
忠別岳を下っていると茶色の塊が足元から前に跳ねた。かわいい蝦夷兎 (エゾウサギ) の子供だった。雨に濡れて寒そうだった、独り立ちしたばかりだろうか。
下りきって振り返れば霧が少し取れて忠別岳が現れた。
忠別岳避難小屋は稜線の分岐点から下った場所にあり、小屋まではハイマツとササの中のえぐれた道を行くので胸から下が再び濡れてしまった。小屋前の雪渓はかなり融けていてクレバスが多くジグザグに歩いて三角屋根の小屋に到着した。
小屋の前のトイレの前にテントを張るスペースはほとんどなかった。そこがテン場だと思ったので、今日は小屋に泊まるか、と小屋の扉を開けると若いメンバーのパーティーがトランプに興じていた。泊まる予定であることを告げると場所を空けてくれようとした。2階が空いているか聞いたところ空いているとのことだったので入り口横の梯子を使って2階に上がった。レインウェアを脱いでどこに寝ようかと考えていたのだけれど、小屋の中は暗い運動部の部室のようだったのでうーむと思った。解放的な場所で寝たいので、テント場はどこか彼らに聞くと下の方にあるとのことなのでそちらに移ることにした。
そこは雪渓前の小ぢんまりとしてとても静かな場所だった。これだよ、これ。とっても良い感じ。
テントを張る前に雪渓で冷やしておいたビールをいただく。フッフッフ、とはこのことだ。
それにしても今日はとても静かな山行だった。白雲岳の避難小屋を出てここに着くまで誰にも会わなかった。動くものは小鳥、シマリス、エゾウサギだけ。
それからしばらくして白雲岳で朝話した女性が到着した。やはりトイレ前のスペースをテン場だと思い、小屋の中の宿泊者にこの場所を聞いたとのことだった。
それから今回の山行を含めてひとしきり山の話で盛り上がり、やっぱり大雪はいいねと意見は一致した。
2019年はほとんど更新がなかったな、と少し反省をしました。そこで昨年2日分だけ書いて放っておいた大雪山・十勝岳連峰縦走のことを見直して完成させようと思います。
と言いつつつも今日はもう1月5日、明日から仕事となりました。まぁ、いいか、今年の冬休みは大晦日の夜から熱が出て体調を崩し、三が日を寝て過ごしたのだからと自分を納得させます。では行ってみましょう。
6/30(日) 晴れ
旭岳裏の黄花石楠花(キバナシャクナゲ)
何度か訪れたことのある北海道の大雪山と十勝岳連峰の山々、いつか北の旭岳から南の富良野岳まで歩いてみたいとぼんやりと考えていた。歩くなら今だな、今年の夏、大雪山・十勝岳連峰縦走に挑戦してみようと思いたった。
咲き誇る高山植物の花を見るためには7月中旬がベストかもしれないが、そこは予定が入っていたので6月末から訪れることになった。この時期は残雪と藪漕ぎが想定されるので余裕を持って5泊6日の行程を組んだ。
山旅が成功するかどうかは準備で決まると聞いたことがある。一度出発してしまえば後は現地でやりくりするしかないからだ。長旅なので出発の1週間前に準備を整えた。コース上に営業小屋はなく途中で食料を補充することはできない。テント泊装備と6日分の食糧に予備食、缶ビールとワインなどを入れて20kgを超える荷物となった。食料はギリギリの量だ。それほど多くの雪は残っていないようだったのでクランポンとアイスアックスは持たず、チェーンスパイクのみ持った。
前日、飛行機で旭川に入って登山口のある旭岳温泉までバスで移動した。その頃毎日雨が降っていて出発は当初の予定から2日ずらしたのだった。晴れていたら登山口でもテント泊にしようと思っていたのだけれど天気予報は雨なので宿にお世話になることにした。
朝起きて窓の外を見ると降っていた雨は朝には上がったようだ。晴れなくても雨にならなければいい。
前泊した大雪山山荘を出発する。登山者向けの宿で暖かく明るい女将がもてなしてくれ、お見送りまでしてもらった。
宿から数分のロープウェイ山麓駅からロープウェイに乗って姿見駅まで10分ほど、久しぶりに期待に胸が高鳴る感情を覚えた。空は雲に覆われていたが旭岳はしっかり見えた。
さぁ、行こうか。これから数日山に入るかと思うと顔がにやけてしまう。旭岳を目指す登山者は結構いたが大きな荷物の登山者はいないようだった。まだ縦走は盛期でないからだろう。
天気予報は何だったのか、頂上が近くなるに連れ空が晴れて行った。これから歩くトムラウシ山、十勝岳連峰の山々が見えた。これを全て歩くのだと思うとテンションマックスである。
有名な金庫岩、本物の金庫なら相当でかい。旭岳の頂上はもうすぐだ。
旭岳の頂上までは人も多いが、そこから先へ行く人の数はかなり減る。長い雪渓が残っている旭岳裏をガシガシと下って行く。スキーやソリがあったら楽ちんだろうな。
千島金梅(チシマキンバイ)?の花にバッタが止まっていた。花の中は暖かいのだろうか。なんとかのキンバイって見分けが難しい。
峰蘇芳(ミネズオウ)、漢字で書いたら読めないな。
赤味を帯びたキバナシャクナゲ、厳しい環境なのでシャクナゲも大きくなることはない。
あー来てよかったと思える一瞬、それが何度も何度も訪れる。
お鉢平の縞々模様が美しい、左から北鎮、凌雲、桂月、黒岳。あちら側から見たお鉢平も美しい。
キバナシャクナゲの他、岩梅(イワウメ)も盛りであった。
蝦夷御山の豌豆(エゾオヤマノエンドウ)だと思う。
北海岳までの稜線は少し風が吹いていた。白雲岳の分岐に着く頃はすっかり曇ってしまったので白雲岳はパスした。
そこから少し行くと雪渓の向こうに白雲岳避難小屋が見えた。その左の雪渓を緑岳に向かうパーティーもいた。
白雲岳をパスしたので白雲岳避難小屋に12時45分に着いてしまった。ガラガラのテント場にテントを張る。この日のテン泊は全部で4張りだけだった。
テントを張ったらダラダラ、いやゆったりと過ごす。雪解け水で缶ビールを冷やして飲んだ。北海道でサッポロビール、ってどこでもサッポロだけど。
夕食はパスタ、ソースはコストコで買ったイベリコ豚のミートソース、これが毎日続くのだけれど飽きない味なのだ。
その後テン場には山岳部の団体とふた組ほどのテントが立てられた。山岳部の方々は大鍋でアルコール類を冷やしていて、その真ん中にスパークリングワインが鎮座していた。羨ましい限りだ。
盛り上がる隣人を他所に横になってラジオを聴いた。ここは驚くほどラジオが入るのだ。AIR-G' (FM北海道)を聴いていたらサカナクションの山口一郎さんが11日前にリリースされたニューアルバム「834.194」の全曲を紹介すると言うもの凄い番組をやっていた。山口さんの話を北海道で聴くことができて本当によかった。その後中島みゆきさんのアルバムを聴きながら眠りについたのだった。
スタートは申し分のない日となった。素晴らしい!