告示日の20日は出発式を行っただけで都庁に戻った現職の小池百合子候補(71)。4月の衆院東京15区補選で、一部の政治団体から演説妨害に遭ったことを理由に挙げたが、現職らしく「公務優先」の姿勢を貫き、確実に支持を固める思惑もある。
公務は都庁に籠もるだけでなく、現場視察に重点を置く。同行するメディアを通じて、2期8年の実績や今後取り組みたい施策をアピールする狙いが透けて見える。街頭演説は週末が中心で、23日は奥多摩町のダムを視察後、JR奥多摩駅前など2か所で演説。2019年の台風19号の被害に触れ、「都民の命と暮らしを守る」と訴えた。
小池候補を自主支援する自民党や公明党は裏方に徹する。23日も応援でマイクを握ったのは、地元選出の自民議員でなく地元の首長だけ。自民都連幹部は「表には出ないが、各種団体に支援を呼びかけている」と明かし、公明関係者は「都議を中心に地方議員が支持層固めにフル回転している」と話す。
一方、前参院議員の蓮舫候補(56)は、繁華街での街頭演説に力を入れる。喉を痛めないよう、1日1~2か所のペースだが、本人が話す時間を多くとっている。
演説は告示直前に離党した立憲民主党が仕切る。「反自民」の姿勢を強調し、21日には萩生田光一・自民都連会長の地元の八王子市で、自民派閥の政治資金規正法違反事件を批判した。
こうした陣営の事情に共産側も理解を示す。ある共産関係者は「党所属の議員がそれぞれ駅頭などで蓮舫候補への支持を呼びかけている。党公認候補以上の活動量だ」と話した。
石丸氏はSNSで活動拡散、田母神氏は保守層を取り込み
街頭で最も精力的に動くのは、広島県安芸高田市前市長の石丸伸二候補(41)だ。毎日朝から夜まで30分刻みで演説場所を移動し、支持を訴えている。
狙いは知名度アップで、自己紹介や政治姿勢に多くの時間を割く。学生街や下町などターゲットを明確に絞り、23日はお年寄りに人気の巣鴨地蔵通り商店街(豊島区)で、「既存の政党に属さない人間が東京の知事になれば政治が変わる」と訴えた。
ボランティア約5000人がSNSを駆使して、活動ぶりを拡散しているといい、今後の演説では具体的な政策の比重も高める方針だ。
元航空幕僚長の田母神俊雄候補(75)は、保守層の取り込みに余念がない。告示日には、靖国神社(千代田区)を参拝してから選挙戦をスタートさせ、古巣の防衛省前でも演説した。その後も、保守系団体の関係者らが街頭演説に駆けつけて応援のマイクを握っている。
一方、原宿や池袋など若者が集まる繁華街では、若者向けの政策を強調し、政治への関心が低い層の掘り起こしにも力を入れる。23日は、住みたい街として人気の吉祥寺駅前(武蔵野市)で、「若い人たちの実質所得が増えるようにしたい」と演説。その後は商店街を練り歩き、記念撮影に応じていた
東京都知事選(7月7日投開票)で、候補者ごとの戦術の違いがはっきりしてきた。初の選挙サンデーとなった23日、3選を目指す無所属現職の小池百合子氏(71)は有権者の少ない地域から攻める「川上作戦」を敢行。無所属新人の蓮舫氏(56)は立憲民主・共産両党の国会議員と都心で街頭に立ち、党派色を強く打ち出した。
小池氏はこの日午後、公務で奥多摩町のダムを視察した後、同町内で街頭演説。「(奥多摩町を)元気な街として、日本中にもっと知らしめていく」と呼びかけた。
22日に八丈島を訪れたのを皮切りに、小池氏が進めるのは有権者の少ない地域から選挙戦に入る「川上作戦」。終盤にかけて有権者の多い都市部に繰り出し選挙戦を盛り上げていく戦術で、故田中角栄氏が得意とした。
また、告示前から現職として「公務優先」を明言している小池氏。公務に邁進する姿をアピールし、小池都政継続の必要性を印象付ける狙いがあるとみられる。陣営は公務の合間に街頭演説やタウンミーティングを重ねる方針だ。党派色を薄めてはいるが、水面下で支援を受ける自民・公明両党の関係者と連携し、票固めにも注力する。
無所属、オール東京を強調する蓮舫氏は連日、立民国会議員と都心を中心に街頭に立つ。選挙スタッフにも立民都議の姿が多い。4月の衆院3補選全勝の勢いをつなげようとしているのか、国政の構図を絡めながら支援を訴える。
蓮舫氏は23日、墨田区のJR錦糸町駅前で行った街頭演説で、自民の萩生田光一衆院議員を名指ししながら、自民派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を批判。その後、自民の支援を受ける小池氏の名前を初めて出し「自民と一緒になって都知事を目指す人に私は絶対に勝ちたい」と呼びかけた。共産との共闘関係も特徴だ。駆け付けた共産の吉良佳子参院議員が「何としても蓮舫都知事を誕生させよう。裏金政治、小池都政を終わらせる」と意気込んだ。
無所属新人で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)は、都心を小まめに移動しながら演説と練り歩きを繰り返す。港区の麻布十番商店街で行った23日の街頭演説では「これからの日本に大切なのは経済。経済強国を目指す」とした。市長時代から得意とするインターネットでの発信にも力を入れる。
「本当の意味での保守候補がいない」と出馬を決意した無所属新人で元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)は、公約や街頭演説も保守層を意識した内容が多い。「自虐史観教育の修正、教科書採択の適正化」「道徳教育の強化」などを訴える。23日は武蔵野市のJR吉祥寺駅前などで街頭活動を行った。
管理人「東京都選挙管理委員会は、2024年7月の小池知事の任期満了に伴う都知事選挙について、6月20日告示、7月7日投開票の日程で行うことを決めました。 2期目を務める東京都の小池知事は2024年7月30日に任期満了を迎え、公職選挙法では、任期満了の前の日から30日以内に知事選挙を行うことになっています