
11/24(水)、ユナイテッド・シネマ新潟で、「ダンシング・マリー」を観てきました。
開発によって解体予定の古いダンスホールに、幽霊が取り憑いているという話を受け、若い市役所職員の研二は、霊能力者の女子高生・雪子を訪ね、呪いを解く方法を探る。
幽霊と普通にコミュニケーションを取りながら物語が進むという浮世離れした非日常感がシュールな面白さでした。
主人公の研二はEXILEのNAOTOさんが演じ、初めて見たのですが、最初は弱気な性格だけど少しずつ成長して最後には感情を爆発させるという、人間臭い演技が見ていて好印象でした。
また、霊能力者の雪子は新潟出身の山田愛奈さんが演じ、個人的に久し振りに見られて嬉しかったというのもあるし、毅然とした態度で生きる姿が似合う役者さんだなあと思いました(あと、幽霊繋がりだと新潟のドラマ「霊魔の街」よりずっと面白かったです)。
霊感がない研二も霊能力者の雪子と手を繋ぐと幽霊が見えるという「さんかく窓の外側は夜」システムの設定になっていて、二人が手を繋ぐと、画面が白黒になって幽霊が登場し、手を放すと見えなくなる、という映像表現も面白かったです。
というか、この映画、幽霊は登場するけれど、ホラーというよりシュールなコメディみたいな場面もかなりあり、この設定と映像表現を使って笑いを表現している場面もかなりあったし、最終的にある感動的な場面でちゃんとこの設定が伏線として回収されていました。
そんなわけで、研二と雪子は幽霊を調査する中で、ダンスホールにはマリーというダンサーの幽霊が取り憑いていて、彼女を成仏させるためには恋人のジョニーという幽霊を探し出す必要があることが判明します。
そこで、ジョニーを探して謎を解決するために、町中の色んな幽霊達を探偵のように訪ねて回る場面が、本当にシュールでした。
ホラーみたいな怖がらせる登場ではなく、ごく普通に幽霊がそこに登場し、普通にコミュニケーションを取るわけで、見ていて「これ、どういう状況?」みたいに思ってしまう。
さらに、そこで出会った幽霊とのまさかのロードムービーになっていくという、本当に予測できない映画でした。
個人的にSABU監督は20年くらい前の「DRIVE」が好きで、それもどこに向かうか分からないシュールな物語の中に、突然幽霊が普通に登場してくるという映画だったので、SABU監督の個性が発揮されていたのかなと思いました。
最近は「砕け散るところを見せてあげる」などシリアスな作品が多かったので、こういうSABU監督は久し振りに見ました。
ただ、シュールすぎてゆるい印象が強すぎて、役者は悪くないのに退屈に思える場面が多かったのは気になりました。
また、市役所とヤクザの関係があまりにも露骨すぎて現実味がなかったり、幽霊同士の殺陣の場面で「幽霊が殺されるってどういうこと?」って設定の曖昧さが気になったり、引っかかる場面もわりとありました。
とはいえ、面白い場面もかなりあり、特に印象的だったのは、図々しいオバちゃん、高圧的なヤクザなど、日常の中の感じの悪い人間関係や気まずい会話などの生々しい場面が多かったことでした。
それに対して、寧ろ幽霊達の方が生き生きと魅力的という、逆転した関係性が面白かったです。
人間はセコセコ生きているのに、幽霊の方が熱いアクションやラブストーリーを見せてくれるのです。
ここは本当にネタバレなしで観てほしいのですが、幽霊一人一人の個性が強すぎて、登場するだけで映画のジャンルそのものが変わってしまうほどなのです。
だから最後まで見ると、そういう幽霊達との出会いが主人公を成長させる物語だったのかなと思いました。
最後に市役所の同僚とヤクザに対して、主人公がここまで溜め込んだ感情を爆発させ、ボロボロになりながらも抵抗する場面はグッときました。
カッコ悪くてももがいて生きる人間は魅力的だと思うし、そういう人物が登場する映画が好きなんですが、まさにそういう映画でした。
だからこれは、主人公が人間らしさを手にする物語だよなと、最終的に自分の中で結論付けました。