政府は5月下旬の月例経済報告で「緩やかに回復」の表現を維持した。このため、政府・与党内では予定通り10月に消費税率が10%に引き上げられるとの見方が強まり、金融市場でも増税延期待望論はしぼんだ。それでも延期論はくすぶり続けている。6月28、29両日に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)前後が最終判断のリミットとみられるが、安倍晋三首相の決断は-。
エスカレートする米中摩擦
月例報告の前週に公表された3月分の景気動向指数は2カ月ぶりに下落。中国経済の減速などが輸出の鈍化につながり、半導体製造装置や自動車関連の生産・出荷に響いた。事前に定められた基準に機械的に当てはめて決める基調判断は、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げられた。
背景にあるのは、10連休明けから急速に激化した米中貿易摩擦だ。
米国は昨年夏から秋にかけて、まず対中制裁の第1弾、第2弾として計500億ドル(約5兆5000億円)分の中国産品に25%の追加関税を発動。第3弾として2000億ドル分に10%の追加関税を上乗せし、この2000億ドル分については5月10日、税率を10%から25%に引き上げた。
13日には「第4弾」の対中制裁措置の詳細を発表。対象となるのは3000億ドル分の輸入品で上乗せする税率は最大25%。最短で6月末にも発動可能な状態になる見込みだ。
日本企業にも波紋
さらに、15日には、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への部品の輸出禁止措置を発動し、関税以外の手段でも締め付けを強化。これに対し、中国は6月1日、米国からの輸入品600億ドル分に対する追加関税率を従来の最大10%から最大25%に引き上げた。
企業にもダメージが及ぶ。
華為の日本企業からの調達額は昨年、66億ドルに達し、今年は80億ドルに増える見通しだった。だが、華為排除の動きが広がる中、同社との取引を停止する日本企業が続出しているほか、第4弾の対中制裁を見据えて中国から生産拠点を移す「脱中国」の動きも出てきた。
「影響は相当ある。部品の調達網(サプライチェーン)を組み替えないといけない」
経団連の中西宏明会長は5月20日の記者会見でこう懸念を示した。
予想外のGDP
「10連休明けに一気に増税延期の見方が強まった」
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストはこう解説する。実際、同社は増税延期の可能性を従来の30%から50%に引き上げた。
ところが、多くの市場参加者がマイナス成長を見込んでいた1~3月期国内総生産(GDP)は予想外のプラス成長。月例報告も景気が回復傾向にあるとの認識が保たれた。
これを受け、自民党の甘利明選対委員長は5月27日のBS日テレ番組で、増税について「延期はもうない」と明言。菅義偉官房長官も翌28日の記者会見で、「リーマン・ショック級の出来事がない限り、消費税は引き上げる予定」と語った。
こうした事情から、5月末には市場の増税延期待望論は急速に縮小した。モルガン・スタンレーMUFG証券も5月31日付のリポートで「市場参加者の増税延期への期待は大きく低下した印象を受ける」と指摘した。
G7の再来は?
だが、増税は景気には逆風だ。
「10月時点で海外経済が減速を続けている場合、わが国経済を下押しする影響が大きくなる可能性はある」
日本銀行の桜井真審議委員は5月30日、静岡市での講演で増税の影響をこう分析し、警戒感を示した。
界全体の実質GDP成長率が2018年から縮小し、19年は3.2%、20年は3.4%との経済見通しを発表した。日本については、19年と20年のGDP成長率をそれぞれ0.7%、0.6%とし、3月の前回予測から0.1ポイントずつ下方修正した。米中貿易摩擦の影響が大きく、OECDは「持続可能な成長を取り戻すべく、各国政府は共に行動しなければならない」と強調した。
そんな中、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが開かれる。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口氏は「日本は議長国として、機動的な財政政策などを各国に呼びかける可能性が高い。それにもかかわらず、日本のみが増税すれば、他国の景気下支え策に『ただ乗り』していると批判される恐れもある」と分析する。
平成28年5月下旬、三重県で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット、G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進め、直後に延期を正式表明した。
果たして、G20はG7の再来となるのだろうか…。
以上、産経新聞
今、消費税増税すれば、日本経済は撃沈します。安倍政権も崩壊することでしょう。
増税のタイミングは、インフレ3%を超えた時だと個人的に思っていますが、法人税、所得税を増収する努力が足りません。