郷土教育全国協議会(郷土全協)

“土着の思想と行動を!”をキャッチフレーズにした「郷土教育」の今を伝えます。

小石川・子ども風土記ー12(北原白秋の「子供の村」)

2018年10月28日 | 機関誌


 大正の末ごろ、小石川林町に「アルス」という名の出版社がありました。
 代表者は北原鉄雄、詩人・北原白秋の実弟でした。
 彼は、兄・白秋のよき協力者でありました。
白秋の著作の発行を一手に引き受け、その創作活動を支えたのです。

 白秋が、日本の子どもたちにささげたたくさんの童謡がここ「アルス」社から珠玉のような詩画集となって次々と世に出されました。
「トンボの眼玉」「兎の電報」「まざあ・ぐうす」「花咲爺さん」「二重虹」「象の子」・・・と。

 そのひとつ、大正十四年に出された「子供の村」には、清水良雄の美しい絵にかざられて、次のような詩がのせられていました。


 子 供 の 村

  子どもの村は子どもでつくろ。
     合唱「みんなでつくろ。」
  赤屋根、小屋根、ちらちらさせて。
     合唱「みんなで住まうよ。」
 
  子どもの村は垣根なぞよそよ。
     合唱「ほんとによそよ。」
  草花、野菜、あっちこっち植えて。
     合唱「すず風、小風。」

  子どもの村は子どもできめよ。
     合唱「みんなできめよ。」
  村長さんを一人、みんなで選び。
     合唱「みんなで代わろ。」

  子どもの村は早起きばかり。
     合唱「鶏(こけこっこ)と起きて。」
  朝の中(うち)、御本(ごほん)。お午(ひる)から外へ。
     合唱「はたらいて歌はう。」

  子どもの村は子どもで護ろ。
     合唱「みんなで守ろ。」
  てんでの仕事、てんでにわけて。
     合唱「みんなで励まう。」

  子どもの村は仲よし小よし。
     合唱「喧嘩(いさかひ)せずに。」
  てんでに助け、てんでに仕へ。
     合唱「楽しんで遊ぼう。」

  子どもの村はお伽の村よ。
     合唱「お夢の里よ。」
  星の夜、話。月の夜、お笛。
     合唱「すやすや眠よよ。」

  子どもの村はいつでも子ども。
     合唱「いつでも春よ。」
  子どもの祭、おてんとさんの神輿(みこし)。
     合唱「わっしょ、わっしょ、わっしょな。」

       (「郷土教育 712号」より)

-中村 光夫-

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