東京文化会館小ホールに上野 de クラシック Vol.99 黒田祐貴(バリトン)を聴きに行った、11時開演、12時終演、座席は7割くらい埋まっていたか、女性が多かった
出演
バリトン:黒田祐貴
ピアノ:木邨清華(きむら さやか)
黒田祐貴は、1992年生れ、東京藝術大学卒業、同大学院修了、イタリアやドイツで研鑽を積み第87回日本音楽コンクール第2位、第20回東京音楽コンクール第3位。オペラ歌手として活躍するのみならず、ドイツリートの研究にも取り組んでおり、木邨清華氏とのリートデュオでセイジ・オザワ松本フェスティバル、東京やベルリンでのリサイタルなどに出演している、この二人は大学の同窓生
彼の父親は名バリトン歌手・黒田博、親子でバリトン歌手だ、黒田博は一時期NHKのクラシック音楽番組の案内役を務めていたので知っていた、あとを継ぐ立派な息子さんがいたとは知らなかった
ピアノの木邨清華は、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業、第15回大阪国際音楽コンクールAge-G第2位、第4回せんがわピアノオーディション優良賞及び坂井千春賞、第5回Euregio piano award国際コンクール(ドイツ)カテゴリーC第1位、第9回岐阜国際音楽祭コンクール第1位、及び審査員特別賞などの受賞歴がある
曲目
山田耕筰:
- かやの木山の
- 鐘が鳴ります
ヴォーン・ウィリアムズ:『旅の歌』より
- 第1曲 「さすらい人」
- 第7曲 「私はどこへさすらうか」
コルンゴルト:6つの簡素な歌 Op.9より
- 第2曲 「夜のさすらい人」
- 第3曲 「セレナーデ」
:オペラ『死の都』より
- 「我が憧れ、我が幻想」(ピエロの歌)
マーラー:『さすらう若人の歌』
第1曲 「最愛の人が結婚式を挙げるとき」
第2曲 「野原を今朝通ったら」
第3曲 「私は燃え盛る短剣を持っている」
第4曲 「最愛の人の二つの青い目」
(アンコール)
R.シュトラウス作曲「万霊節 Op.10-8」
最近鑑賞した東京文化会館での公演では、公演終了後にアンコール曲の紹介が無いことを指摘したが、今回の公演終了後には「Xで紹介する」と掲示が出ていた、改善されていたのは評価できる
鑑賞した感想を述べたい
- 今日の公演ではそれぞれの曲の終了後に黒田氏のトークがあり、選曲の理由や曲の内容、曲に対する想いなどを話してくれて非常に良かった
- 最近NHKのクラシック音楽番組で、このブログでも紹介したロシアの若手ピアニスト、ダニール・トリフォノフのドキュメンタリーをやっていたが、その中で、トリフォノフは「自分の公演ではピアノを弾く前にはトークはやらない、それは曲に集中できなくなるからだ」と述べていた、それはそれで良いと思う、演奏家それぞれで構わないと思うが、その場合でも演奏終了後、アンコールの前にでも一言語ってもらいたいというのが私の音楽ファンとしての希望である
- 黒田氏は今日初めて見たが、背が高く、スリムな体形で、素晴らしい音声であった、そしてトークの際はユーモアも交えて話ができ、話し慣れているなと感じた、それは良いことだと思う、これからの時代は話もできてSNSなどで発信もできなければ、良い才能を持っているが一生埋もれることにもなりかねないと思う、若手はあらゆるチャンスを利用すべきでしょう
- この日の公演のプログラム・ノートを見ると、「演奏中はお静かにお願いします、咳やくしゃみをする場合、エチケットとしてハンカチなどで口元をおおうことで音量が軽減されます」と出ていた、このような注意書きを見たのは初めてだが、大変いいことだと思う、口元をおおわずに大きな咳ばらいをしている人が少なくないためだ
- さらに、「演奏者は、曲の最後の余韻が完全に消えるまで集中しています、また、お客様にも演奏の余韻をお楽しみいただくため、拍手、ブラボーの掛け声は、曲の余韻が消えるまでお控えください」と書いてあった、これも大変よい注意だと思う、この日は皆さんこの注意をしっかりと守って鑑賞していたと思う
- 上記の2つの注意は演奏前の館内放送でも注意してほしい
- この日の公演は入場料が1,100円と大変お手頃価格である、これでは満員になっても赤字でしょう、プログラム・ノートには助成として文化庁芸術振興費補助金と独立行政法人日本芸術文化振興会と出ているので、赤字のかなりの部分はこの助成で補填されるのでしょう、このシリーズは若手が多く出演しているようだから、若い芸術家を育成するということでしょうか、いいことだと思う、出演の二人は今後とも努力を重ね、このホールを満員にできるようになってもらいたいし、チケット代ももっと取れるようになってもらいたいと願っている
この日の公演で黒田氏が話してくれたことのうち、記憶に残っているものから少し書いてみたい
- コルンゴルトはオーストリア出身の作曲家で1897年生まれだが、戦時中にアメリカに亡命した、クラシック音楽から始めて、後に映画音楽でも名声を得る
- コルンゴルトのセレナーデついて、セレナーデと言えばシューベルトが有名で、恋する女性の住む家の窓の下で愛をささやく歌だ、ところがコルンゴルトのセレナーデは男の思いを激しく吠える歌だ
- コルンゴルトのオペラ「死の都」の「我が憧れ、我が幻想」は自分が東京音楽コンクールで歌ったアリアだが、来年3月にびわ湖ホールで「死の都」に出演することになった
- マーラーは大好きなので今日もマーラーの曲を選んだ
木邨清華のピアノ演奏も素晴らしかった
楽しめました
さて、今日の公演の前に東京文化会館の入口を入り、小ホールに向かう上り傾斜の通路のころでふと左側の壁を観ると、前回訪問した時に見た特徴ある外壁と同じような壁があることに気付いて「あっ!」と思った
さらに、右側の大ホールの入口を仕切る大きな壁や小ホールのチケットチェックの場所を通過して右側の女性トイレに降りる階段につながる壁なども同じ壁だった
今まで全然気にしなかったが、新たな発見に驚いた