著作者人格権とは、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」「名誉声望保持権」など複数の権利から成る、著者と著作物を守るための権利です。
フリーランス業界の契約書には、しばしば「著作者人格権の不行使」という文言があります。これは、特にメディアミックスを想定して入っているものであると思われます。
著者が著作者人格権を行使すると、メディアミックスの進行上様々なことが起こり得ます。原作と違うと主張する(同一性保持権の行使)、公開直前になって公開したくないと主張する(公表権の行使)などの事態です。そういった「リスク」を避けるために、多くの企業は契約書に「著作者人格権の不行使」という文言を盛り込みます。
しかし、それは企業側の都合、もっと言えば利益優先の姿勢によるものです。本来、著作者人格権は著者だけが持つ権利で、財産権と違って譲渡できません(相続さえできません)。譲渡できないから、「不行使」とさせる、これは本来侵してはならない著者の権利を侵しているものです。
著者にとって、作品は魂そのものと言っても過言ではありません。著作者人格権は、著者と、その魂である著作物を守るものです。しかし企業はこの権利を行使させまいと動きます。これは正に「フリーランスの持つ尊厳の軽視」ではないでしょうか。
作品を創る仕事をしている私たちフリーランスは、このような状況に対して声を上げるべきです。
(後編に続く)