
11/28(土)、シネ・ウインドで「zk/頭脳警察50 未来への鼓動」を観てきました。
上映初日のこの日は、末永賢監督と頭脳警察のPANTAさん、そして急遽元メンバーの石井さんも登場!
予告編はこちら。
2019年で結成50年を迎えた、頭脳警察の活動、PANTAさん、TOSHIさんのこれまでの人生に密着したドキュメンタリー。
映画は、PANTAさん、TOSHIさんが、ともに戦後間もない1950年生まれという場面から始まります。
特に、PANTAさんのお父さんは米軍基地で働いていて、幼少期に聞いたプレスリーなどが最初の音楽との出会いだったそうです。
まず、この時点で、戦後生まれの少年たちと洋楽との出会いが、そのまま日本の戦後史と共に語られているんですよね。
そんな頭脳警察は学生運動の真っ只中の1969年にデビュー。
当時はグループサウンズやジャニーズのフォーリーブスの全盛期、1970年代になるとはっぴいえんどや、YMOや大瀧詠一などのニューミュージックの時代が到来する中、一貫してライブハウスを中心にパンクスタイルで活動。
頭脳警察というバンドを知ることで、1970年代の日本で流行した音楽の歴史も知ることができる、そんな映画なんですよね。
個人的に、僕はこの時代の、頭脳警察のようなパンクバンドも、はっぴいえんど、YMO、大瀧詠一などのニューミュージックも大好きなので、映画を観ているだけで楽しかったです。
しかも何が凄いって、頭脳警察のパンクスタイルは、50年経った現在もまったく変わっていないのです。
当時を振り返って語るPANTAさんの、「売れなくても人に自慢できることをしたかった」という言葉がカッコよかったし、これは音楽以外の色んなことで大切にしたい考えだと思いました。
また、頭脳警察の政治的で過激な楽曲は当時の学生運動などをしていた左翼系学生から熱狂的に支持された一方、発売禁止などの事態に。
個人的に、2018年の「止められるか、俺たちを」に登場した若松孝二監督や、今年の「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」なども好きだし、当時の学生運動と政治や文化の関わりにすごく興味があるので、ここらへんはすごく興味深く見ました。
そんなわけで、頭脳警察はファンの熱狂が高まる中、1975年に一度解散しそれぞれソロで活動するも、ベルリンの壁崩壊後の1990年に再始動します。
そこで、印象的だったのは、ロシアがクリミア半島を侵攻した2014年にPANTAさんがヤルタでライブをして、イラク戦争を歌った「七月のムスターファ」を披露して反戦を訴えたことでした。
しかもそのライブを企画したのが右翼団体の一水会だったことに驚きました。
若い頃は左翼学生に支持された頭脳警察のPANTAさんを、右翼団体が応援する日が来るとは!
でも、考えてみれば、右翼と左翼で思想は違っても反戦の想いは同じだから一緒に行動できることもあるんだろうなと思いました。
右翼も左翼も本来は日本の平和と反戦の気持ちで活動しているんだなあということで、1969年の「三島由紀夫vs東大全共闘」を思い出したし、やっぱり最近ヘイトスピーチなどが問題になっているいわゆる「ネトウヨ」は右翼とは全然別物だよなあと思いました。
そんな頭脳警察、復活後の現代は若いアーティストと共に活動しているのですが、中でもPANTAさんは俳優にも挑戦したり(僕が見た映画だと「いぬむこいり」とか、やっぱりパンクを感じる映画に出ていましたね)、今まで以上に活発な活動が印象的でした。
最後は2020年に繋がり、コロナ禍の中で無人のライブハウスから生まれた新曲「絶景かな」の流れるエンディングが超カッコ良かったです。
そんな感じで、日本の音楽史、政治史、カウンターカルチャー史、サブカルチャー史とともに50年を駆け抜けてきた頭脳警察のドキュメンタリーで、まさに頭脳警察は歴史とともにあるんだなあと思いました。
デビュー時から親交のある加藤登紀子さん、影響を受けたという漫画家の山本直樹さんや浦沢直樹さん、ミュージシャンの大槻ケンヂさんやROLLYさんや佐渡山豊さん、クドカンさん、「愛国者に気をつけろ!」の鈴木邦男さん、最後はムーンライダーズの鈴木慶一さんからアイドルのアップアップガールズ(仮)まで、登場人物がやたら濃かったのも、それだけ歴史の深みを感じました。
何よりも初期衝動のまま活動を続けること、生き続けることのカッコよさを強く感じる映画でした。
自分も自分が思う表現を頑張って挑戦していきたいと強く思いました。

上映後には、末永賢監督と頭脳警察のPANTAさん、そして急遽元メンバーの石井さんも登壇して舞台挨拶。
PANTAさんは、最近の頭脳警察の編曲を担当したアーバンギャルドのおおくぼけいさんを絶賛していました。(2人とも「映像研には手を出すな!」が好きらしいです)
PANTAさんが話していたのですが、先程も書いたように幼少期に出会ったアメリカ音楽を愛する一方、頭脳警察デビュー時はベトナム戦争に対する反戦の気持ちなどもあり、アメリカに対しては一言で表現できない複雑な気持ちがあるという話が印象的でした。
また、ルイ・アームストロングがベトナム戦争の兵士に向けて歌った「What a Wonderful World」の曲の意味が、2020年に「絶景かな」を作った時に初めて分かったという話もすごく印象的でした。

実は映画にも多く出演しているというPANTAさん、10年間にも「ドキュメンタリー 頭脳警察」という映画の上映時にシネ・ウインドに来館されていたそうで、当時のサイン(最後の写真)が残っていました。
その後、末永賢監督は、2018年にシネ・ウインドでも上映された片嶋一貴監督の「いぬむこいり」に携わった際に、役者として出演していたPANTAさんと初めて出会ったそうです。

そしてこちらは今回のサイン。
ご来館ありがとうございました!