あんたはすごい! 水本爽涼
第百二十六回
「分かりましたよ、課長。そう向きにならなくてもいいです」
「なに云ってる!」
私は少し意固地になっていた。そこへ早希ちゃんがタイミングよく、割って入った。
「こちらは?」
「ああ…、会社の部下だよ」
少し偉(えら)ぶって早希ちゃんに説明する自分がいた。云ったあと、なんだか私自身がちっぽけな人間に見え、嫌(いや)になった。
「あっ、僕、児島っていいます。課長にはいつもお世話になってます」
「そうなんですか? 私、みかんの早希っていいます。是非、お店にいらしてね」
早希ちゃんは児島君にバッグの名刺を手渡しながら、愛想よい笑顔で云った。誰にもこの笑顔かい…と、私は自分がそう思われている訳じゃないんだ…と気づき、意気消沈した。
「ところでさ、君がなぜここにいるんだ?」
落ちつくと、最初の疑問がまたぶり返した。
「あー、そのことですか。なあに、友達の家がこの近くだからなんです。寄った帰りに神社があったもんで、そういや初詣してなかったなあと思いだし、お参りさせてもらったんですよ」
「なんだ、そういうことか」
「ええ、そういうことなんです」
私と児島君は顔を見合せて笑った。どうもこれは、玉の霊力による出来事じゃなさそうだ…と思うと、急に私の心は軽くなった。ところがそれは、玉の霊力が児島君をその気にさせた…というのが事実で、私はまだそのことに気づいていなかった。

第百二十六回
「分かりましたよ、課長。そう向きにならなくてもいいです」
「なに云ってる!」
私は少し意固地になっていた。そこへ早希ちゃんがタイミングよく、割って入った。
「こちらは?」
「ああ…、会社の部下だよ」
少し偉(えら)ぶって早希ちゃんに説明する自分がいた。云ったあと、なんだか私自身がちっぽけな人間に見え、嫌(いや)になった。
「あっ、僕、児島っていいます。課長にはいつもお世話になってます」
「そうなんですか? 私、みかんの早希っていいます。是非、お店にいらしてね」
早希ちゃんは児島君にバッグの名刺を手渡しながら、愛想よい笑顔で云った。誰にもこの笑顔かい…と、私は自分がそう思われている訳じゃないんだ…と気づき、意気消沈した。
「ところでさ、君がなぜここにいるんだ?」
落ちつくと、最初の疑問がまたぶり返した。
「あー、そのことですか。なあに、友達の家がこの近くだからなんです。寄った帰りに神社があったもんで、そういや初詣してなかったなあと思いだし、お参りさせてもらったんですよ」
「なんだ、そういうことか」
「ええ、そういうことなんです」
私と児島君は顔を見合せて笑った。どうもこれは、玉の霊力による出来事じゃなさそうだ…と思うと、急に私の心は軽くなった。ところがそれは、玉の霊力が児島君をその気にさせた…というのが事実で、私はまだそのことに気づいていなかった。