ある日二人連れの女性客が訪れ、最初は警戒しているのか、見学に来たと言い、具体的な話にはならず、この事務所の方針や"物づくり"の思いを話していると一人の女性が「キャンセルしようかなぁ?」・・と
最初は何のことかわからなかったが、よくよく聞いてみると、キャンセルしようかといったKさんは、すでに設計事務所で本設計が完了し見積書もできているということだった。
その設計図をもとに見積もりした金額は考えている予算を遥かに超え、調整できる金額では無いと話された。
こだわりの家を建てたいと、施工業者を訪れ、その業者から設計事務所を紹介され、打ち合わせを進め出来上がった設計図もしっくりしないまま設計事務所のペ-スで図面は出来上がったと言うのだった。
「要望を設計事務所に伝えなかったのですか?」と聞くと、
「伝えたのですが、これはああだ、こうだ、と言って説明を 聞いていると なんか納得させられてしまい、結局それは図面には反映されないままに進んでしまったんです」
と・・。
本来設計する立場である設計事務所は、施工業者から紹介されるものではなく、施工業者とは一線を置いたところに有って、プロではない依頼者の要望を専門的な立場から考え施工業者に要望を伝える立場にある筈。
施工業者の紹介であれば、その設計事務所は施工業者の有利な図面になってしまい、依頼者側の立場を通すことはできない。
Kさんは、
「この設計事務所はテレビにも出た有名な設計事務所らしいです。」
「ビフォ-アフタ-に取り上げられた匠だとか・・。」
つづく。