特別展 国宝燕子花図 -光琳 元禄の偉才- @根津美術館
何故か足を運んだことがなかった根津美術館に、久々に国宝燕子花図が出展されるというので、会期間際の5日(土)に行ってきた。国宝燕子花図を目当てにいったのだが、まずは第二室の方から鑑賞。
お茶道具が秋の茶会のイメージで展示。ご婦人方がお道具についてメモを取っている。例えば、
大名物 落葉の色紙 伝西行
「寺落葉 せきてらや 人もかよはず なりねれば もみじちりしく にはのをもかな」
茶入 中興名物 瀬戸玉柏子 銘村雨
副茶碗 古志野 銘あさか山 松平不昧公所持
また、
乾山の「錆絵楼閣山水文茶碗」。国立博物館の「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」(観覧記はこちら)では、乾山はピンとこなかったが、この作品は錆絵の茶色と地はだの色の対比、口の金の装飾となかなかの趣を感じた。そのほか呉須恵が何点か特集展示されていた。
さらに第4室は
中国の商時代の青銅器、トウテツモンカ 饕餮文斝(「饕餮」は中国の怪獣、斝は酒器の一つ)とか饕餮文○という名称の様々な種類の青銅器が展示されていた。「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」の「交趾じこう香炉」(奥田頴川)は中国の青銅器を模した作品であり、なんとも中国の想像の動物たちは可愛らしいとおもったが、ここの「饕餮」たちが元祖。これが紀元前11世紀の造形かと思うほど素晴らしい。根津翁が好んで集めたというのも納得。青銅器の説明はその場にもあったが、たとえば、このサイトにも詳しい。
そして、第一室の「特別展 国宝 燕子花図 - 光琳 元禄の偉才 -」(後期)
前期後期あわせて、44点あまりが展示された一寸した光琳展。最近、光琳、琳派については近年たびたび展覧会が催されていたが、全く鑑賞していなかったので、今回初めて光琳の世界を俯瞰できた。
西行物語絵巻 紙本著色 四巻のうち二巻 宮内庁三の丸尚蔵館
白い空間を生かし、暖色を多用した明るい色調かつ清楚なイメージの絵巻物。書は全く理解しないが、達筆と見た。献上品に相応しい。(宮内庁所蔵の作品は御下賜されないと重要文化財にも国宝にも指定されない。)
国宝 八橋蒔絵螺鈿硯箱 東京国立博物館
おなじみの硯箱
四季草花図 紙本金地著色 六曲屏風 一隻 個人蔵
草花がこれでもかこれでもかと生えている。近づいてみるとどの草花も意匠をこらしていて不思議な世界。アンリ・ルソーのジャングルではいいすぎだが、それを空いたようなデザイン。
槇楓図 紙本金地著色 六曲屏風 一双 東京藝術大学美術館
こちらは、一寸離れてみると楓の赤が映えます。
国宝 燕子花図
光琳四十四歳代中ごろの比較的初期の制作とのこと。大きな作品は、やはり実物に接すると違う。左右の屏風で群青、緑青の燕子花の色が異なるとは。
「伊勢物語」からということだが。
からごろも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ
という歌を思い出さないといけなかったが、勿論失念していた。…昔教科書にあった折句の技法。次回の機会には、恋というキーワードで、そのつもりで見ないと。分かっていませんでした。光琳の屏風は、あとMOA美術館「紅白梅図」の金箔に騙されるか否か確認しに行かねば。Juliaさんによれば、メトロポリタンにも「八ツ橋」があるとのこと。「国宝」によれば、戦後に海外に流出した作品
陶磁器で目が言ったのは、
錆絵山水図四方火入れ 大和文華館 乾山作・光琳画
重要文化財 寿老図六角皿 大倉集古館 乾山作・光琳画
(この作品は、11/8からは「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にて展示。)
錆絵寒山拾得図角皿 二枚 個人蔵 乾山作・光琳画
これらの作品も、「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にはピンと来ていなかったが、なかなか錆絵はいい。光琳画の威力。前述の乾山と比較してみればよかったと思ったが、後の祭り。
さらに
重要文化財 白綾地秋草模様小袖 光琳筆 一領 東京国立博物館
小袖に模様を筆で描いたのか。染でも織でもなく、直に描いたと見た。淡い色合いがでて面白い。保存状態もよい。
何幅かの掛け軸と意匠帖
思いがけずも、巻物、屏風、画幅、漆工、陶磁 など光琳の幅広い活躍の一端を窺える展覧会だった。逆の言い方をすれば、根津美術館のサイトはもうすこし詳しいとうれしいですね。
何故か足を運んだことがなかった根津美術館に、久々に国宝燕子花図が出展されるというので、会期間際の5日(土)に行ってきた。国宝燕子花図を目当てにいったのだが、まずは第二室の方から鑑賞。
お茶道具が秋の茶会のイメージで展示。ご婦人方がお道具についてメモを取っている。例えば、
「寺落葉 せきてらや 人もかよはず なりねれば もみじちりしく にはのをもかな」
また、
乾山の「錆絵楼閣山水文茶碗」。国立博物館の「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」(観覧記はこちら)では、乾山はピンとこなかったが、この作品は錆絵の茶色と地はだの色の対比、口の金の装飾となかなかの趣を感じた。そのほか呉須恵が何点か特集展示されていた。
さらに第4室は
中国の商時代の青銅器、トウテツモンカ 饕餮文斝(「饕餮」は中国の怪獣、斝は酒器の一つ)とか饕餮文○という名称の様々な種類の青銅器が展示されていた。「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」の「交趾じこう香炉」(奥田頴川)は中国の青銅器を模した作品であり、なんとも中国の想像の動物たちは可愛らしいとおもったが、ここの「饕餮」たちが元祖。これが紀元前11世紀の造形かと思うほど素晴らしい。根津翁が好んで集めたというのも納得。青銅器の説明はその場にもあったが、たとえば、このサイトにも詳しい。
そして、第一室の「特別展 国宝 燕子花図 - 光琳 元禄の偉才 -」(後期)
前期後期あわせて、44点あまりが展示された一寸した光琳展。最近、光琳、琳派については近年たびたび展覧会が催されていたが、全く鑑賞していなかったので、今回初めて光琳の世界を俯瞰できた。
白い空間を生かし、暖色を多用した明るい色調かつ清楚なイメージの絵巻物。書は全く理解しないが、達筆と見た。献上品に相応しい。(宮内庁所蔵の作品は御下賜されないと重要文化財にも国宝にも指定されない。)
おなじみの硯箱
草花がこれでもかこれでもかと生えている。近づいてみるとどの草花も意匠をこらしていて不思議な世界。アンリ・ルソーのジャングルではいいすぎだが、それを空いたようなデザイン。
こちらは、一寸離れてみると楓の赤が映えます。
光琳四十四歳代中ごろの比較的初期の制作とのこと。大きな作品は、やはり実物に接すると違う。左右の屏風で群青、緑青の燕子花の色が異なるとは。
「伊勢物語」からということだが。
からごろも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ
という歌を思い出さないといけなかったが、勿論失念していた。…昔教科書にあった折句の技法。次回の機会には、恋というキーワードで、そのつもりで見ないと。分かっていませんでした。光琳の屏風は、あとMOA美術館「紅白梅図」の金箔に騙されるか否か確認しに行かねば。Juliaさんによれば、メトロポリタンにも「八ツ橋」があるとのこと。「国宝」によれば、戦後に海外に流出した作品
陶磁器で目が言ったのは、
(この作品は、11/8からは「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にて展示。)
これらの作品も、「特別展 華麗なる伊万里、雅の京焼」にはピンと来ていなかったが、なかなか錆絵はいい。光琳画の威力。前述の乾山と比較してみればよかったと思ったが、後の祭り。
さらに
小袖に模様を筆で描いたのか。染でも織でもなく、直に描いたと見た。淡い色合いがでて面白い。保存状態もよい。
思いがけずも、巻物、屏風、画幅、漆工、陶磁 など光琳の幅広い活躍の一端を窺える展覧会だった。逆の言い方をすれば、根津美術館のサイトはもうすこし詳しいとうれしいですね。
- おまけ
- 伊勢物語(9段)の全文はたとえばこちら(ヴァージニア大学)
- 三河八橋の伊勢物語旧跡案内はこちら
- かきつばたの歌の英訳。(メトロポリタン美術館のサイトから。) I have a beloved wife, Familar as the skirt Of a well-worn robe, And so this distant journeying Fills my heart with grief.