羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 1

2015-09-10 20:58:01 | 日記
「いらっしゃいませーっ!」大和はケーキ屋でアルバイトをしていた。調理場では店長と若い男のパティシエが作業しながら話していた。「ウチのケーキが大好き何だって。一之瀬君も、色々教えてあげてね」「はい」細面のパティシエ、一之瀬は素っ気なく答えた。一方、猛男は屋外から大和の働きぶりを砂川と見守っていた。枝を持つ等して植え込みに擬態している猛男。「猛男、怪し過ぎるんだけど?」早速突っ込まれる猛男。「心配しても仕方ねぇなぁ、何かあった時の為に、ドンと構えていよう」猛男は急に悟って立ち上がった。
バイトを終えた大和が待ち合わせていたらしい公園に小走りで現れた。「おう! 大和ぉっ!!」両手を拡げ『ドンと』構えた。「ええ?」驚きつつ、どーん、どーん、と猛男相手に相撲の稽古のようなことをして喜ぶ大和。「バイトどうだった?」話が進まない、と判断し、砂川が聞くと「うん、すっごく楽しかった!」と大和は嬉しげに答えた。「猛男君が背中を押してくれたおかげだよ」『やりたいことはやってみたほうがいいんじゃねーか?』春休み余り会えなくなることを心配する大和に猛男はそう言い、大和は砂川がアルバイト募集の貼り紙を目ざとく見付けた大ファンの店で働くことになったのだった。
「何か、スゲーなぁ、プラスチックでできてるみてぇだなぁ」「え?」「芸術作品みたいなって言いたいんでしょ?」「わかるっ、そうだよねぇ!」大和が買ってきた店のケーキは造形からして手が込んでいた。(なるほど、これが大和の言う、プロの仕事か!)感心する猛男は食べてみた。「あ、甘いなぁ」「うん!」「ケーキだなぁ」「うん!」(もう少し気の効いたこと言えねぇもんか俺はぁ?!)何やら高尚な味に戸惑う猛男。熱心に洋菓子談義する大和の話にも上手く答えられなかった。猛男は大和が仕事に慣れた頃に店に行くことにした。
     2に続く

俺物語!! 2

2015-09-10 20:57:53 | 日記
それまでマッチョカフェで稼ぎ、がっつりケーキを買うつもりでいた。
一之瀬は、作業中に作業場の外から大和が見ていることに気が付いた。一之瀬の華麗な手捌きに見とれる大和。一之瀬は作業場を出て大和に話し掛けた。「一之瀬と言います。店長の右腕ってとこかな?」自分で『右腕』と言っちゃう一之瀬。「あの、私もお菓子作るの好き何ですけどっ」「パティシエに憧れたりする」「はい!」「厳しいよ、華やかに見えて力仕事だし、なりたい人もいっぱいいるし。まあ俺はコンクールとか出てたから」「凄いっ!」単純に憧れてくる大和に、悪い気はしない一之瀬だった。
大和を意識し出した一之瀬は多少手元が疎かになりつつ、1日大和を観察した結果、終業後、気になった点を『注意』することにした。「あのね、いらっしゃいませのアクセント変だよ。あとね、ケーキ箱に詰めるの遅過ぎ。気を付けてね、ウチの店のイメージ悪くなっちゃうから」一之瀬の『注意』に、大和は大ショックだった。落ち込んで、待ち合わせに現れた大和に猛男はオロオロした。「大和ぉ」「働いてお金貰うって大変だよね」フォローする砂川。「そうだね。ウチ、頑張るよ! ケーキ詰める超急ぐっ! ケーキの傍にいたり、作ってるの見たり、凄く楽しいんだ! 猛男君にもまだ買いにきて貰ってないし、その時はねっ、めちゃできるウチになってるから!」前向きな大和。猛男は大和の肩に手を置き、勇気付けた。「大和は根性有るなぁ」「お前のこと追い掛けてくるくらいだからなぁ」猛男は大和と駅で? 別れた後、砂川と帰りながら感心していた。
その後も店で懸命に働く大和は他の店員に、「一之瀬さんの言ったことなら、気にしないでいいよ。一之瀬さんつて人の話聞かないっていうか、思い込み激しいっていうか、技術有るし、イケメン何だけどねぇ」
     3に続く

俺物語!! 3

2015-09-10 20:57:42 | 日記
と言われていた。変わり者で通っているらしい。それから定時になり、帰ろうとする大和は調理場に残された3つの見慣れないケーキを見付けた。「このケーキ新作ですか?!」一之瀬に聞く大和。「キラッキラ、どんな味するんだろう?」「食べる?」匙を差し出す一之瀬に、催促した形になった大和は慌てたが、一口食べてみた。「わぁ、何だこれぇ! ベルガモット?」「入ってるよ」「ええ? ですよね! 甘酸っぱくて凄く美味しい。プロの発想ですよねぇ!」大和の感想を聞いてる一之瀬。
「これはいつから売られるんですか?」「売られないよ」「え? どうしてですか?」「俺が作ったヤツだから」「売っちゃダメ何ですか?」「店長にいいって言われてる。1回だけ、店に出したことがある、売れ残ったんだよ。俺のケーキがっ、売れ残るのが耐えられねーんだよっ!」強く訴える一之瀬! また困った人が現れた。「あの、じゃあもし売れ残ったら、私が買うってのはどうですか? 3個なら私買えます!」「何でそんなことしてくれるの?」「だって、すっごい素敵なケーキだから、世の中に出てほしいです!」一之瀬は衝撃を受けた!「じゃあ、3個だけ置いて貰おうかな?」「やったぁ! ウチ、頑張って売ります!」(がんばつて売ります。一之瀬さんの為に!)多少脳内で意訳する一之瀬!「明日楽しみです、お先に失礼します!」(楽しみです。一之瀬さんに会えるのが楽しみです!)だいぶ意訳し出す一之瀬!
翌日、「それ、お勧めです!」大和は客に積極的にアピールき、一之瀬の新作ケーキは順調に売れた。その様子を見ていた一之瀬。(この子、やっぱり)大和は目が合うと、ピースしてきた。(俺のこと、好きなんじゃね?)真顔で判断する一之瀬! 作業の合間に、一人で壁ドンして大和の前に現れる一之瀬。「名前、何ていうの?」
     4に続く

俺物語!! 4

2015-09-10 20:57:31 | 日記
「え? 大和です」「いやいや、下の名前」「凛子です!」大和は笑顔で名乗った。
「猛男、それ返って目立つ」「大和に見付かったら不味いからな」その日も猛男は店の前の郵便ポストの陰に隠れて大和を見守り、砂川は付き合っていた。と、大和が店の作業口から出て、店先を掃き掃除し始めた。笑みを浮かべて働く大和に安心した猛男は「よし、帰るかぁ」と、砂川と帰ろうとしたが、「凛子! 来いよ、休憩だって」一之瀬が顔を出してきて。「あ、はい」大和は店の中に戻って行った。(凛子? 凛子だとぉッ?!)猛男は『名前呼び捨て』に衝撃を受けた!
衝撃を受けた猛男は砂川と共に海へ向かった。近いのか? 海。(何者だ? イケメンだったな)「猛男、そろそろ帰らねぇ?」(意外とダメージデカいな)「お前も名前で呼べばいいじゃん」「なぁ?!」「どんだけしシャイだよ。名前で呼んだら嬉しいんじゃないの?」「誠」「うっ」試しに呼んでみると、砂川は固まった。「見ろ! やっぱ無ぇだろ?!」「いや、話違わね?」(俺にできねぇことを、簡単にできるヤツもいる)猛男は迷っていた。
店の休憩に、様々なジェラードが出た。歓声を上げる店員達。「店長ありがとうございます!」店員の一人が礼を言うと、「一之瀬君の提案でね」「ええーっ?!」驚く大和以外の店員達。「好きなのどうぞ」勧める一之瀬。一ノ瀬は事前に外で汗をかいて作業する大和を見ていた。ジェラードは好評で、大和も喜ぶと一之瀬は微笑んだ。普段笑わない一之瀬が笑って、大和以外の店員達は驚いていた。「猛男くーんっ」ジェラードパーティの後で、バイトを終えた大和はアイスをカップに詰めて二つ猛男達の元へ持ってきた。公園の前の車道沿いで落ち合う形になった。
「ほら、あの人だよ」作ってくれたと、ちょうど車で通り過ぎて行った一之瀬を示す大和。
     5に続く

俺物語!! 5

2015-09-10 20:57:22 | 日記
(アイツか! イケメン、お洒落な車、パティシエ)警戒する猛男。「プロの人って、色んなこと知ってるんだよ」(この間に、何があったんだ?!)少し前まで仕事で落ち込んでいたのに、と大和が自分の知らないルートを進んでいることに困惑する猛男。(俺がバイトやってみろとか言わなければよかったのかもしれねぇけど)珍しく、ネガティブに考える猛男。自分ではケーキも作れず、話もわからない。「ジェラード、溶けちゃってないかなぁ。ウチ、食べさせたくてぇ」大和はカップを渡した後で手を冷たそうに自分の頬に当てていた。猛男は大和の両手を『片手』で握った。(小せぇなぁ俺は、自分が男として自信が無いせいで、一緒に心から喜べない何てよう。情けねぇ)手を離す猛男。「どうしたの?」「いや、良かったな大和! バイト頑張れよっ!」「うん!」猛男は何とか応援し、大和は元気に応えていた。
後日、作業中の一之瀬は、控え室で店員達が自分のことを『実はいい人』等とはなしているのを聞き付けていた。「一之瀬さん、素敵ですよね!」他意無く言った大和の言葉を一之瀬は聞いていた!(出逢ったんじゃね? 俺の、ミューズ何じゃね?!)脳内で大和をかなり美化する一之瀬だった。猛男はというとまた海の、それも断崖絶壁に砂川と来ていた。なぜか帽子を目深に被り、犯人風の砂川。「海が、小さい俺を、沖まで持っててくれねぇかなぁ」「何となくわかるけど、何言ってるかわかんない」「俺は小せぇなぁ」「普通じゃない?」「普通か?!」「自分の彼女の回りに男の人いたら、面白くないでしょ、普通」笑ってしまう砂川。「何だぁ?」「何て言うか、お前も普通の男だよね。当面の目標は、名前で呼ぶことじゃね?」「そうだな!」猛男が気を取り直していると、大和からもう慣れたからケーキを買いに来てとメールがきた。猛男達は近いらしい? 海から店へと急行した。
     6に続く