大正二年、独協中学の美術教師・木元平太郎は、小石川林町に子どものための出版社「コドモ社」を設立しました。
そして「コドモ」「良友」「童話」という三つの子ども雑誌を発行しました。
「コドモ」は日本の初期子ども絵雑誌のひとつで、子どもたちの日常生活を美しい石板刷りで表現していました。
そして昭和一〇年代半ばまで幼い子どもたちを楽しませ続けました。
「良友」は小学校低・中学年の子どもたちのために大五年に創刊されましたが、それまでの子ども雑誌にないふたつの特徴を持っていました。
ひとつは投稿欄に、子どもの口語体による作文を載せたこと、そしてもうひとつはコマ割りマンガを日本の子ども雑誌として初めて掲載したことです。
現在のマンガ雑誌のルーツといえる子ども雑誌でした。
「童話」は、大正自由主義文化が生んだ「赤い鳥」「金の船」「おとぎの世界」「こども雑誌」「樫の実」などの文芸子ども雑誌のひとつとして大正9年に発刊されました。
千葉省三・小川未明などの童話とともに西条八十や藤森季夫などの美しい童謡を子どもたちに与え続けましたが、大正一五年、「大正」が終わるとともにその幕を閉じました。
この、子どものための出版企業の創始者・木元平太郎は今、護国寺の墓地に眠っています・・・。
(参考文献 「聞き書き・日本児童出版美術史」 上笙一郎著 太平出版社)
<「郷土教育・707号」より>
-M.N-