ポール・デイヴィス(水谷淳訳)
『生物の中の悪魔ー「情報」で生命の謎を解く』
SBクリエイティブ株式会社(2019.9)
著者は、物理学者で宇宙論学者です。
情報が生物の現象にどのように関わっているのかを幅広く紹介しています。
目次
第1章 生命とは何か
情報=遺伝情報
第2章 悪魔の登場
情報=エントロピー
第3章 生命のロジック
情報=論理
情報処理
第4章 進化論2.0
第5章 不気味な生命と量子の悪魔
量子生物学
第6章 ほぼ奇跡
生命の誕生
第7章 機械の中の幽霊
1.どのような物理プロセスが意識を生み出すのか?
2.心が存在するとしたら、心はどのようにして物理世界の中に違いを生み出せるのか?
エピローグ
以下は、読後感です。
本書で使われている情報概念は、シャノンの情報と遺伝情報です。
この点は、従来の関連書と同じで期待外れでした。
私は、特に脳神経を扱うにはシャノンの情報だけでは間に合わないと確信しています。
何故なら、感覚受容器が創発する情報がすでにシャノンの情報ではないからです。
デイヴィスは、生物にとって情報が重要であると言いながら感覚受容器については全く触れていません。
クオリアについても言及を避けています。
そのクオリアを飛ばして意識について多くの議論をしているのは本末転倒です。
何故なら、進化論的にまずクオリアが創発され、そのあとで意識が創発されたからです。
これは、進化論的に証明されている事実なのです。
今でもクオリアの機能しか持たない動物は多数います。
当ブログで情報概念は物質との関係で定義しなければ意味がないと繰り返し指摘しています。
この点を無視した議論は、生物や脳に関する現象の本質に決して迫りません。
遺伝情報という概念も遺伝子の機能を分かりやすくするための便宜的なものです。
何故なら、遺伝子の働きはすべて物理法則だけで説明できるからです。
それにも拘らず、遺伝情報が不可欠な概念であるとされるのは実に不可解です。
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