夏の染色をひと月間やり終え、慰労も兼ねて先月末に都心まで会食に出かけました。
宮古上布に自作の半幅帯を取合せました。蒸し暑い日でしたが、周りの方にも涼しげに感じてもらえるよう心がけ取合せを考えました。
半幅帯の緯糸にベトナムの黄繭の節糸を使っています。
太細のある面白い糸で、光沢があります。
同じ経てで緯糸を変え3本織ったうちの試織用としての1本です。
この宮古上布は古いもので、身丈を出すために胴にハギを入れ仕立替ました。
苧麻の糸の細さを纏う時、まずは身の引き締まる思いになります。
蝉の羽を纏うような軽さです。色は黒に近い藍染です。
自然の恵みと人の手わざの極みに畏敬の念を抱きます。
宮古上布の新しいものは蝋引きしたような(糊付け後の砧打で仕上げる)照り、艶がありますが、この古い上布は何度も水をくぐった柔らかなマットな麻布の表情になっています。
宮古上布といえば高級織物の代表格で私などには分不相応としか言えないのですが、この素朴な丸紋のさっぱりした上布なら着てみたいと思いました。
新しいものの生産量も激減しているようですが絶やしたくない織物です。
気力、財力ある方は是非新しいものを着てほしいです!(^^)
宮古上布の詳細はこちらから。
古いインドネシアの蜻蛉玉があしらわれた帯締は村田染織ギャラリーオリジナルのものです。
自分の紬を着始めた頃、更紗の帯を村田さんで何本か頂きましたが、その時一緒に揃えました。
南方の蜻蛉玉は沖縄の染織品によく合います。
ピンクベージュの帯締めの色も、全体の自然な色相のハーモニーに溶け込んでいます。
日傘はムガシルクの薄茶地に辻が花染め。
写真では質感、色があまり出てないのですが、野蚕の立体感のある糸で織られた生地です。
荷物を一杯詰めた(~_~;)竹バッグはもちろん林まさみつさんです。繊細な夏着物にも安心して持てます。
麻の着物は帯回りを除けば暑いということはありません。
帯芯もかなり薄めのものを使い、緩めに締めています。
夏着物の上に伊達締めは締めません。
下着はヘンプ麻の肌襦袢とステテコにヘンプ×リネンの蚊帳生地タオルで汗取りをしています。ヘンプ蚊帳タオルもすぐれものです。このタオルを初めて手にした時、直感的に汗取りを思いました。
麻わた付などの肌襦袢も使ってきましたが、もっと涼しいです。構造的な違いです。
麻絽の長襦袢の上には麻の伊達締め。少しでも通気よい素材で工夫して着ます。
麻は人類が生きていく上で偉大で無くてはならない植物、繊維だと思います。
夏だけの素材と思っている方も多いですが、多孔質の繊維で冬は暖かさを保つことも出来ます。
着姿ページでも紹介しています。
2011年8月の関連ブログ記事もご覧ください。
それにしても温暖化を少しでも防ぐためには都心に木蔭を増やし、コンクリートやアスファルトで覆わない大地が増えるようにしなければなりません。
土地に対して緑化の義務化をもっとしてほしいとずうっと思ってます。
四季に恵まれた日本にとって一本の大きな木や街路樹、公園の植栽、ビルの屋上の緑化など、お金をかけてでも整備することは大事だと思いますし、一人ひとりの心がけで緑を増やすことは出来ます。もちろん生態系の配慮もしなければなりませんし、都市型の緑化は単純ではないとは思いますが、できることもたくさんあります。
人々が四季折々に街の自然を愛で、憩える場があることは日本の文化的豊かさの象徴です。
2020年、東京の真夏の最高のおもてなしは「緑蔭」だと思います。
過剰なまでの冷暖房、照明、利便性のみの追求。
東京は好きな街ですが、一歩外へ出ると都心は息苦しく ストレスに感じることも多いです。
集中豪雨、ゲリラ豪雨も多発していますが、環境問題は目先の経済より命に関わるもっとも重要な問題だと思います。
町田へ戻ると都心との気温の差を実感します。
窓を開け庭の緑をくぐり抜けた風に吹かれると暑さの中にもほっとするのです。
日々の暮らしでゴミをなるべく出さないよう工夫することも温暖化防止や自然環境を守ることにつながります。
紬塾でもそういったことも含めて話をしていますが、自然素材で着物を創ることや美しい着物を着ていくということは一人ひとりにそういったことの自覚がないといけないのだと思います。
日本の高度な手わざの夏の着物がなくならないよう切に願います。
今夏あと何回か夏着物を愉しむ予定です。浴衣も愉しみたいです。
とは言え暑さの中で着物を着るには覚悟も入りますが、無理は禁物ですね。
工房は本日より8月16日(水)まで夏休みになります。
お問合わせの返信なども17日からになります。
読者の皆様も残暑厳しき折、ご自愛くださいませ。