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森友問題 自殺した職員の人柄と亡くなる前の嘆き 2018.3.15 NEWSポストセブン・・・「すべてが明らかになってほしい。この死を無駄にしてほしくない」

2018-03-15 17:24:43 | 森友学園疑惑

 森友問題 自殺した職員の人柄と亡くなる前の嘆き

NEWSポストセブン https://www.news-postseven.com/archives/20180315_659959.htm

2018.03.15 07:00

まだ安倍政権は逃げの一手【まだ安倍政権は逃げの一手】

 国会では、安倍首相の責任問題や、麻生財務相の進退など、喧しく騒々しい事態が起きているが、その話の前に、1人の男性の人生に触れたい。青山久志さん(仮名)だ。

 岡山県の自然豊かなある町で生まれ育った青山さんは、地元の高校を卒業すると国鉄に入社。日本がバブル経済に向かっていた頃だ。経理部門の仕事をしながら、私立大学の夜間学部に通って勉強を続けて卒業。誰もが認める努力家だった。

 口癖は「もうええがなァ」。兄弟や友人がヘマをして迷惑をかけられても、いつも、まァ、もうええがなァ、と笑って許した。きまって友人の悩み事や身の上相談の聞き役だった。自分の弱音を吐くタイプではない。小柄だが、背筋がピンと伸びていて、歩くのが速くて、明るくてハキハキした性格だった。

 青山さんは1987年に国鉄が解体して民営化されると、大蔵省の中途採用試験を受けて合格した。ノンキャリアの公務員として、関西にある地方局だけでなく、東京・霞が関の本省で働いたこともある。

「本省は残業が多くて大変やけど、いろんなところで働いて勉強になったこともある」と笑顔で家族に語っていた。20代で結婚した同郷の妻とふたり暮らしで、子供はいなかった。結婚前は外食が好きだった青山さんが「家でご飯を食べるのがいちばん好き」というほど、妻は料理上手だ。

 趣味は書道。師匠に学んだ有段者で、書道家としての「雅号」も持つ。中国まで行って筆を買ってきたこともあった。

 建築家の安藤忠雄氏の熱心なファンでもあった。およそ15年前、兵庫県神戸市にある安藤氏デザインのマンションに空室が出ると、迷わず購入して引っ越した。住民の集まりにもよく顔を出す評判のいい夫婦。青山さんと同時期にマンションの管理組合の役員を務めた住民が語る。

「青山さんは活発に意見を言うかたでした。とてもオシャレで、デザイナーとか建築家とか、そういう職業だと思っていました。聡明で、自分のことよりもまず、“住民の和を保つためにはどうしたらいいか”を真剣に考えているかたでしたね」

 青山さん夫婦は、近隣住民とは毎年、バレンタインデーのチョコレートを交換していた。今年の2月14日も、妻が近所にチョコを届けた。

 ──3月7日の夕刻。近所の学校の生徒たちが帰宅する時間帯のことだった。マンションの前に救急車が止まった。救急隊員が青山さんの部屋に入っていき、ストレッチャーに乗せた青山さんに人工呼吸と心臓マッサージをしながら、急いで病院に運んだ。しかし、青山さんは帰らぬ人となった。働き盛りの54才だった。

 10日午前10時、岡山県の山中にある斎場。火葬炉があるだけの小さな施設で、妻が棺に向かって泣き崩れていた。

「憔悴しきった表情で、『どうしてこんなことになったのか』『夫は巻き込まれてしまった』と唇を震わせていました。悲しさのなかにも悔しさと怒りが入り交じっている様子でした」(遺族の知人)

 気さくで、正義感が強い、ごく普通の公務員だった。趣味があって、家族もいた。なのに、なぜ青山さんは自ら命を絶たなければならなかったのか──。それについては詳しく後述しなければならないが、まず言えることは、青山さんは日本の政治の歪みを一身に引き受け、犠牲になったということだ。青山さんの家族が言う。

「すべてが明らかになってほしい。この死を無駄にしてほしくない」

 青山さんの部屋からは遺書が見つかった。この1年間、日本の政治を停滞させた「森友問題」は、この遺書をきっかけに、ようやくその深い闇が暴かれようとしている。しかし、それは青山さんにとって、あまりにも遅かった。

◆「100時間の残業」「異動が叶わなかった」

「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員もやめる」

 そう啖呵を切ったのは安倍晋三首相(63才)だ。昨年2月17日の国会での発言だった。発端は、大阪市の学校法人「森友学園」が9億円以上と目される国有地をタダ同然で入手したことだ。

「総理夫人の昭恵さん(55才)がその土地の新設小学校の名誉校長を務めていたり、国有地売却をめぐって財務省に問い合わせたりしたことから、総理や昭恵夫人が政治的な圧力をかけたり、口利きしたのではないかと疑われました。昨年3月の証人喚問では森友学園理事長の籠池泰典氏が、『昭恵さんによる100万円の寄付』や『口利きの証拠となるFAX』という爆弾証言を連発して、さらに問題が注目されました」(全国紙政治部記者)

 しかし、安倍首相も、麻生太郎財務相(77才)も、財務省の担当責任者だった佐川宣寿・理財局長(当時、60才)も、木で鼻を括ったように「何の問題もない」という国会答弁を繰り返した。昭恵さんに至っては、国会で証言さえしていない。さらには野党の力不足もあって、“臭い問題にフタ”がされそうになっていた。

 朝日新聞が3月2日朝刊1面でこう報じたのは、そんなタイミングだった。


《森友文書 書き換えの疑い 財務省、問題発覚後か 交渉経緯など複数箇所》

 簡単に言うと、財務省が森友学園に土地を“激安な値段”で売ったときの「決裁文書」が改ざんされていたのではないか、という指摘だった。

「決裁文書は、『役所の決定とその理由』が書かれた重要な文書です。それを見れば、今回の森友問題の場合、どういう経緯で土地が安く売られたのかがわかります。安倍首相も麻生大臣も佐川局長も、“ほら、みなさん、決裁文書を見てくださいよ。何も問題はないでしょ?”とタカを括っていたわけです。しかし、その決裁文書が改ざんされていたかもしれないと朝日新聞が報じたので、今までの政府の資料はウソで、説明もすべてウソかもしれないとなり、国会が大騒ぎになりました」(前出・政治部記者)

 そんな渦中で起きたのが、前述の青山さんの自殺だった。亡くなった2日後の3月9日、《近畿財務局職員が自殺「森友」国有地売却を担当》(毎日夕刊)などと報じられた。

 青山さんは、財務省の地方局である「近畿財務局」で、森友学園に土地を安く売った部署に所属していた。昨年2月に森友問題が報じられると、問題の処理に追われ、国会対応のための本省への報告に追われ、取材窓口として殺到するマスコミ対応に追われた。昨年8月、青山さんは親族にこう語っていたという。

「ここ数か月、毎月100時間以上の残業が続いていて、体調を崩した。心療内科に通っている。『混合性不安抑うつ障害』と診断されて薬を処方されたが、薬が合わないのか夜も眠れない。体力的にかなりしんどい。財務省の夏の定期異動でも、希望をしていたが異動が叶わなくて残念だよ。どこまで頑張ればいいのか…」

 森友への土地売却に関係した職員はキャリア組を中心に次々と異動していき、残されたのは青山さんだけだった。その後、秋になると青山さんは休職を決断し、そのまま復職することはなかった。

「常識が壊れた」――親族の耳には、青山さんのそんな嘆き声が今でも焼きついている。親族が語る。

「彼からは“国有地を扱う仕事をしている”という以上の細かい仕事の話を聞いたことはありません。ただ、今振り返ると、心身共に病気になってしまうぐらい、きっと耐えがたいような“汚い仕事”をさせられていたのではないでしょうか。もしかして、『文書の書き換え』も強要されたのかもしれません。正義感と責任感が強い彼が『常識が壊れた』と話したのは、そういう意味だったと思います」

 森友文書の改ざん疑惑が大炎上すると、財務省は文書にかかわった職員からの聞き取り調査を始めた。

「休職中だった青山さんも急きょ呼び出され、3月6日に登庁したそうです。その翌日、青山さんは命を絶ちました」(政府関係者)

◆佐川氏は官邸による事実上の更迭

 警察が青山さんの死後すぐに「自殺」と断定できたのは、明確な遺書が残されていたからだ。捜査関係者が明かす。

「遺書は封筒に入っていました。財務省職員として森友問題にかかわり、どれだけ辛酸を舐めたかが克明に記されていました。森友問題を矮小化するためにどのように関与したのか、それが誰の指示で行われたのかはっきりと書かれていたんです。つまり、“財務省本省の指示によって決裁文書の改ざんをさせられた”と告白する内容でした。

 そして、遺書のなかには森友問題の財務省側の責任者で、青山さんの上司に当たる『佐川宣寿』というフルネームの記載があり、ほかにも3、4人の実名があったそうです。また、遺書が入った封筒には森友問題に関連する『重要書類』も同封されていたといいます」

 それに衝撃を受けたのは政府・官邸だった。自殺の翌日の8日には、当時の近畿財務局局長が官邸に出向いて対応を協議したという。

 翌9日には、遺書に名前のあった佐川氏が国税庁長官を辞任した。官邸による、事実上の更迭だった。

「政府は、“自殺の事実そのものを伏せられないか”と動いたようです。青山さんの存在を“揉み消そう”と企てたわけです。プライバシーの問題もあって、遺族が認めない限り、警察は死因が自殺であることを公にしないので、自殺が表沙汰にならないこともあり得ました。しかし、遺族の気持ちがそれに納得しなかったので、政府も“自殺を伏せるのは無理だ”と判断したようです」(前出・捜査関係者)

 そして事態は一気に動き出す。12日、財務省が森友文書の14か所の書き換えを認めて謝罪した。同時に、原文からどの部分を削除したのかを公表した。政治ジャーナリストの野上忠興さんが指摘する。

「安倍首相自身が“自分や妻が関係していたら議員辞職する”と国会で述べた通り、森友問題の核心は、昭恵さんの存在が土地売買に関与していたかどうかという点です。安倍首相は国会答弁でムキになって、昭恵夫人は私人であり、関与は一切ないと主張してきました。しかし、今回の森友文書の書き換えでは、『安倍昭恵』の文字が消され、国民の目から隠蔽されていたことが明らかになりました。決裁書に名前が載っているということは、土地売買において財務省の判断要素の1つ、つまり忖度があったと受けとめられても弁明の余地はないでしょう」

 森友文書にはもともと、籠池氏の発言として、

《「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人から『いい土地ですから、前に進めてください。』との言葉をいただいた。」》

 という記述があった。さらに、籠池氏が、《森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示》したという文言もあった。しかし、それらの言葉は財務官僚の手によって忽然と消されていた。

「もともと近畿財務局はムリな値引きを迫る森友側との交渉に乗り気でなく、契約破棄まで考えていました。ところが2015年9月に昭恵さんが小学校の名誉校長となると風向きが一変し、一気に交渉が進みました。決裁文書から昭恵さんの名前や『本件の特殊性』という文言を削除したことは、彼女の影響力がいかに強かったかを逆に物語っています」(前出・全国紙政治部記者)

 森友文書の書き換えが発覚し、この1年間、安倍首相や政府がウソの資料をもとに説明を繰り返していたことが明らかになった。それでもまだ安倍政権は逃げの一手を打っている。

「麻生財務相は会見を開き、“書き換えは佐川氏を中心とした財務省の一派がやったこと”と説明しました。官僚に罪を被せて、政治は逃げる、ということでしょう。組織のトップである財務大臣が不祥事を受けて責任を取るのは当たり前のことですが、平然と“まだ進退は考えていない”と言う。しかも、事実を隠ぺいする過程で、1人の役人の命が犠牲になりました。そのことをヘラヘラしながら会見で受け答えする大臣の姿を見て、国民はどう思うのでしょうか」(政治評論家・伊藤惇夫さん)

※女性セブン2018年3月29日・4月5日号

 

 

 


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