不安定な雇用に悩む「臨床心理士」の憂鬱
~『週刊東洋経済』が臨床心理士ユニオンを紹介~
心理職の待遇改善と地位向上を求めて活動している私たち「臨床心理士ユニオン」(全国一般東京東部労組臨床心理士ユニオン支部)について、東洋経済新報社発刊の雑誌『週刊東洋経済』が7月20日に発売した最新号(7月24日号)で取り上げています。
心理士ユニオンが紹介されているのは、働く者の「不眠・うつ」を特集した記事の中で1ページをとって「不安定な雇用に悩む『臨床心理士』の憂鬱」と題されたものです。
この記事によると、「常勤のみ」で働いている臨床心理士は31.8%にすぎず、「常勤+非常勤」か「非常勤のみ」のほうが圧倒的に多いことがグラフで指摘されています。その他、低い収入や仕事の掛け持ち状況など臨床心理士の劣悪な雇用環境が浮き彫りになっています。
心理士ユニオンに該当する部分を以下に抜粋します。現物は書店などでお買い求めください(定価690円)。
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「非常勤だと1年ごとに契約が更新されることになっており、組織の都合で急に契約を打ち切られることがある。また、ベテランほど時間給が高くなるわけではなく、資格を取って間もない人と同じ条件で契約を結んでいるケースが多い」と日本臨床心理士会専務理事の平野学氏は語る。雇用が不安定で、将来的な展望も見えにくい。それが多くの臨床心理士が置かれている状況だ。
木村秀さん(32歳)もそんな一人。木村さんは現在、児童養護施設で非常勤として月16日働いているが、月収は13万円。これではとても生活できないので、大学の非常勤講師とNPO法人での勤務を掛け持ちしている。「掛け持ちすることで一定の収入を得られているので、自分はまだいいほう。大学院まで出て臨床心理士になったのに、ワーキングプア同然の生活を強いられている人がいる」(木村さん)。
こうした中、木村さんは09年3月、仲間たちと連携して臨床心理士ユニオンを結成した。目指すのは、臨床心理士の雇用改善だ。
木村さんが特に疑問に感じるのは、どの施設においても臨床心理士が不可欠な存在になっているのに、それに見合った雇用保障がなされていないという点だ。
たとえば、木村さんが勤務している児童養護施設では、親から虐待を受け、トラウマを抱えた子どもたちが数多く入所している。彼らの心のケアは、臨床心理士なくしては成り立たない。また臨床心理士には、一般職員のメンタル相談に乗るという役割もある。職場ではこの役割を、月16日勤務の木村さんと、月6日勤務のもう1人の臨床心理士とで担っている。本来、当然常勤にすべき責任の重い仕事を、2人の非常勤で賄っているわけだ。
また、木村さんたちが結成した臨床心理士ユニオンが加盟している全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合の須田光照書記長は、臨床心理士と雇用契約を結ばず、業務委託として契約を結んでいる施設が多いことを問題視する。
「業務委託契約であれば、臨床心理士が自分の責任・管理の下で業務を行うため、施設は最低賃金や労働基準法を守る必要がなくなる。しかし実際には、勤務時間や場所、業務に対する諾否の自由が制限されているなど、とても業務委託契約とはいえないケースが多い。雇用関係にありながら、最低賃金等の保証をされていない状況に置かれている臨床心理士が少なくない」
「臨床心理士=生活していくのが大変」というイメージは今や一般にも広がりつつあり、一時は人気を集めた臨床心理士の資格取得者も、最近では減少傾向にある。メンタルヘルスやうつ病対策の充実が叫ばれているにもかかわらず、その支え手である人材をサポートする体制は、まだ不十分なままだ。