水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

雑念ユーモア短編集 (90)予想外

2024年05月30日 00時00分00秒 | #小説

 予想外のことが突発して起きたとき、雑念で迷うか迷わないかは、人それぞれによって違う。ドッシリと構える人もあれば、オタオタして右や左に動き回る人もある訳だ。この男、老舗うなぎ専門店の板長、大物は前者の一人で、ドッシリと腰を据えるでなく、板場で立ったままニヤけた。
「だ、大丈夫なんですかっ!? 板長っ!! あと、二十分しかありませんよっ!!」
「ははは…何をそんなに慌(あわ)てとるんだっ、小袋」
「だって、あと、二十分しか…」
 予想外の入った注文に、板前見習いの小袋は語尾を濁(にご)した。
「二十分もありゃ、御(おん)の字だよ小袋。十五分では少しきついが…」
 そう言いながら大物は、やり残した厨房作業をアレヨアレヨという間に処理していった。そして、およそ七、八分を残し、注文されたノルマをすべてやり終えたのである。この日のデリバリーを受けた注文は、うなぎの白焼きと特上のうな重[肝吸い付き]が、それぞれ十人前だった。^^ その料理は、配達店員により瞬く間にバイクで宅配されていった。
 予想外のことが起きたとき、どうするっ!? と雑念に惑わされることなく、動じないでドッシリと構える心持ちが大事なんですねっ!^^

                   完


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