今回は、隠れた難関『一』です。
全体から『一』を見てみましょう
一見エネルギーを抑え込んだ書き方に見えますが、『春夏秋冬』の夏から秋にかけての部分でかなりのカスレが見られます。
筆を立てて中鋒で書いていますが、その筆速に穂先側面への墨の供給が追いつかず、横画の上下の部分がカスレています。
これは少し毛がすり減った筆で書いた時の特徴でもあります。
『梳』の木偏の三画目の左払いのカクッとした急に細くなるところも、その特徴を表していると考えます。
皆さんがお使いの筆の毛の状態によっては、『梳』の三画目は表現できない場合もありますが、『一』のカスレは筆速と濃い墨によって表現できるはずなので、チャレンジしてください。
全体から見ると、『一』の右肩にあがる角度はそれまでの横画の角度と比べてみても、それほど上がってはいません。
そこにつられて、平板に書いてしまう方が多いようなので気を付けましょう。
『冬』部分の終筆とトメが大きい理由は三つ。
一つは意外に大きく角度が上がっている。
二つ目は筆速の勢いを止めるため。
ここを意識してトメましょう。
あれ?三つ目は?
半紙の下部分に『一』が来たこの作品に名前を書く場合、後半部分が『一』より下になってしまう事もあるでしょう。
お名前が五文字や六文字の方の場合、今回は仕方のない事です。
本来、氏名は本文より下に書かないのがよいとされています。
それは『本文より目立ってしまうから』と私は解釈していますが、今回の場合はそうなってもよいように『一』が書かれているように思えます。
漢字一升分の空間を、この『一』の書体で歪めているのです。
墨の無いところの空間まで、この『一』の書体で埋めている、、、
居合い切りの、刀を納めていくあのゆったりとした緊張感ある空気が、この『一』の升全体に漂っているのです。
恐ろしい〰(^○^)
それは『冷』と『一』との空間部分の取り方と、どの漢字よりも広い横幅も大きく関係しています。
この『一』は奥が深いですよ〰
さて次回は『梳』です。
お楽しみに〰