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SF長屋 その3 サミュエル・R・ディレーニイ

2006年01月05日 | SF
先月、ハヤカワSF文庫でサミュエル・R・ディレーニイの「ノヴァ」が再版されました。しばらく品切れになっていたんですね。可もなく不可もないコンテンポラリーな作品を出すより、古いけれど傑作を品切れにさせない、こういうやり方には賛成です。売上アップにもつながるでしょうし。
表紙のイラストがおとなしくなりましたが、個人的には旧いほうの、生頼範義の派手な絵のほうがイメージにぴったりくるんですが。

はるかな未来、人類は機械との半共生で宇宙船を操りながら宇宙を飛び回っていました。そして超稀少物質「イリュリリオン」を求めるキ○○イ船長のもとに、一癖も二癖もあるキャラが集まります。かれらをつけねらう謎の兄妹の攻撃をかわしながら、船長は「イリュリリオン」を探し出すことができるのか? 絢爛極彩色のスペースオペラです。しかも解説の伊藤典夫によると、それ以上の形而上的意味が背後に隠されているんだそうですが、読んだだけではそんなことはこれっぽっちも分かりません。そんなこと気にしなくとも、とにかくかっこいいSFです。

1960年代に書かれたアメリカSFですが、著者は黒人&バイセクシャルでした。20代でこんな作品を書いたんですから、ほんまもんの天才でしょう。いまは大学で英文学かなにかの教授をしているそうです。

邦訳はあまりないのですが、サンリオSF文庫から出ていた「エンパイアスター」は超傑作です。短い作品ですが、その背景にはめくるめくような濃い物語が隠されています。少年と少女が、時空を越えてお互いに導きあう驚愕の螺旋物語。大枠はスターウォーズ風スペースオペラでありながら、成長小説、経済小説、認識論、文学論、奴隷論等、久しく絶版なので古本屋で見かけたなら即サルベージをお勧めします。
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