風になれたら

SUZUKI Bandit1250Sに乗って風になり
中島みゆきや渡辺美里を聴いて風になり
山を歩いて風になる

大雪山縦走 2021 2日目 山と花と熊

2021-10-31 | 徒歩の旅

7月13日(火) 曇り時々晴れ

昨夜はよく晴れていたらしく、零時から2時にかけて星の写真を撮るために騒いでいた人達がいた。人気のある山ではマナーの悪い人がいるのは珍しいことではないが、星は静かに観るのが乙なのだ。

5:15に出発、今日の目的地はヒサゴ沼で、ヒサゴ沼までは休憩を入れて9時間ぐらい。

白雲岳避難小屋直下に金梅草の群生がある、多分千島の金梅草(チシマノキンバイソウ)だと思う。

雪渓を渡って緩やかな稜線を行く、あいにく霧だが晴れていたら切れ落ちた崖の下に点在する高原沼や広がる山塊を望むことができる。

砂礫地に咲く駒草(コマクサ)、雨で土が流されたらすぐに消えてしまいそうな所に生える開拓者だ。

蝦夷躑躅(エゾツツジ)、躑躅と言う漢字は書けない、読めない、と言うか細かすぎて老眼には塊にしか見えない。とても可愛らしいがこう見えてれっきとした樹木なのだ。昨年、一昨年と見ていないのでこれまたラッキー。

細葉得撫草(ホソバウルップソウ)、ウルップソウはもう花の盛りは過ぎてしまったようで、花が咲いているものは少なかった。

高根が原分岐、立ち止まると本当に静かだ。

綿毛となったチングルマ、綿毛は雄シベが変化したものだ。チングルマも小さいが樹木である。

御前橘(ゴゼンタチバナ)、白い花びら(花弁)に見えるのは葉が変化したもので総苞(ソウホウ)と言う。

でた!と思わずにはいられないコマクサの群生。ヤッホー!もう嬉しさしかない。

トウヒレンのような花だけれどなんだろう。

綿菅(ワタスゲ)

忠別岳に着いた。ここまで誰にも会わない、霧に包まれたとても静かな世界だった。

山頂は携帯電話の電波が届く確率が高いので家族に今の場所と今日の予定を伝える。登山届けを提出してココヘリも持っているが、遭難時に備えて現在地点を伝えておくことは捜索時の範囲を狭くするために非常に重要だ。

ココヘリは電波発信機の電波を捜索ヘリから探知するサービスだ。単独行なのでもしも行方不明になって亡くなってしまったとしてもココヘリで遺体が見つかれば失踪宣告を7年待たずに済むので、保険金とか相続とかすぐに受け取ることができるのだ。とは言え、大事なのは無事に下山することである。

おそらく高嶺塩竈(タカネシオガマ)

深山東菊(ミヤマアズマギク)

忠別岳を降りる頃空が明るくなった。真ん中にポチッと見えるのが五色岳、そこから右へ稜線を行く。

忠別岳を振り返る。今日の行程の半分ぐらいまでやって来た。少し晴れるだけで日差しが眩しい。

深山秋の麒麟草(ミヤマアキノキリンソウ)、キリンソウは太陽の光が似合う。

深山黒百合(ミヤマクロユリ)、初めて見るミヤマクロユリ、出会えてラッキーだ。

花弁が8個あるけれど、端取草(ツマトリソウ)だろう。花弁が7個がほとんどみたい。

五色岳から忠別岳を望む。ここまで何度かハイマツの中を歩いて来たが花粉が多くて身体もバックパックも黄色になっていた。おまけに朝露で下半身はビショビショである。とは言え、ここまでくれば息の上がる坂はもうないのでホッとする。

五色岳から再びハイマツの中を歩く。この先にあるプクッと膨らんだところが化雲岳。前が見えないハイマツやクマザサの薮を行くときはクマさん、これから行きますよ、と言う合図をしてから入っていく。合図をクマが受け取ってくれることを信じて両手に持ったトレッキングポールをカチカチとぶつけたり、熊鈴を鳴らしたりする。普段は熊鈴を付けることはなく、先の見えない藪の中だけ付けている。やっぱり山は静かに歩きたい。

トムラウシ山の頂は雲の中。

十勝風露(トカチフウロ)、チシマフウロの亜種で花弁が淡い紫色。

岩髭(イワヒゲ)、名前は可愛らしくないが花は可愛い。

化雲岳を過ぎてハクサンイチゲの広大なお花畑に差し掛かるとメチャクチャ獣臭が漂っていた。地面にはクマが掘った穴が多数。ゆっくりとお花畑を眺めていたかったが、出たな、と言うことでトレッキングポールで音を立てながら足早に先へ進んだ。後でヒサゴ沼で会った人に聞いたら丁度その頃、その辺りからヒサゴ沼へ続く雪渓をクマが横断していたとのことだった。

ヒサゴ沼分岐から少し入った岩場の手前にもクマが掘った穴がいくつも会った。とにかくクマも生きるのに必死で駆けずり回っているのだ。

雪渓に入ると霧である。ここは初めて歩くので端の方を歩いた。

霧が晴れて結構な傾斜の雪渓を下るとバーンとヒサゴ沼が現れた。

今日のテン場だ。水場はここに来る途中にあり、雪解けの水がジャンジャカ流れているので顔を洗ってスッキリした。後でビールも冷やした。流れの中でクルクル回るビール缶、幸せだ。

テントを張って1時間、雨が降ってきた。そして日没、霧が沼を覆い幻想的な景色となった。

今日の夕飯も昨日と同じく、ボロネーゼのパスタ。うーむ、献立に捻りが全くないが、軽量化と考えるのが億劫だったので毎日同じメニューなのだ。

今日は少しお疲れモードだった。久しぶりのテント泊なので1日で疲れは取れなかったのだろう。そして左の踵に少し靴擦れができていた。うーむ。

明日は荷物を軽くしてトムラウシ山ピストンだ。

 

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大雪山縦走 2021 1日目 山と花とビール

2021-10-29 | 徒歩の旅

7/12(月) 曇り

なぜ山に登るのか、それはなぜ仕事をするのかと言う問いと同じである、その答えは美味しいビールを飲むためなのだ。

旭川の空港に降り立ったのは再び東京に緊急事態宣言が発令される前日であった。

空港建物を出るとリスと思われるご当地キャラのあさっぴーが鎮座していた。右手に掲げるのは旭川ラーメンに違いない。

間違いがあってはいけないのであさっぴーについてネットで調べてみるとゴマフアザラシの男の子が憧れのホッキョクグマの姿に変身したとのこと。調べてよかった。

旭川空港からバスに揺られること1時間弱、旭岳温泉に到着だ。バスを降りて数分、登山者のオアシスである大雪山山荘に投宿した。

一夜明け、朝ご飯をお代わりし大雪山山荘を後にした。

ロープウェイで山麓駅から姿見駅まで10分、標高差500mを一気に上がる。片道券2000円に対して往復券は3200円とお得なのだが、有効期限は3日なので片道券を購入した。

そう、今回の旅は5泊6日で旭岳からトムラウシを往復するのだ。一昨年、昨年と旭岳から十勝連峰を縦走したので、今年は一休みして花を楽しもうと思ったのだ。一休みと言っても20kgはある荷物を担いで70km歩くので油断はしないようにしよう。

ロープウェイを降りて旭岳が見えてよかった。曇りでも山が見えるのと見えないのでは大違いである。ロープウェイに一緒の乗った人たちの中に縦走をする人はいなさそうで、旭岳まで行く人は何組かいたぐらい。今日は月曜日、静かな山行になりそうだ。

今年は6日しか山を歩いていなかったので体力はかなり落ちている、それでも旭岳の山頂まで2時間15分だったのでまずまずの出だしだ。

旭岳の頂上直下には黄花石楠花(キバナシャクナゲ)の群落があって好きな場所の一つである。

キバナシャクナゲの群生地の下にある雪渓を降りきれば裏旭のテント指定地だ。ここは泊まったことがないけれど、夜は満天の星を見られそうなので機会があれば泊まってみたい。

この辺りからお腹の調子が急に悪くなった。めちゃくちゃ痛い、そして襲いくる下痢の波の恐怖、下痢止めを飲んだが効く様子はなく、波は今日の宿泊地である白雲岳避難小屋に着くまで20回以上襲ってきたのだった。まぁ、携帯トイレを持っているので使えばいいのだが、初日から中身の入った携帯トイレを持ち歩きたくないので、小屋まで必死に我慢したのだった。

そんなお腹のこととは関係なく、道の脇には可憐な花が咲き誇っていた。霧の雫を従えた雌阿寒金梅(メアカンキンバイ)、とても涼しげだ。と言ってもここは下界の暑さを忘れるぐらい涼しい。

ここからしばらくお花をお楽しみください。

岩梅(イワウメ)

蝦夷の栂桜(エゾノツガザクラ)

稚児車(チングルマ)

白ではなくピンクのイワウメは珍しい。

荒井岳から北海岳の荒涼とした砂礫の稜線に現れた蝦夷高嶺菫(エゾタカネスミレ)、逞しい。

花咲く高山植物以外にこの時期に見られる残雪模様、ここはお鉢と呼ばれる場所である。

蝦夷岩爪草(エゾイワツメクサ)

雲間雪の下(クモマユキノシタ)

黄花塩竈(キバナシオガマ)

岩袋(イワブクロ)

エゾツガザクラと蝦夷の白山一花(エゾノハクサンイチゲ)

深山金梅(ミヤマキンバイ)

蝦夷小桜(エゾコザクラ)

鬱金空木(ウコンウツギ)

這松(ハイマツ)

青の栂桜(アオノツガザクラ)

高嶺女郎花(タカネオミナエシ)、別名は千島金鈴花(チシマキンレイカ) 

曇りなので遠くの景色は見られないが、足元の花を思う存分楽しみながら歩いて白雲岳避難小屋のテン場に到着した。

しかーし、ここまで下痢痛に悩まされてきたのでトイレに直行、九死に一生を得てトイレの有り難みを噛み締めた。

ここのテン場には清らかな雪解けの水が流れている。受付を済ませたらテントを張る前にビールを冷やす。

エゾノハクサンイチゲとエゾコザクラの向こうに残雪、疲れも忘れる良い景色。

夕方前、雲が散ってトムラウシ山が少しだけ顔を覗かせてくれた。

肩が痛いので確認したら痣になっていた。明日からはタオルを肩に当ててバックパックを背負うことにしよう。

テントを張って荷物を整理したらビールだ。つまみは柿の種、夕飯はボロネーゼのパスタ、野菜が足りないな。

 

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