羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

探偵の探偵 1

2015-09-18 21:39:22 | 日記
「あなたが、死神なの?」「あのさ、印影から拡大した印鑑を発注。別の店で縮小。悪徳探偵なら誰でも知ってる偽造印の作り方。自分でやっといて気付けなかったのかよ」渋谷区の消印の判子を投げ捨てる凜。件の封筒はそもそも郵便発送されてなかった。「悔しい? 自分の馬鹿さ加減が?」「玲奈さん」呼び掛けた琴葉を振り返り、足早に近付く凜。「お前は黙ってろっ! 今、玲奈と話してんだよ」琴葉を殴り付けた。「あたしがいいって言うまで口聞くな」玲奈の元へ戻る凜。
封筒の保管場所は定期検査する公安委員会から、方法は不明だが手に入れていた。「そんなにショックぅ? あたしの為に隠れ家まで用意しちゃってさぁ」沼園への指示はやたら外出する琴葉に多目に買い物を頼み時間を稼いでいた。「わざわざ報告書を作る何て」「芸術家は作品を残す。同じ手による作品とわかるように」ネットカフェを利用してメールを出し、報告書を作り、その足で指定場所に報告書を置いていた。「あの男も馬鹿だよねぇ」皮肉る凜。「狂言だったの?」「違う! それじゃあバレる。本物の被害者になる為に暴力男と結婚してやった」机に乗って、子供っぽく笑う凜。
「14の時に気付いたの。性暴力の被害者ってだけで支援団体が寄付金をくれる!」浮かれたような凜。「だからって、自分を痛めつけてまで」「ああ、苦しいと思うの? じゃあ、あたしとは違う。クズ男にいたぶられる悲劇。その場だけ酔いしれて楽しんどきゃいいっ! げぇひゃひゃひゃひゃッ!!」淀野を殺したのもやはり凜だった。檜池を殺したのも凜だった。「あん時お前、廊下でぶつかってきただろ? あれで初めてお前の存在を知った。あたしを追ってる、探偵がいるって」シェルターの場所は自分が収容されることで知っていた。野放図の秋子がコンタクトを取る必要が無いと言っていたのも
     2に続く

探偵の探偵 2

2015-09-18 21:39:14 | 日記
事態の当事者としてその場に居た為だった。「あの時、淀野が殺そうとしたのは淀野だったのね」「でも助かった」口封じされる直前に窪塚の介入で助かっていた。「ホント、勇気ある馬鹿っ!」玲奈の目の前で笑う凜。「お前らさぁ、あん時端から見てて笑い堪えんのに必死だったよ。いや、死なないでっ。お願い、生き延びて! だっけ?」爆笑する凜。凜を見ている玲奈。「あれ? お前何で襲い掛かって来ねぇの? 普段やたらと喧嘩っ早いくせに」「襲い掛かれば、どちらか傷付けるつもりでしょ?」「はぁん、まだ冷静さを保ってるみたいだな」凜は監視カメラと通報装置には細工を施しており、時間稼ぎは無駄と警告した。
「こいつねぇ、あと20分放っときゃあ呼吸が止まる」彩音を示す凜。「何が目的?!」「お前こそどういう腹だ?! 野放図との仕事中に、介入してきてあたしを追い求めた」「咲良を死なせたのは誰よ?!」「岡尾芯也でしょ?」おどける凜。「罪が無いって本気で思ってんの?!」「思ってるけどぉ? それが何? 両親に捨てられて、15の時には仕事探してた。この世には見知らぬ女の尻を追いたがる馬鹿男が大勢いるってことも知ってたし、女なら女をつけ回すのが有利。商売になるって気付いた。あいつら、獲物の為だったらいくらでも金を出すただのケダモノ。そこから金をふんだくってやるんだ。ああ、一つ楽しいことおしえてあげよっかぁ?」ニヤつく凜。
「私、岡尾が調査報告書を受け取ってからどうするか、尾行して観察してたの」凜は咲良が捕まってからのことを話し出し、「岡尾の餌食になった!」叫んでいた咲良。凜は嘲笑った。「ゲヘヘヘッ、うへへ、うひゃひゃひゃッ!!」「やめろっっつってんだろッ!!!」激昂して凜に殴り掛かる玲奈! 凜は避け、デスクの上の物を払って玲奈を怯ませ、素早く彩音の方へ飛び掛かって
     3に続く

探偵の探偵 3

2015-09-18 21:39:04 | 日記
ナイフを突き付けた。「やめて!」叫ぶ琴葉。「やっと本気になったね。いよいよ心の中が覗けそう。さぁ、こっからが最高の見せ場っ! あたしはさぁ、あんたの本心が知りたいんだよ。彩音何か人質になるかよっ、そう怒鳴ってその手であたしをぶっ飛ばしてよ?」泣いている琴葉を見る玲奈。「できる訳無い」「はぁ? 作ってんじゃねーよ、糞女っ。琴葉に嫌われたくないっ、恨まれたくないっ、だから心底ムカつく彩音も見殺しにできないってだけだろ?! 咲良のこと大好きだったもんね。ペットロス症候群を癒す為に琴葉を咲良の代わりにしたんだろう? 新しい動物飼えてよかったじゃん?」「てめぇぶっ殺されてぇのかッ?!!」「ヒャハハハッ!!」喜ぶ凜。
「きたきたきたきたきた、キタァッ!!! やっと『あなた』とか言わなくなったね。そいつでフルスイングしてこいよッ!」玲奈の傍のデスクにあるレンチ? を差す凜。「かっ飛ばせぇ、さ、さ、きっ! 市村倒せぇっ、オウッ! ほら来いよッ!!」煽る凜。「お前さぁ、あたしのこた死神って呼んでたじゃん? 死神はさぁ、お前じゃないの? 周りでバタバタ人が死んでく。次はこの女!」「そんなに私の本心が知りたいの?」「うん、知りたい。だって、秘密を暴くのが探偵の仕事でしょ? 3人で一緒にいる時も、お前を『調査』したかったから。あたしはねぇ、探偵の探偵の、探偵をやりたいんだよ。お前が暴力女になったのは、単なる咲良ロス症候群なのか確かめさしてよ!」「救急車を呼んで、琴葉も解放して!」玲奈を見る凜。
「いいよ。言う通りにしたら希望叶えてやる」「早くして」「でもね、こっからは私じゃなくて、大好きな琴葉による指示」凜はレコーダーを取り出し、再生した。「琴葉、お前はぁ、一人しか助けられないの。彩音を選べば玲奈は死んでも構わない、それでいいの?」
     4に続く

探偵の探偵 4

2015-09-18 21:38:53 | 日記
「お姉ちゃんを、殺さないで」「じゃあ、玲奈が死んでもいいって訳ね?」「はい」「大きな声で、彩音が助かるなら、玲奈は死んでもいいって」「お姉ちゃんが助かるなら、玲奈さんが死んでもいいです」音声を聞きながら玲奈と琴葉は泣いていた。「大きな声で言えって!」「玲奈さんが死んでもいいです!」「ふふふっ、はぁ」最後は満足そうな凜の笑い声も入っていた。
「どう?」機嫌よく聞く凜。「強要しただけでしょ?」「なら何で泣いてんの? あーあ、可哀想玲奈。せっかく可愛がってきたのにね。フラれちゃった! 琴葉に選んで貰えると思ってただろう? お前の気持ちわかるよぉ。結局さぁ、血の繋がり。本物の姉を選択する。お前はぁ、ニセモノなんだよ」「どうすればいいの?」「琴葉の選択に従え、座れよ」促す凜。「ポケットの中のもん全部出してそこに置け」デスクにポケットの中の物を置く玲奈。凜は拘束具を玲奈に投げ渡した。「玲奈さん」「お前が選んだんだろ? 見てろ」わりと軽く琴葉の頭を掴んで玲奈を方へ向ける凜。
玲奈は後ろ手に、自分で自分を拘束した。「ねぇ、玲奈。ここに来るまでに琴葉の無事を祈ってた?」筋弛緩剤点滴と心電図の準備を始める凜。「彩音の無事は? つーか、お前祈ったりすんの? 神が人間を作ったんじゃない。人間が神を作った。人ってさぁ、ほっとけば動物みたいなもんでしょう? 皆好き勝手に生きるの。規律何か守る気無し。むしろ、どうして世の中が、それなりに保たれてるのか? そっちの方が不思議じゃない? 世の中善意が優勢っぽいからさぁ、皆それなりに合わせて暮らしてるだけ。私は『違う』って言われるのが嫌なの。違っているのは世間の馬鹿どもだろって思ってるから」凜は玲奈の腕に点滴針を刺した。心電図の測定用のパッドも腕に付けている。「さぁ、始めよっか」凜はクレンメを解放し、
     5に続く

探偵の探偵 5

2015-09-18 21:38:43 | 日記
筋弛緩剤の点滴を始めた。
「玲奈さん」呟く琴葉。笑う凜。それから15分が経った。朦朧とする玲奈。「正直言って、お前が正直に指示に従うとは思ってなかったよ。彩音を助けるつもり? 潔いいんだねぇ。ま、このまま、じっとしてられればだけど」おどける凜は点滴の速度を上げた。玲奈は動かない。「もうやめて下さい!」懇願する琴葉。心電図が乱れ始める。「玲奈さん!」玲奈は動かず、心電図が警告音をならした。脈を取れてない! 悲鳴を上げる琴葉。項垂れて全く動かなくなる玲奈。「あらららら」意外な様子で玲奈を見下ろしている凜。
「へぇ、マジだったのかよ。よっぽど信念が強かったのか、それとも、絶望した? あー、つまんない! 楽しかった一時もおしまいかぁ」直接、玲奈の手首から脈を取る凜。脈は、無い。「死んでる」デスクと固定していた拘束具を切ると、玲奈は床に倒れ込んだ。凜はつまらなそうに、泣いている琴葉の拘束も解いた。「死体の処理手伝え。彩音助けるのはその後。オラァ!」押して促す凜。「玲奈さん」玲奈の傍に寄る琴葉。少し泣いて玲奈を見ていたが、不意に顔を上げ、傍のデスクから玲奈のスマホを取り、オフィスの外へ駆け出した! 彩音の方の何らかの処理に気を取られていた凜は舌打ちし、追った。
廊下の階段傍で追い付き、押して倒し、馬乗りになって逆手に持ったナイフで琴葉を刺そうとする凜! 突き飛ばされ、ナイフを床に払われた凜は「にゃろぉッ!」ナイフを拾おうとした琴葉の髪を掴んで引き戻し、脇腹を膝で蹴り、背に乗ると頭を掴み直して床に打ちつけ始めた! 鼻血を出した琴葉に再び馬乗りになり、首を締め上げる凜!「玲奈に比べて往生際悪過ぎっ」「約束守ってよ! 救急車呼ぶって言ったでしょ?!」「どうもスッキリしないわ。お前も死んでみる?!」「ホントはビビってるだけ何でしょう?
     6に続く