夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

ニューシネマパラダイス

2018年09月20日 | 映画


思い立ってシネマコンサートなるものに出かける
スクリーンにあのイタリア映画「ニューシネマパラダイス」が、ステージには東京フィルオーケストラのコントラバスが四台並ぶ

考えてみればサイレントからトーキーへと進化してきた映画は、活動弁士よろしくそもそも音声は「生」だったはず
やがて映像と音声は同期して流れる様になってきて、いつしかスクリーンの大型化とスクリーンミュージックの高音質化に慣れきっていた

近年の映画の音声トラックはどういう構造になっているのだろうか
心配していた映画のセリフや音楽と生演奏との切り分けは実にスムーズに行われていて、注視していないとオーケストラを見失うくらいだった

エンニョ・モリコーネの音楽は楽器の使い方が絶妙だ
ピアノ、コントラバス、ガットギター、バイオリン、管楽器、打楽器などの使い分けが、シンプルで効果的だ

この映画、劇場版と監督エディット版とがあるそうだ
恋人との再会までを描いた初版がヒットせず、回想まで短く再編集した劇場版が大ヒットしたという

「青春デンデケデケデケ」の私家版を出版した著者が、初版は編集されたが本音はこっちだと言っていたのを思い出す
初恋の人に会わないでおくのが美しいのかもしれないが、どんな結末であれ「好きだった」というのが作者の気持ちなのだろう

「海の上のピアニスト」というロマンチックな映画も同じ監督で、エンニョ・モリコーネの音楽だった
波のように繰り返すメロディは、洋上に浮かぶ客船のピアノとドラマを物語っていた

「三丁目の夕日」の音楽も美しい
映画音楽はチャップリンの「スマイル」のように、美しくあって欲しいと思う

登場人物のセリフや説明がなくとも、語りかけるような弦の響きは説得力がある
映画監督となった主人公が一人アルフレードの形見のフィルムを見ながら回想に耽るシーンは、この監督自身の姿なのだろう

社会的成功を手にしたトトが、村に帰ってくるなと言ったアルフレードの死を境に回想する
自分の人生とは何だったのか、30年帰らなかった村で目にした変わらなかったものと変わってしまったもの

人は何かを求めて生きている

Ennio Morricone - Cinema Paradiso (In Concerto - Venezia 10.11.07)

映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告



ハワイアンウェディングソング

2017年07月12日 | 映画


学生時代アルバイト先で知り合ったU君からは随分影響を受けた
田舎者の劣等生の私からは都会生まれの彼は常に前向きで眩しい存在だった

競馬、麻雀、パチンコ、トランプ、将棋、と何をやらせてもそつ無くこなし一家言持っていた
アルバイトで貯めたお金で二週間ほど白馬へ一人で旅するのが若い都会人の息抜きだった

そんな彼が部屋に置いていく大人向けの漫画雑誌に「釣りバカ日誌」が連載されていて、いつしか私もファンになっていた
鈴木建設の平社員ハマちゃんと社長スーさんの釣りを介しての痛快破天荒なドラマが当時のサラリーマンにウケた

やがて映画化されてみれば漫画のオリジナルとは別物ではあるもののこれはこれで面白い
西田敏行演じるハマちゃんはもとより三國連太郎のスーさんが映画の魅力を押し上げている

尾崎紀世彦さんがシリーズのどれかに出演していることは知っていたが、これまで映画を見たことはなかった
16作2005年の作だそうだが、動画配信サービスのおかげで今になって繰り返し見ることができた

ミュージシャンが映画に出ると大方歌っておしまい、みたいなことが多いのだが、これはストーリーの中にきちんと入っているではないか
基地の町佐世保のバーのマスター、歌うこととお店しかできない人という設定が尾崎さんにはまっている

尾崎さんが二階から降りて来てLPレコードに針を落とし、タバコをくゆらすシーンがある
LPレコードから流れる曲はどうやらハワイコールズあたりのコーラス「Old Plantation」だ

お店でバンドと歌うシーンがいい、テンガロンハットやカントリー風の衣装はもちろんウエスタンギターが似合う
お約束のハマちゃんや娘さん役とのデュエットもさりげなくコーラスをつけていて素晴らしい

開店前のお店でギターを爪弾きながら歌うのが「Hawaiian Wedding Song」、尾崎さんはこの曲をキー「E」で歌う
一般には「C」で歌うことが多いので2音高いことになる

キー「E」はギターの鳴りがいいオープンコード、確か「Pupu Hinuhinu」でも使われていたと思う
私の好きな彼の歌う「サマーラブ」はキー「F」だった

ネットで見つけた尾崎さんのインタビュー記事に寄れば「九州弁を五線譜に落としてメロディとして覚えて演じた」という
まさに尾崎さんらしい発想ではないか、少年のようにコメントしている姿が眼に浮かぶようだ

稀代のボーカリストが場末の酒場を経営しているという皮肉な設定は、彼が一曲歌えばどこかへ吹き飛んでしまう
娘の結婚を象徴する「Hawaiian Wedding Song」が長崎の海を背景に流れるシーンを見て、大阪のスタジオでの尾崎さんを思い出してしまった

嗚呼、「Hawaiian Wedding Song」

釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪

エイト・デイズ

2016年09月18日 | 映画


フィルム公開にあたり音楽番組でよくとりあげられるビートルズ
白黒映画が当たり前だった頃の「Yeah!Yeah!Yeah!」娯楽映画だが楽曲の完成度の高さに驚いたものだ

ハンブルク時代のライブ経験が、彼らの演奏スタイル、サウンドの確立につながったとする説が一般的だ
新宿のライブスポットでも酔客にビールをかけられるなど当時の環境は、否が応でもウケる音楽をやるきっかけになる

「Eight Days a Week」を聴き返すと4人の役割分担がクリアになる
ベースのグルーヴ感、安定したドラム、12弦ギターの響き、サイドギターのカッティング、、と

後半ライブをやめてレコーディングに専念するようになるが、彼らはライブをきっと楽しんでいたに違いない
モニタースピーカーもない時代、歓声で打ち消された音を想像しながら演奏したという

ジョンとポールに対しジョージとリンゴを別扱いしたい向きもあるようだが、この組みあわせがいいのだ
ハーモニーやグルーヴの観点からベストだと思う

「Eight Days a Week」
心に残る音楽をやりたいものだ


Eight Days a Week by The Beatles - Digitally Remastered Stereo

子孫たち

2016年08月03日 | 映画


久しぶりにお会いしたNさん、映画「ファミリー・ツリー」のDVDを見てくださったという
もともとハワイ好きではない方なのにわざわざ見てくれたのが嬉しかった

映画に出てくるハワイの景色と音楽、とりわけライブスポットの光景が印象に強かったようで「あんな店をやりたい」と
話はサウンドトラックに及んだので、改めて映画を見直してみた

ハワイ出身の女流作家の書いたストーリーは、ハワイ王朝以来の祖先伝来の土地売却を巡る葛藤と女性の視点で見た人間模様といった感
最初荒唐無稽と思われたあらすじは、回を重ねて見るごとにハワイらしさを感じてくる

入手したサウンドトラック盤は冒頭のギャビィ・パヒヌイの「カマカニカイリアロハ」から始まる18曲が収められている
映画の最後に綴られている音楽データを見れば、倍近い楽曲が効果音のように散りばめられていることがわかる

実はこの効果音のような楽曲の詳細を知りたくてサウンドトラック盤を求めたのだが、何のことはない映画に書いてあったというわけ
ほとんどはシーンに合わせた意味合いの楽曲がセレクトされておりほぼハワイのミュージシャンたちの演奏で占められている

カウアイ島に祖先が残した土地を売却してその分け前を期待する親族たちがうごめく
しかし土地を換金化しないで守ってきた主人公は改めて祖父が作り父が維持してきた自然を守る道を選ぶ

ニュージーランドから渡ってきた英国人ロビンソン一族がニイハウ島を手にしてその自然と人々の暮らしを守ろうとしている
絶滅危惧種など何もしなければ滅びてしまうような植物を必死になって守る姿は強烈だ

さてライブスポットの光景は藁葺きのエキゾチックな小屋でと想像したら、大勢の地元の人たちがワイワイ飲んでいる壁際でトリオが演奏しているものだった
そうか、Nさんは演奏をありがたく拝聴するのでなくお店全体が一体となって楽しむ、そんなお店を目指しているのか

祖先の残した地に子孫が末長く住む
楽しもうという経営者の下に同好の士が集う、経済の原則はそう難しいものではないかもしれない




The Descendants (2011) Movie Clip HD


The Descendants - Ka makani ka ili aloha - Gabby Pahinui

Niihau - The Forbidden Island

伝説のミュージシャンたち

2016年03月25日 | 映画


プレスリーにご縁があって過去の映像を見ているうちにドラマーのKさんから映画を見たとのお便りが来た
「レッキング・クルー ~ 伝説のミュージシャンたち ~」という映画だ

予告編にはブライアン・ウィルソンやらフィル・スペクターの映像があるし、流れている音源はマーケッツの「Out of Limits」ではないか
これは見に行かなければと思っているうちに映画館の上映は今週にも終了するらしい

マーケッツのシングル盤を買い求めて聴いていた大昔、卓越した演奏技術に驚いた
ドラムスにしてもサックスやホルン、エレキギターのサウンドが出来過ぎだった

当時は表紙の裏に書かれた簡単な説明書きしか情報を得る術はなく、どうやらスタジオミュージシャンが集まってできたくらいしかわからなかった
もちろんスタジオミュージシャンがどのような生態の人種なのかも知らない時代だった

ティンパンアレイ、どうやら音楽を製造する工場街のようなところがあって曲を書く人、演奏する人たちが毎日仕事をする
そんなところでできたアメリカの音楽に一喜一憂しているアジアの片隅に少年がいた、というわけか

マーケッツのサウンドも1日何曲というペースで出来上がったスタジオミュージシャンたちの作だったのだろう
映画はどうやらそのスタジオミュージシャンの子息がフィルムをかき集めて15年とかの歳月をかけ何十万ドルかの製作資金をかけてできたそうな

音楽ものを作るには著作権という厄介なものがあってハードルを上げる
著作権料が高いからレコーディングの選曲を変えようなどということが行われるくらいだ

ましてや「映画」というメディアに登場させるにはおそらく古い映像や音源をデジタル処理などするための費用がかかるのだろう
マニアは見たいと思うが、果たして一般人が映画館に足を運ぶのだろうか、という懸念もある


さてプレスリー、1957年頃のカントリータッチの作品があった
ジョニーキャッシュの番組にそっくりさんが出てこれを歌うというコミカルな映像があって聴衆がスタンディング・オベーションする

絶妙なコード進行と途中の台詞で泣かせる
エルビスのバラードだけ集めた映像がなんと100近くあるので驚いた

御多分に洩れずこれまではヒット曲しか聴いてこなくてごめんなさい
おそらくファンやマニアは全部情報を集めて聴いているのだろうなあ、と想像する

1930年代にできたこの曲、今聴いてなんの古さを感じない
いつか歌ってみたい

「君の胸の痛みがはじまるとき」を




映画『レッキンク?・クルー ~伝説のミューシ?シャンたち~』予告編

シェール 悲しきジプシー Cher Gypsies tramps and thieves

Andy Kaufman Does Elvis Presley