絞ってますね、この『月』
ぱっと見、目立つのは、二画目転折後の縦画の『ソリ』です。
その『ソリ』を、際立たせているのは一画目の縦画が『静』であるからでしょう。
この『月』は、『静』と『動』の組み合わせです。
ここを意識すると、二画目の勢いを止めきれずに、角度が上がりすぎてしまった三画目の理由が分かります。
そして平静に戻っての四画目。
書体も心もおさめていますね。
一画目と二画目の間を空け、三画目、四画目を二画目の縦画につけないのは、風通しを良くする為です。
高橋鵞翠の書体の特徴の一つとして、
『風通しの良さ』があります。
風通しがよく、空気が淀まない清々しい書体。
そこに高橋鵞翠は精神を宿そうとしたのではないでしょうか。
形を作ったらそこに魂を込める。
創作者としての基本的な心得ですね。
課題五文字の意味に自身を同化させるのが、魂を文字に込めやすいでしょう。
『月の光に照らされて輝く玉の露』なんて見たことない、、、
ならば想像してください。
何かを象徴しているかもしれませんね。
月に雲がかかれば輝きはしない。
風も強くなれば、葉や枝からするりとこぼれ落ちてしまうだろうし、陽が昇れば蒸発してしまうだろうし、もっと大きな輝きが世界に溢れている事を知るだろうし、、。
でも、私はそんな『月下の露』がとても美しく思える。
そう思える源はどこにあるのだろう?
そんな流れもありですよね。
形を作ったら魂を込めましょう。
次回もお楽しみに〰