声は、その人となりを表現する大きな要素だ
見た目はもちろんだが、声を聴きながらその人の内面を想像する
音楽漬けの生活だった独身の頃、今でいえばTVを見るようにFM放送を聴いていた
TVは見なかったし、そもそも持っていなかったか
携帯電話はなかったし、インターネットもなかったあの時代
音楽情報をラジオで仕入れて、中古レコードショップへ探しに行く
片岡義男さんと安田南さんの「気まぐれ飛行船」は愛聴する深夜のFM放送であった
レコードをかけながら世界中を巡る片岡さんの話とお相手の南さんのやりとりがいい
静寂を邪魔しないような低い男声にお茶の間で相槌を打つような南さんの清楚な声
ジェットストリームの後の2時間番組、音楽をかけながら知的な世界が安らぎを与えてくれた
片岡さんはハワイ音楽を、それも当時としてはかなりマニアックな選曲で放送していた
一年がかりでLPレコードを録音していた私は片岡さんに手紙を書いた
レコーディング中の数曲をカセットテープに落としてこんなことをやっています、と
そして番組で私の手紙を読んでくださった
当時高校生だった志茂さんがこの放送を聴いていたそうだ
大学を卒業し渡米してギタービルダーとなった彼にお会いしたのはずっと後のことになる
一年後、メンバーと出来上がったレコードを持ってスタジオに向かった
バイクでやって来た片岡さんと小柄な南さんにそこで初めてお会いした
それから随分時間が経ち、南さんが替わられやがて番組が聴かれなくなった
南さんのジャズボーカルに触れたのは最近のこと、ライブを見にゆけばよかった
エンディングテーマに乗せて語られる南さんのおまじないを聴いて眠りについた諸君は多かったはず
「眠れ、悪い子たちよ」
AKATONBO / Fly me to The Moon Yasuda Minami 1975
合掌