斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

日本高専学会 第13回連続シンポジウム

2011年02月11日 22時37分54秒 | 学校.学会訪問記
表題のシンポジウムに参加しました。
大学や高校などさまざまな教育機関がある中で、こういった形で機関の名称のついた学会が存在してしかも教育を中心に全国規模で勉強しあう”学会”はそうあるものではありません。今回は、この日本高専学会のシンポジウムにて講演をしてきました。

タイトルは、大学人から見た高専のよいところ、です。
内容について、簡単にお知らせします。
① コミュニケーション能力
  ★寮・クラスで同じ釜の飯を食べる
   5年間同じクラスで同じメンバーがすごすことが多いのです。特に寮には中学卒業後すぐに入ります。もちろん、複数人で裸の付き合いが始まります。
  ★鈍感な感覚と敏感な感覚
   最初は寮やクラスのメンバーに戸惑いますが、2年生あたりで、人のちょっかいには鈍感になっていき、人にちょっかいをかけないように敏感になっていきます。4年生くらいで完全に落ち着きます。そうなると、クラスのお互いが阿吽の呼吸で分かり合えるようになります。
  ★高専生の匂い
   お互いの意思疎通のために、自己をむき出しにすることがなくなるので、阿吽だけでコミュニケーションが取れるようになります。これはすさまじく発達したコミュニケーション能力です。ただし、一度高専の外にでると、このコミュニケーション能力が利きません。高専卒業者はよくおとなしいといわれます。これが高専生の匂いです。同じ匂いを持っているもの同士は、高専が違っていても、阿吽が利くのです。

② ネットワークの深さ
  ★一生クラスメートの名前を忘れない
   私など、いまだに全員の名前が出席番号順にいえます。高専の授業のとき、毎日、毎時間出席をとるのです。さすがに一生覚えられます。だから、友達を忘れません。これは、かなり”深い”ネットワークを築きます。
  ★年齢を重ねるごとに仕事がはかどる
   このネットワークは、年を重ねてクラスメートのお互いが社会の中でそれなりのポジションにつくようになると実力を発揮します。名前を忘れないということはすごいことです。
  ★出身高専はこれを使い切っているか?
   この深いネットワークを出身高専は使い切っているでしょうか。高専設立50周年を迎えるにあり、このネットワークをフル活用するよう、同窓会組織との新たな連携を模索するのがよさそうです。ぜひ同窓会も母校のためにお力を貸して下さい。

③ 高専出身といわない奥ゆかしさ
  ★技術者214万人のうちの30万人
   高専出身者は、マイナーだと思っている人が多いのです。ところが、わが国の技術者(平成17年国勢調査の結果)は214万人います。そのうち高専出身者は30万人ほど。実に15%近くは高専出身者です。阿吽の呼吸の利く集団が、実は技術の世界ではメジャーだったのです。全国の高専出身者よ、団結せよ。
  ★高専出身とわかったときのうれしそうな顔
   高専出身者は、社会に出てから出会った人が高専出身とわかると、学校が違っていても思わず「にやっ」となります。阿吽の呼吸のわかる人(コミュニケーションの利く人)に出会ったからです。でも、自ら高専出身といわないのはなぜでしょうか。

④ 学生と向き合う高専
  ★AED完全社会復帰3連発の快挙はKOSENだからこそ可能だった  
   ある高専で、AEDを設置してから3人のAED適用傷病者を出し、しかも3人ともAEDで完全社会復帰に成功しています。AEDの講習会を教職員全員ばかりでなく、学生も受けていたこと、阿吽の呼吸のわかる家族同然の友人を失いたくないこと、阿吽の呼吸で連携がとれたこと、そして高専だから機械操作になれていること、こういう条件が整ったからこそ、完全社会復帰に成功したのだと思います。学生と向き合う高専だからこそ、このような稀有な成功例を持つのでしょう。これがKOSENです。

さいごに、こういういいところをもつ高専ですが、なかなか宣伝してくれるところがありません。そこで、ぜひOB,OGによる高専の宣伝に期待します。まずは、自分たちの子どもに宣伝してください。

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