はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
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臥龍的陣 太陽の章 その61 やっと太陽に

2023年02月15日 09時55分10秒 | 英華伝 臥龍的陣 太陽の章
陳到も関羽も、温和な印象がつよい麋竺の意外なことばに、思わず顔を見合わせる。
だが、劉備は、だいたいの予想をつけていたようで、顔にあらわさず、さらに尋ねた。
「それだけではないな。あなたは、なんだって孔明に意味ありげに壷中の名だけを教えたのだ。
もし自分が失敗して、帰らないようなことがあったら、壷中という言葉を手繰《たぐ》って、孔明に壷中を潰してもらおうという魂胆があったのではないか」


麋竺は、悲痛な面持ちでうつむき、搾り出すように言った。
「まさにそのとおりでございます」
さらに劉備が口を開こうとしたとき、横からするどく嫦娥《じょうが》が割って入ってきた。
「ご無礼をお許しください、劉豫洲。
この計画は、子仲さまだけが練ったものではございませぬ。
わたくしと、襄陽の崔州平と、ほかの壷中に恨みのある者たちが集って、はじめたことなのです。
結局は、孔明どのにすべてを背負わせる形となってしまいましたが、壷中は孔明どのにとっても仇。


これは必然だったのでございます」


「必然、か。好きな言葉ではないねえ。
だが、あんたたちの立てた計画は、潘季鵬が妙な動きをしたせいで、おかしな方向に行ってしまったというわけか。
これで孔明や子龍が帰ってこなかったら、わしにとっての仇は、あんただったり、子仲さんだったりしてしまうわけだが」
「覚悟はしております。
ただ、最後に、せめて壷中を潰すお手伝いをさせてくださいませ」
食い下がる嫦娥と劉備は、しばらく無言で視線を戦わせていた。


やがて、劉備はうなずいた。
「よし。そこまでいうなら、あんたを信じよう」
「兄者! よいのか。この女の計画こそが、壷中の罠かも知れぬぞ」
関羽が抗議するが、劉備はいつになく厳しい顔をして、義弟に言った。
「だから、兵を分ける。
壷中ってのも二つに分かれているのだろう? 
まず、わしは張飛をつれて襄陽城に向かう。
劉表の様子をこの目で確かめるためだ。
おまえと陳到は、嫦娥さんと一緒に樊城へ向かえ。
ただし、なるべく身軽にして、一日でも早く樊城へ行けるように、人数も最低限にな。
人選は任せる。
樊城で壷中を見つけたらどうするか、それもおまえの判断に任せる。
ただ、子供は殺すなよ」
「わかった。すぐに手はずを整える」


言葉どおり、関羽はくるりとせを向けて、のしのしと兵舎のほうへと向かっていく。
その背中を頼もしそうに見ていた劉備であったが、ふたたび顔を戻して、麋竺を見た。
「子仲さんは、新野で留守番だ」
「蟄居では軽いという者もおりましょう」
「なに言っているのだ。孔明もあんたもいない状況で、新野の文官は全員、真っ青になって仕事をしているぞ。
いまも仕事は山のようにある。
そいつをひとりで片づけてくれっていう話をしているのだ。
ある意味、どんな罰より重いと思うが」
「なんと慈悲深い。つつしんで、罰をお受けいたします」


深々と麋竺が頭を下げると、後ろで養父をささえるように佇んでいた伯亮と仲亮の養子兄弟も、同じように深々と劉備に頭を下げた。
「まだなにも終わっちゃいない。
全部終わってから、またきちんと話そうではないか。
そうだな、孔明が襄陽城からもどってきてからな」
はい、と返事をする麋竺の声は、感激の涙で震えていた。


その声を背に、
「さて、いそがしくなるな」
とつぶやきつつ、劉備は出立の支度をするため城内へ向かう。


調練場では、うつろな眼窩の変色したどくろが、いまも並べ続けられている。
娼妓たちは、
「ああ、やっと、おとっつあん、おっかさんがお日様のもとに戻って来た」
といって泣いていた。
そのすすり泣きを怒りに変えて、陳到もまた、出立の準備に入るのだった。


つづく


※ いつも当ブログに遊びに来てくださっているみなさま、ありがとうございます!
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今回で、ほぼ全員が樊城に向かう展開までいきました。
さて、これからどうなるか? おたのしみにー(*^▽^*)
でもって、昨日はちょっとしたクレカのトラブルが発生し、今日はてんやわんやです;
みなさまも、クレカの扱いにはどうぞご注意くださいませ…
ではでは、よい一日をー('ω')ノ



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