塾生投票で選ばれた作品について、私見を述べたいと思います。
まず第一位に選ばれた横山鳳翠先生の作品です。
太い前足をと今にも蹴り出しそうな後ろ足からの、獲物を見つけた悦びを隠しきれない尻尾、、、。
ダイナミックな躍動感が今にも紙から抜け出して、邪気を追い払ってくれそうな『虎』ですね!
前面から溢れ出る創作の楽しさが伝わってくる素晴らしい作品です。
左に傾きながら重く太い線があるにもかかわらずバランスをギリギリの緊張感で保っているのは、最終画のハネ上り方によるものでしょう。
ナイスな作品です。
次点は得票同数の三位の七作品。
順不動で私見を述べます。
大森翠華先生の作品です。
二画目の折り返しの高い書技と、全体を流れる凛とした佇まいから、老虎の孤高で鋭い眼光を放ってくる作品に仕上がっています。 白い空間をどう見せるか、そこを考えて組み立てられたところも魅力的な作品です。
次は石田さんの作品です。
緩急使って表現された『虎』に、穏やかな生命が吹き込まれていますね。
行儀よく座っている虎が、尻尾だけ動かして佇んでいるかのようです。
やり過ぎない最終画のハネが、太さ、滲み、かすれ、筆勢の変化の全てに於いて秀逸な作品ですね。
次は川口雲翠先生の作品です。
オリジナリティ溢れる作品ですね。
近くで見て細かい高い書技を楽しみ、離れたところから見ては絵画の様に楽しめる面白い仕上がりになっています。
この作品も観る者に創作の楽しさを伝えてくれる秀作です。
次は佐野さんの作品です。
象形文字に、緩急使った書法で生命を吹き込んだ作品です。
マジで動き出しそう!(⌒▽⌒)
色遣いも落款印をいじめない程よいバランスです。
一見誰でも書けそうですが、高い書技が無いと書けません。
そこを観る者に悟らせないところもおくゆかしい作品ですね。
次は福島さんの作品です。
何人かの塾生がこの作品に取り組んでくださいました。
紙いっぱいを使った筆運びが、『とら』に生命力を与えている作品です。
『と』の右上に跳ね上がる勢いと、『ら』の右から左へかすれながらじっくりと走る筆勢の対比から、緩急ある作品に仕上がっていますね。
暴れているようで、どっしりとした安定感がある作品です。
次は石河櫻翠先生の作品です。
高い書技から『虎』の荒々しさが、結体の安定感から『虎』の威厳が伝わってきますね。
そこに雅な風情を醸し出した金の使い方は素晴らしい仕上げ方です。
創作時の楽しさが伝わってくる素晴らしい作品です。
いよいよ最後の作品です。
小川さんの作品です。
威厳ある老虎の佇まいに、多くの美術作品鑑賞から学んできた絵画的バランスを感じる作品です。
一見すると右上から左下に流れるラインが強烈に見える分、左上から右下に流れるラインがしっかり隠されていて、そのコントラストが作り出す『X』が四角形である紙を無限の形にしています。
さて、今回私が選んだ作品はこちらです。
松野雪翠先生の作品です。
古典を倣書した作品ですが、創作のレベルにある作品と言えるでしょう。
原典の絶妙なバランスはそのままに、現代社会の激烈なスピードと変化に置き換えて書き上げた作品だと思います。
古典作品の臨書は当時と書き手の追体験から多くの事を学ぶことができます。
そして、古典作品の倣書は、古典の持つ普遍の美を現代に生かす行為です。
この作品は『蘇る金虎』と言ったところでしょうか( ̄∀ ̄)
今回私は二位、三位も選びました。
それが、皆さんの選んだ今回紹介した作品の中に二つとも入っています。
あえて、どれとどれとは言いませんが、皆さんの感覚とそう離れていない点が嬉しいですね。
楽しい書初め総選挙でした!
和翠塾一階の道路から見える窓に、昨年書いていただいた私のお気に入りの書初め作品二点、石河先生と美濃先生の作品を貼り出しております。
今年も二点程、作者の了解とれたら貼り出したいなと考えております。
そちらもお楽しみに〰