【工芸品ショップ 泉亀(いずかめ)】の店主のブログ

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大阪欄間と井波欄間。その2

2015-09-15 10:00:00 | 銘木の豆知識と匠の技

以前、ご紹介した「大阪欄間と井波欄間」ですが、面白いかなと思い、Facebookにも同じような内容で投稿してみました。


すると、多くの方から反響を頂き、中には、質問も頂きました。


こちらでも、簡単にご説明させて頂きます。



頂いたご質問は、「表裏の柄が違うのですか?」という内容でした。





これは、井波欄間なら、その技法が可能です。


井波彫刻会館を訪れた際に、作業工程を見学したのですが、彫り始める前の使用材は、完成品の三倍ほどの幅があります。


それに図柄を描いてから、荒く彫っていき、しだいに道具や彫り方を変えながら仕上げていきます。


欄間が枠からはみ出すように彫り躍動感を表現するのが井波欄間の特徴です。


使用する材も欅や栃など、広葉樹なので、比較的材質が硬いため、表と裏の両方から掘り下げていって完成させるという技法が


使えます。



何故、枠からはみ出すように彫るのかという理由ですが、井波欄間は主に寺院の本堂などに施されます。


かなり高い位置にあり、見上げるように眺めるのが一般的です。


ですので、見上げた時に、インパクトや存在感があるように演出するため、あえて枠からはみ出し、張り出すように彫られます。



それとは違って大阪欄間はまた違った特徴があります。





大阪欄間は、図柄が表裏逆に彫られるのが一般的です。中には枠からはみ出すように彫られるものもありますが、躍動感よりは、


落ち着きを重視して彫られます。やさしい表情の図柄が多いのが特徴です。


大阪欄間の使用材は、主に杉や桧などの針葉樹ですので、自然と表情もやさしい印象になります。


またもしも、大阪欄間で井波欄間のように表裏逆の図柄を彫ろうとすると、材質がやわらかすぎて作業工程で無理が生じます。


大阪欄間は、あえて向こう側が見えるように彫られます。それは、もともとが採光を目的として作られるからです。



大阪欄間は寺社建築が発端でしたが、貴族階級の住居に用いられるようになり、江戸時代には一般家庭にも取り入れられるように

なりました。


採光目的なので「あえて向こう側の和室の天井や灯りも見えるように」という考え方で彫られます。


また大阪欄間は彫刻欄間のほか、透かし模様も施した透かし彫り欄間や組子欄間など種類も豊富です。



このように、利用目的や技法も異なる二つの欄間ですが、どちらも地域が誇れる伝統工芸品なのです。


ですから、甲乙付け難く、どちらもそれぞれの良さが光ります。


それぞれに、新進の匠も育てられているとお聴きします。是非、技を継承して、次代に残してほしいと思います。



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