京都に立ち寄った折、俗に「縁切り寺」と言われる寺があって参拝客が絶えないという
遠方からやってきて願をかける、世の中にはそれだけ縁を切りたい人間がいるということだろう
先般来報道番組を賑わせている元女優の方を見て、縁戚だというおばあちゃまのことを思い出した
引っ越して間もない頃、犬を飼い始めて近隣の公園に出かけてはギターを弾いたりして休日を過ごすことがあった
待たされている犬は迷惑だったかもしれないが、大きな樹木に囲まれてポロポロ爪弾く下手なギターは自分にとって一服の清涼剤
そこへお品のいいおばあちゃまがやってきて雑談に興じる
ハワイの音楽やギター奏法の話やら、やがて郷里の話になった
女優の彼女はおばあちゃまの姪にあたるらしく、訳あって私の郷里で育ったという
姪っ子を自慢するのでなくて決して幸せな生い立ちでなかった彼女を不憫に思う情が伝わった
家に帰ってからその彼女とは、ハワイの素潜りで知られた人であることを知った
人気TVドラマの小料理屋の女将で出ていた頃は、個性を押し殺したような雰囲気がぴったりだったように思っていた
そう、おじさん達はいつも小さな店で話を聞いてくれるもの静かな女性を求めているのだ
おばあちゃまはフラを楽しんでいるらしくて当地で演奏をやってほしいと言われた
もう愛犬は亡くなったし、あれから随分時間が経った
女優さんには会ったこともないし番組や報道、著書でしか存じ上げない
ただ何か断ち切りたい過去とのしがらみがあるような気がしてならない
あの時のあばあちゃまの顔に写った憂鬱は何だったろうか
MFSB - My One And Only Love