舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

ボクシングに人生を懸ける3人の、合計4時間 36分(!)の壮大なドラマ「アンダードッグ」観てきました。

2021-02-11 23:33:48 | Weblog


2/11(木)、シネ・ウインドで「アンダードッグ」を観てきました。





予告編はこちら。



チャンピオンの夢を諦めきれずボクシングにしがみつく晃を主人公に、過去に秘密を持つ龍太、芸人だがテレビの企画でボクシングに目覚めた瞬、3人のボクサーの物語を、前後編の合計4時間 36分で描いた壮大な人間ドラマ。
長いけど最初から最後までまったく飽きずに引き込まれました!

まず、晃はチャンピオン目前の試合で敗北した過去を持ち、選手生命のピークを過ぎても夢を諦めきれずに、そんな生き方に愛想を尽かした妻とは離婚し時々子供に会いながら、デリヘルの送迎の仕事をしながらボクシングにしがみつく、という、ボクシング以外に生きる道を失われたどん底の人生を送っています。
一方、大物俳優の二世タレントの売れない芸人の瞬は、テレビの企画でボクシングに挑戦し、最初はただのチャラい邪道ボクサーかと思いきや、瞬はボクシングに妻と父との関係の再生、そして芸人としての再起をかけ、負けたら芸人引退するとまで決め、まさかの周りが驚くほどの急成長を見せます。

そんな晃と瞬の試合が前半のクライマックスなんですが、晃は長年続けたボクシングのプライドや再起の夢や妻や子供への想いのため、瞬は芸人人生の再起と妻と父親への想いをため、二人とも絶対に負けられない試合となっていくわけです。
この、二人の想いと肉体がぶつかり合う試合の迫力、そしてたとえどちらが負けても人生の絶望が待っているが故に二人とも絶対に負けられないという試合のドラマは凄まじく、とにかく引き込まれました。

もう、前半の時点で最高!って思ってしまうレベルの面白さなんだけど、後半はさらにドラマが深くなっていくます。
前半から晃に何かと近付いてくる謎の若手ボクサーの龍太が、実は児童養護施設出身の元不良、さらに晃の職場のデリヘル嬢の車椅子の客との過去の因縁が明かされ、映画全体の群像劇としてのドラマにも広がりと深みを見せていきます。

今では妻が出産しいかにも優しいお父さんという感じの龍太が、過去には手の付けられない不良で、しかも龍太が更生しボクサーを目指すきっかけが晃だったことも明かされ、二人の運命が交錯していきます。
そんな中、龍太に恨みを持つデリヘルの客の復讐により、ある悲しい事件が起こってしまいます。

一方、晃も前半のある体験により、ボクサーを今度こそ本気で諦めざるを得ない状況にまで追い込まれていきます。
さらに晃の働くデリヘルが敵対するヤクザとの抗争の場となり、人生がさらに絶望のどん底まで追い込まれていきます。

そんなギリギリの絶望の中で、彼を陰ながら応援し続けていた息子の気持ちに初めて触れ、最後の挑戦に挑むことを決める晃。
それが、晃と龍太の試合で、これが後半の、そして映画全体のクライマックスとなっています。

前後編を通して、日本のアンダーグラウンドでバイオレンスとセックスが展開するダーティーな世界を舞台に、過去の後悔、家族との別れと再会、孤独など様々な業を抱え、ボクシング以外に道を断たれた男達のドラマが描かれる、そんな映画なのです。
そんな物語の最後の最後に、晃と龍太という重い過去を背負った因縁の試合が描かれるのですが、最後の最後に絶望の淵で見つけたかすかな希望みたいなものが描かれ、心から感動してしまいました。

そんな醜さも弱さも抱えて人生の限界に挑む3人のボクサーを、森山未來、北村匠海、勝地涼が体当たりで演じているのですが、3人とも肉体もボクサーとしての身のこなしも背負ったものを表現する繊細で深みのある演技も本当に素晴らしく引き込まれました。
武正晴監督、足立紳脚本の「百円の恋」コンビの新たな傑作!素晴らしかったです!
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