舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

りゅーとぴあ能楽堂「いとうせいこう能トーク」見に行ってきました。

2025-03-09 12:45:17 | Weblog


3/8(土)、りゅーとぴあ能楽堂で開催された「いとうせいこう能トーク」を見に行ってきました。
ラッパー、俳優、作家など幅広く活躍しているいとうせいこうさん、最近は能の現代語訳も行っているそうで、「能十番―新しい能の読み方―」の刊行を記念したトークライブ。

個人的にいとうせいこうさんが好きで、聞き手のラジオパーソナリティの遠藤麻理さんも好きだったので、とても楽しみにしていました。
会場のりゅーとぴあ能楽堂はかなり満席で、最初から最後までとても和やかな雰囲気でした。

まず、いとうせいこうさんの能に対する情熱がすごい!
なんと、能を実際に習いながら独自に研究もされて、それが今回の出版に繋がったそうです。

芸能人として活躍しながらどこにそんな時間があるのだろうと感心してしまい、たいして何もしていないのに時間がないと嘆いている自分が恥ずかしく思えてしまったほどです。
この人並外れた好奇心と行動力こそが、いとうせいこうさんの長年の幅広い活躍を支えているんだなあと感じました。

そして興味深かったのが、いとうせいこうさんがミュージシャン、ラッパーという視点で能を読み解いたところ。
例えば、能では登場人物が歌や踊りで心情を表現したと思えば、歌で会話したり、周りで演奏をするお囃子が歌を重ねたりしていく。

これ、今の感覚で見るとツッコミどころのように思えますが、そもそも歌ってそういうものだから、という発言はなるほどと思いました。
そもそも人間は太古の昔は歌で普通に会話をしていて、それが文明の発展とともに次第に言葉に変わっていったという説もあるほどで、こうやって歌で会話をするのは人間の自然な姿だというのです。

それから、能には様々な言葉遊びや、他の有名な作品からの引用、パロディやオマージュが満載で、それはまるでいとうせいこうさんが長年続けてきたラップにも通じる文化だと言うのです。
それをただの学術書的な説明ではなく、読んで面白い物語として現代語訳するにあたって、いとうせいこうさんが英語圏の文化だったラップを日本語で表現するために試行錯誤してきた経験が生きたそうです。

いとうせいこうさんの、こういう古典芸能から現代サブカルチャーまで、国も時代もジャンルも飛び越えてあらゆる芸術やエンターテインメントの面白さの本質に迫り、それを自分の表現で伝えようとする探求心や表現力は本当に学ぶところが多いなと思います。
最近は「サブカル」がどんどんただの閉鎖的なオタク文化になりつつあると感じますが、こういう歴史を学んで未来に伝える、まさに温故知新な知性と、同時に遊び心も忘れない軽やかさも忘れない、こういう人でありたいものです。

最後の質問コーナーでは、1人目は演劇を勉強している高校生からの「どういう芸術を学べばいいですか?」という質問。
いとうせいこうさん、「とにかく若い頃には幅広く何でも見たらいい。能みたいな古典芸能でも、例えばロックフェスでも。たくさん見ていれば、その中で自分の好きなものが見つかる」という言葉は、若い世代を前向きに応援する気持ちが伝わりました。

2人目は、年配の方からの「いとうせいこうさんは仏像もお好きなそうですが、仏像と能の関わりはありますか?」という質問。
これには遠藤麻理さんが「もう90分必要になっちゃうんじゃないですか?」と突っ込みつつ、いとうせいこうさんは「仏像と能にももちろん関りがありますが、僕が研究するにはもう残りの人生が足りないので、若い世代に託します!」と先ほどの高校生に想いをぶつけたのでした。

この最後の2人からの質問コーナーも、自分より上の世代と下の世代を繋ぐいとうせいこうさんの魅力が詰まっていたなあと感じました。
こうやって老若男女が一緒に楽しめるのが能はもちろん音楽や演劇など舞台芸術の魅力なのかもしれません。

いとうせいこうさんの話を聞いていたら本当に能が見たくなってきたので、今年はりゅーとぴあで能を見に行くことを目標にしようと思います!
いとうせいこうさん、遠藤麻理さん、お疲れ様でした!
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