特別展「永青文庫の近代日本画―細川家に集った巨匠たち」
何人か方のBLOGやとらさんのHPをみて気には留めていたのですが、今朝、青色通信のアイレさんからのTBを受けてBLOGを拝見していたら、あれ、今日13日までならば永青文庫で菱田春草「黒き猫」を鑑賞できると、はっと気がつきました。
一ヶ月ほど前に健康診断を受けていて、待合においてあったのが、かなり古い数冊のアサヒグラフ(?)。一冊ずつ一画家の画集になっている。その中の1冊が菱田春草。初期から晩年までの作品が大判の印刷で眺められるグラフ誌の解説で、特に晩年の数年の作品が高く評価されていました。「黒き猫」の他に「落葉」(これも永青文庫所蔵とのこと)とか数点のイメージが蘇ります。(「黒き猫」は記念切手にもなっていましたね。)
永青文庫のHPを見ると、
「重要文化財 黒き猫 菱田春草筆[明治43年] 紅葉した柏の樹と猫をみごとに調和させて描いているこの作品は、明治42年発表の『落葉』とともに、菱田春草(1874~1911)の代表作となっている。明治43年第6回文展に出品され話題を呼んだ。熊本県立美術館寄託。 」とあるではないですか。いつもは熊本か。これは今日やはり行くしかない、と終に思い立って行ってきました。チラシ一枚だとなかなか腰が重いのですが、皆さんのBLOGやHPを拝見しているとついつい行きたくなります。
永青文庫は、細川家に伝来する歴史資料や美術品等を所蔵する美術館。訪れるのは初めてです。目白台の椿山荘、東京教区カテドラルのすぐそばにある元の細川家の屋敷跡のちょっと鬱蒼とした樹木のなかに永青文庫はありました。
今回の特別展では、侯爵16代護立公によって収集されたものが主に展示されていました。
富岡鉄斎で展示は始まります。
中村岳陵「輪廻物語」(1927) 第8回院展出展。調和と統一は31歳とは思えぬ成熟したぶり。力量を認めれた作品*1。また「魔女」(1960)「摩耶夫人」(1960)など岳陵が四天王寺金堂壁画を製作していたころの作品。同じモチーフなのだろう。「摩耶夫人」の背景の青緑の斑模様の筆の使いが摩耶夫人の白い顔と表情を引き立たせています。
下村観山「鷹」十四歳の作品。鷹の緻密な表現。ちょっとびっくりです。
横山大観の勅題画「池辺鶴」(1935)「海上雲煙」(1936)「朝陽映島」(1939)。特に最後の1点には小品ながら勅題画を描くという画家の気迫を感させます。(それが「とらさん」の戦争画へのopinionにもつながるのでしょうが。)
安田靫彦「聚楽茶亭」(1905)。第6回紅児会展出展。武人らしくも茶を嗜むという秀吉の姿が描かれています。
小林古径「鶉」(1913頃)。古径の描く動物はいつも素晴らしいです。鶉の羽毛の様子など秀逸。先般古径展(感想はこちら)にもでていた「孔雀」(1934)も展示されていました。
鏑木清方「抱一上人」(絹本3面)(1909)。烏合会第19回展出展。中央に三味線を奏でる抱一上人。両側に細長い構図で着物姿の女性を一人ずつ配置。「市民の風雅に遊ぶ」ことを鏑木は目指していたと説明にありましたが、左の少しうつむいた若い女性の表情、手のしぐさが江戸風俗の女性の風雅の一瞬を表しています。表装の金の模様も凝っています。鏑木清方が書いた手紙も展示されていました。
横山大観など5人の「鳥尽」。杉戸に5人の画家が一羽ずつ鳥を描いています。大観のフクロウは可愛らしいくも、堂々と描かれています。
そして、最後に菱田春草「黒き猫」。黒き猫の毛並みはふわふわ。朦朧体を極めた春草ならでは。黄葉は、空気の澄んだ秋らしく、くっきりと描かれています。そして、木肌の様子は、まるで本当の樹木を見ているかのようで、それでいて意匠化されています。斜めに横切る枝、樹木という構図に、黒き猫が画竜点睛として画面の重心に収まってこちらを向いていました。ちょっと腰を屈めると、掛け軸として丁度よい高さで鑑賞できます。
それにしても、永青文庫の現在の建物は旧細川公爵家の家政所(事務所)として昭和初期に建設されたものとのことですが冬は冷えますね。美術品にはいいかもしれませんが、鑑賞者にとっては。。。
*1 生誕百年記念中村岳陵展 図録(平成2年) の河北倫明氏の解説による。
何人か方のBLOGやとらさんのHPをみて気には留めていたのですが、今朝、青色通信のアイレさんからのTBを受けてBLOGを拝見していたら、あれ、今日13日までならば永青文庫で菱田春草「黒き猫」を鑑賞できると、はっと気がつきました。
一ヶ月ほど前に健康診断を受けていて、待合においてあったのが、かなり古い数冊のアサヒグラフ(?)。一冊ずつ一画家の画集になっている。その中の1冊が菱田春草。初期から晩年までの作品が大判の印刷で眺められるグラフ誌の解説で、特に晩年の数年の作品が高く評価されていました。「黒き猫」の他に「落葉」(これも永青文庫所蔵とのこと)とか数点のイメージが蘇ります。(「黒き猫」は記念切手にもなっていましたね。)
永青文庫のHPを見ると、
「重要文化財 黒き猫 菱田春草筆[明治43年] 紅葉した柏の樹と猫をみごとに調和させて描いているこの作品は、明治42年発表の『落葉』とともに、菱田春草(1874~1911)の代表作となっている。明治43年第6回文展に出品され話題を呼んだ。熊本県立美術館寄託。 」とあるではないですか。いつもは熊本か。これは今日やはり行くしかない、と終に思い立って行ってきました。チラシ一枚だとなかなか腰が重いのですが、皆さんのBLOGやHPを拝見しているとついつい行きたくなります。
永青文庫は、細川家に伝来する歴史資料や美術品等を所蔵する美術館。訪れるのは初めてです。目白台の椿山荘、東京教区カテドラルのすぐそばにある元の細川家の屋敷跡のちょっと鬱蒼とした樹木のなかに永青文庫はありました。
今回の特別展では、侯爵16代護立公によって収集されたものが主に展示されていました。
富岡鉄斎で展示は始まります。
中村岳陵「輪廻物語」(1927) 第8回院展出展。調和と統一は31歳とは思えぬ成熟したぶり。力量を認めれた作品*1。また「魔女」(1960)「摩耶夫人」(1960)など岳陵が四天王寺金堂壁画を製作していたころの作品。同じモチーフなのだろう。「摩耶夫人」の背景の青緑の斑模様の筆の使いが摩耶夫人の白い顔と表情を引き立たせています。
下村観山「鷹」十四歳の作品。鷹の緻密な表現。ちょっとびっくりです。
横山大観の勅題画「池辺鶴」(1935)「海上雲煙」(1936)「朝陽映島」(1939)。特に最後の1点には小品ながら勅題画を描くという画家の気迫を感させます。(それが「とらさん」の戦争画へのopinionにもつながるのでしょうが。)
安田靫彦「聚楽茶亭」(1905)。第6回紅児会展出展。武人らしくも茶を嗜むという秀吉の姿が描かれています。
小林古径「鶉」(1913頃)。古径の描く動物はいつも素晴らしいです。鶉の羽毛の様子など秀逸。先般古径展(感想はこちら)にもでていた「孔雀」(1934)も展示されていました。
鏑木清方「抱一上人」(絹本3面)(1909)。烏合会第19回展出展。中央に三味線を奏でる抱一上人。両側に細長い構図で着物姿の女性を一人ずつ配置。「市民の風雅に遊ぶ」ことを鏑木は目指していたと説明にありましたが、左の少しうつむいた若い女性の表情、手のしぐさが江戸風俗の女性の風雅の一瞬を表しています。表装の金の模様も凝っています。鏑木清方が書いた手紙も展示されていました。
横山大観など5人の「鳥尽」。杉戸に5人の画家が一羽ずつ鳥を描いています。大観のフクロウは可愛らしいくも、堂々と描かれています。
そして、最後に菱田春草「黒き猫」。黒き猫の毛並みはふわふわ。朦朧体を極めた春草ならでは。黄葉は、空気の澄んだ秋らしく、くっきりと描かれています。そして、木肌の様子は、まるで本当の樹木を見ているかのようで、それでいて意匠化されています。斜めに横切る枝、樹木という構図に、黒き猫が画竜点睛として画面の重心に収まってこちらを向いていました。ちょっと腰を屈めると、掛け軸として丁度よい高さで鑑賞できます。
それにしても、永青文庫の現在の建物は旧細川公爵家の家政所(事務所)として昭和初期に建設されたものとのことですが冬は冷えますね。美術品にはいいかもしれませんが、鑑賞者にとっては。。。
*1 生誕百年記念中村岳陵展 図録(平成2年) の河北倫明氏の解説による。