情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

情報を定義して生成する検出器 感覚器(受容器)の本質

2019-04-30 10:32:31 | 情報と物質の科学哲学

検出器は、情報を定義して創発する最も簡単な機械です。

ガス検出器は、ガスが基準量より多いと緊急事態発生を意味する警報音を出力します。
この出力は一種類なので2値情報を出力しているのではありません。
しかし、
(1)出力がないときは”危険なし”という情報を暗に意味するので
(2)潜在的に2値情報を出力していると解釈できます。
この情報は、情報概念として最も原始的な性格を持ちます。
これを原情報と名付けます。

すると、次の拡張関係が成り立ちます。
 原情報 → 2値情報 → 多値情報 → アナログ情報

ガスを検出した検出器がパルスを出力し、その物質的作用で元栓が締まる制御装置を考えます。
このパルスは、制御装置に”情報を伝えている”と言う必要があるのでしょうか?
いいえ。
パルスが制御装置に与える作用はエネルギーという物理的作用に限られるからです。
敢て”情報を伝える”という言い方をする必要はないのです。

ここで、
(1)入力信号の大きさが検出器のしきい値を超えたら正のパルス
(2)超えなかったら負のパルス
それぞれ出力する検出器(しきい値素子)を考えます。
この検出器は、入力信号の大きさに関する2値情報の定義とそれを表現するパルスを生成します。
これが「機械による情報の定義と生成」の基本的形態です。

ここで、わざわざ情報の定義という表現を用いたのには極めて重要な意味があります。
検出器のしきい値は、検出器の都合により決められる恣意的な値であり、何ら客観的なものではありません。
検出器が生成する2値情報はその恣意的なしきい値によって決まるので、検出器が2値情報を定義するということに本質的な意味があるのです。

従って、この2値情報は検出器というシステムが定義するものであり、客観的な概念ではありません。
この性格を持つ情報をシステム依存的であると名付けます。

検出器の出力パルスは、入力信号と閾値との大小関係という2値情報を表現しています。
このような物質を情報表現物質と名付けます。

先のガス検出において特に注意すべきことは、出力パルスは検出された物質とは
全く無関係であることです。
このパルスは、
(1)検出器による”特定の物質を検出した”という情報化の代償として、
(2)検出された物質に関する一切の情報を失っています。
これを物理量の抽象化あるいは透明化と名付けます。

このことは自明ですが、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの受容器のように異なる入力物質に対して出力がすべて同一形式の神経パルスである場合には、極めて重要な意味を持つのです。

これらの抽象化(透明化)された神経パルスが神経回路網において別々のものとして
意識される理由は謎に包まれています。
この謎についての仮説を後のブログで提唱します。

生物進化の過程を見ると、
(1)まず検出器のような機能を持つ生物が出現し、
(2)その検出器が測定器のようなものに進化したと推測できます。

図式的には次のようになるでしょう:
物質検出(検出器)→ 信号化(感覚器)→ 情報化(神経回路)→ 意識化(神経回路)

最近、生物の進化と意識の起源との関係を詳細に論じた大著の邦訳が出ました:
トッド・E・ファインバーグ、ジョン・M・マラット(鈴木大地訳)
 『意識の進化的起源-カンブリア爆発で心は生まれた」-』、勁草書房、(2017)

意識という概念は非客観的なものであり、その定義も確立していません。
本書ではもっとも基盤的で感覚的な意識の本性と起源について説明しています。
そして、最初の脊椎動物が最初の意識を有していたと主張しています。
本書の議論は足が地に着いたものであり、意識を扱う哲学者の空理空論より
よほど説得力があります。

詳細は、パソコンサイト 情報とは何か 情報と物質の関係から見える世界像 を是非ご覧ください!



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