[ワシントン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国政府の実務担当者は米国製品の輸入を拡大して、3750億ドルに上る対米貿易黒字の削減に役立つ手っ取り早い方法を探し回っている。手始めに目を付けたのは大豆と石油で、これはトランプ米大統領と彼の支持層の怒りを和らげるかもしれない。しかしもっと良い手段がある。
中国が既に正式許可なく使用している数多くのマイクロソフト(MSFT.O)やアドビ(ADBE.O)の製品に対してきちんとライセンス料を支払うとともに、オラクル(ORCL.N)やセールスフォース(CRM.N)にサービスを新規発注することだ。
そうすれば、米中貿易摩擦の主な問題の1つとなっている知的財産権を尊重するという中国側の主張が、単に口先だけでないと証明される。中国経済に現実的なメリットも、もたらしてくれる。
これに伴う中国企業へのマイナス効果はない。全くのゼロだ。
PwCが調査した売上高ベースの世界のソフトウエア企業トップ100のうち、中国勢からランクインしたのは東軟集団(600718.SS)1社のみ。そんな状況になっている主な理由は、ソフトウエアにお金を使いたがらない中国の風潮にある。
IDCのデータによると、中国企業はIT予算のわずか5%しかソフトウエアのライセンス料に支出していない。米企業のこの比率は33%に上る。中国企業のIT担当幹部は、ソフトウエアを購入せず、広く普及している製品を無断でコピーしてしまう。
ビジネス・ソフトウエア・アライアンス(BSA)が2016年にまとめたリポートには、中国にあるコンピューターにインストールされたソフトウエアの70%が無許可使用で、被害額は推定約90億ドルと記されている。
多くの中国企業は別のやり方として、人件費の安いプログラマーを採用して独自のソフトウエアを開発している。だが、これらは一般的に設計に不備があって維持コストもかさむばかりか、違法コピー製品と同様にセキュリティー上の欠陥だらけだ。つまり大々的に事業を非効率化させているだけの意味しかない。
中国政府は国産の基本ソフト(OS)や文書作成ソフトの開発を試みている。とはいえ、こうした取り組みはほとんどがオープンソースコードによって生み出されるだけに、経済的な価値はない。
だからこそ米国からプログラムを買うべきではないだろうか。
石油と違って、ソフトウエアはいくらでもすぐ輸入できる。現代の米経済が生み出した最良の製品を使えるし、人工知能(AI)、自動運転車といった技術の開発を続けられる。セキュリティー面で新たな打撃を受けるわけでもない。中国が国産品を使ったとしても米国の諜報部門はハッキングが可能なのだから。
もちろん米国製ソフトウエア購入には「バグ」もある。トランプ大統領は、米経済を世界の製造業の頂点に君臨していたかつての姿に戻したがっており、ハイテク業界を嫌っている。習近平国家主席に関しては、外国が影響力に対する妄想を作り出しているというのが、彼の統治における特徴の1つだ。
それでも米中両国が交易条件を修正するつもりなら、最初に着手すべきはソフトウエアの分野にほかならない。
●背景となるニュース
・中国の企業や公的機関はずっと前から知的財産権、特にソフトウエア分野で重大な侵害を行ってきた。非営利団体ビジネス・ソフトウエア・アライアンス(BSA)が2016年にまとめたリポートによると、中国でインストールされたソフトウエアの70%は正式な使用許可を得ていなかった。被害額は推定90億ドル近いという。
・中国の新たなサイバーセキュリティー法は、国内企業や公的機関に自国製商品の使用を奨励しており、外国製品の販売が一段と難しくなった。
・IDCのワールドワイド・ブラック・ブック2017のデータに基づくと、中国企業はIT関連予算のわずか5%しかソフトウエアに支出していない。米国の支出割合は33%だった。
以上、ロイターコラム
>中国政府の実務担当者は米国製品の輸入を拡大して、3750億ドルに上る対米貿易黒字の削減に役立つ手っ取り早い方法を探し回っている
>米中貿易摩擦の主な問題の1つとなっている知的財産権を尊重するという中国側の主張が、単に口先だけでないと証明される。中国経済に現実的なメリットも、もたらしてくれる。
中国はアメリカ対黒字削減策を試行錯誤しているようだ。
米中貿易戦争が既に始まっており、日本も自動車関税25%のあおりを受けようとしている。