ギメ東洋美術館所蔵浮世絵名品展(前期)(1/3-14)(1/16-26)
L'EXPOSITION DES CHEFS-D'OEUVRE DU MUSE'E GUIMET
2007年1月3日から2月25日
前期 1月3日から14日、1月16日から26日
後期 2月1日から12日、2月14日から25日
太田記念美術館
割引券 http://www.nhk-p.co.jp/tenran/ukiyoe/service200612.html
前回の感想に追記して太字で記述。前期のみ作品は(緑字) 、後期のみ作品は(青字)にしました。
いづつやさんのBLOGで混雑が予想され、さらに190点全てを拝見するには4回も足を運ばないと東京展は見切れないと判り、あわてて5日に出かけた。午後3時過ぎだったが、なんとスリッパが出払っている。こんなことははじめてだけに吃驚。土足でいれていただいた。もう1年以上前から、NHKで今回のギメ美術館展は報道されていたが(記事はこちら)漸くの開催の運びというところで、前宣伝が効きすぎというところだろうか?とはいえ、館内はそれほど混雑でもなくゆっくりと鑑賞できた。
そして前半二回目、23日午前10時25分ぐらい、すでに長蛇の列。太田記念美術館で入場で並んだのは初めて。新日曜美術館の威力は絶大(迷惑)。とはいっても開館から5分ほどで入場できた。龍図、虎図に再度対面するのはあきらめて、版画のみ見て回る。一部展示替のために二度訪れる展覧会。料金的にも、時間的にも面白くはないが、それでも、二度目でも新たな発見のある展覧会だった。もともと発色がいい浮世絵が多数並んでいる、多数の絵師の作品がならんでいる、浮世絵はやはり細部に凝ったところがあり再発見がある、といったところが二度鑑賞しても楽しめる理由でしょうか?
でも、この調子で混雑するとなると先が思いやられますね。
展覧会は新発見の
葛飾北斎 肉筆絹本双幅「龍図」と「虎図」(1849、後者が太田記念美術館蔵)
から始まる。並んで掛けられている。地下1階で放映されていたビデオを先に見ればよかったのだが、それによれば、同じ九十老人卍筆、表装が同一というのが一つのポイント、もうひとつは阿吽で虎と龍が向かい合っていることなど。表装は中回し(紺地雲龍文金襴)、上下(緞子牡丹唐草文)、一文字、風帯までが同じ裂。などが決め手となり双幅の作品と判断されたとのこと。
さらに、
葛飾北斎 猿回し図
葛飾北斎 海老図扇面
歌川広重 隅田川月景
河鍋暁斎 釈迦如来図(2階展示室)
が肉筆画。河鍋暁斎の作品は、ギメが暁斎からプレゼントされたものとのこと。
版画の展示は、ほぼ時代順に多数の絵師をカバーするように構成されている。絵師ごとの説明も丁寧なので楽しめた。
無款(杉村治兵衛)(和田酒盛)
無款(杉村治兵衛)(静法楽の舞)
杉村治兵衛の丹絵という類の版画。幕府の統制で古い話しか題材にとれなかったからでしょうか?闊達な画面が楽しい。
鳥居清倍 (渡辺綱 羅生門)
無款(鳥居清倍)(宇治川先陣 佐々木高綱)
無款(鳥居清倍)(一の谷合戦 熊谷直実)
奥村利信 稲荷祭礼衣笠道中 細版漆絵;赤の色が見事に残っている。
二代鳥居清倍 二世市川海老蔵のういろう売り;外郎とは、建長寺開山の大覚禅師に従って唐からきた外郎というひとが小田原で作った家伝の妙薬「透頂香(とうちんこう)」のことだそうです。「初花隅田川」の粟津六郎の外郎売の場面。周囲は長台詞だそうです。外郎は薬だったのですね。
鳥居清満 初世中村富十郎の比丘尼;
鈴木春信 風俗四季哥仙 竹間鶯; 現在16図確認されている揃いもの。パリの宝石商Henri Vever寄贈。Henri Vever氏は、東博のコレクションを作った人物(記事はこちら)。優品の春信をたくさん有していたようで。二回目のときには、とらさんのBLOGを拝見していて、竹間鶯を目を凝らして確認
鈴木春信 (蒸籠の傍らを歩く遊女)
無款(鈴木春信)(花魁道中)
磯田湖龍斎 近江国萩玉川;源俊頼「あすもこん 野路の玉川 はきこゑて 色なる浪に 月やとりけり」(千載和歌集)、衝立は白居易の漢詩。だそうで。教養が必要です。
磯田湖龍斎 雛形若菜の初模様 竹屋内小式部
雛形若菜の初模様 扇屋内からうた
磯田湖龍斎 雛形若菜の初模様 四つ目屋内歌川
雛形若菜の初模様 松葉屋内松人
雛形若菜の初模様は、ファッション見本というのが良くわかります。「四つ目屋内歌川」の見栄をきったような所作がいいですね。
北尾重政 浮世六玉川第六 紀伊空海
北尾重政 遊女と禿
北尾重政 (野葡萄を食べる兎)
北尾重政は、最近の東博では状態のいい作品の展示が少なく、ぴんと来ていなかったが、今回のは優品。(野葡萄を食べる兎)はモダンで可愛らしい。
歌川豊国 浮画雪見酒宴之図
歌川豊国 浮絵駿河町呉服屋図
遠近法の豊国。
一筆斎文調 新かなや内 なゝまち
一筆斎文調 二世市川雷蔵の牛若丸;牛若丸の見栄を切ったさま。カッコいい。
一筆斎文調 二世市川八百蔵の奴軍助; 黒を背景にした引き締まった画面。所作がいい。
一筆斎文調 二世市川門之助の小姓吉三と初世中村松江の八百屋お七
一筆斎文調は、今回初めて着目しました。役者絵の所作が決まっています。
役者絵と相撲絵が並ぶ
勝川春章 二世市川八百蔵の半七と二世瀬川菊之丞の三勝
勝川春章 西方 真鶴咲右衛門 武蔵野幸内
勝川春章 東方 筆ノ海金右衛門 西方 関ノ戸八郎治
勝川春章 東方 小野川喜三郎;谷風とともに史上初の横綱免許というわりにはあまり強そうな気がしない。
勝川春英 常山五郎吉 熊山庄太夫
勝川春英 和田ヶ原甚四郎 鳴瀧文太夫
勝川春英 陣幕嶋之助
勝川春英 鹿間津滝右衛門 糸ヶ濱長治郎
勝川春潮 (影向松)
勝川春潮 誹風柳多留 美しひうへにも欲をたしなみて
鳥居清長 武蔵棒弁慶 土佐房正順
鳥居清長 睦月恋手取
鳥居清長 美南見十二候 六月
鳥居清長 当世遊里美人合 叉江凉
鳥居清長 当世遊里美人合 (橘妓と若衆)
清長の健康的な美人像というのが良くわかりました。
喜多川歌麿 青楼尓和嘉鹿嶋踊 続 京町二丁目角かなや内 きよみ せきや たこと
喜多川歌麿 (美保松原道中) 2枚続き
喜多川歌麿 ひら野屋;おせよ17歳、少女らしさも漂っています。
喜多川歌麿 娘日時計 午ノ刻;無線空摺の顔の輪郭が良くわかる。状態良。
喜多川歌麿 娘日時計 申ノ刻
喜多川歌麿 美人気量競 兵庫楼 雛琴;きせるを銜える姿が艶っぽい、歌麿らしい作品。
喜多川歌麿 美人気量競 鶏舌楼 雛鶴
喜多川歌麿 風俗浮世八景 閨中ノ夜雨
喜多川歌麿 (浄瑠璃十二段草紙);艶やかな着物、発色もよく優品。
鳥橋斎栄里 三ヶ津草嫁美人合 大坂道頓堀於兼
鳥橋斎栄里 三ヶ之津草嫁美人合 京三条砂場於万
鳥橋斎栄里 三ヶ之津草嫁美人合 江戸両国之於辰
三ヶ津草嫁美人合の三枚もの、よくみれば着物が洒落ています。
鳥橋斎栄里 江戸花京橋名取 (山東京伝);山東京伝がいい表情をしています。
東洲斎写楽 二世坂東三津五郎の石井源蔵
東洲斎写楽 二世瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木
東洲斎写楽 嵐龍蔵の金貨石部金吉
東洲斎写楽 三世坂東彦三郎の鷺坂左内
東洲斎写楽 初世市川男女蔵の富田兵太郎と三世瀬川菊之丞の傾城かつらぎ;写楽の第2期の作品。役者を二人描く
東洲斎写楽 二世瀬川雄次郎と松本米三郎
「二世坂東三津五郎の石井源蔵」「二世瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木」「三世坂東彦三郎の鷺坂左内」の三点を見てて、髪の(生え際の)表現が細かな技術にリアリティを感じました。
歌川豊国 (役者舞台之姿絵 やまとや)
歌川豊国 役者舞台之姿絵 やまとや
歌川豊国 風流七小町略姿絵 雨乞こまち;足をすっと出す姿が艶っぽい。吹き墨の手法。
葛飾北斎 千絵の海 総州銚子
葛飾北斎 千絵の海 絹川はちふせ
葛飾北斎 百人一首うはか恵と起 源宗于朝臣;「やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思えば 」
葛飾北斎 百人一首宇波か縁説 藤原道信朝臣:「明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな」
葛飾北斎 百人一首乳母か絵とき 参議篁:「わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海女の釣船」
昨年の北斎展では疲れてしまって、ゆっくりと楽しめませんでしたが、今回は3首だけなので、歌と絵を比べて楽しみました。参議篁の海女は一寸おぼれ気味で怖いです。
無款(柳々居辰斎)大橋
無款(柳々居辰斎)両国
無款(柳々居辰斎)真崎
(白梅に蟹)色紙版摺物;とてもめでたげ。細かい梅と蟹の表現。第2回目では一番魅力的だった作品。さすが摺物。
岳亭五岳 (水辺に三匹の蟹)
岳亭五岳 (三味線を持つ美人と猫)
柳々居辰斎の風景画と岳亭五岳は、はじめての作家。
歌川国貞 (虎)
歌川国貞 花鳥風月 風;風を表現するとは。
歌川貞秀 ほふじろ ざくろ
歌川国芳 忠臣蔵十一段目夜討之図;2回目によく見ました。面白いです。壁を超える人物とか。
歌川国芳 佃島
歌川国芳 大森
歌川国芳 東都富士見三十六景 佃沖晴天の不二
歌川広重 近江八景之内 唐崎夜雨
歌川広重 京都名所之内 祇園社雪中;2回目によく見ました。雪の表現が軟らかく風情があります。
歌川広重 (雪中椿に雀)
歌川広重 (雪中芦に鴨)
歌川広重(花菖蒲に白鷺)
歌川広重(牡丹)
播州名所 高砂ノ浦真景
歌川広重 六花撰之内 きくの花
版本
古代錦絵
石川豊信 絵本東の森
岳亭五岳 天保山勝景一覧
L'EXPOSITION DES CHEFS-D'OEUVRE DU MUSE'E GUIMET
2007年1月3日から2月25日
前期 1月3日から14日、1月16日から26日
後期 2月1日から12日、2月14日から25日
太田記念美術館
割引券 http://www.nhk-p.co.jp/tenran/ukiyoe/service200612.html
前回の感想に追記して太字で記述。前期のみ作品は(緑字) 、後期のみ作品は(青字)にしました。
いづつやさんのBLOGで混雑が予想され、さらに190点全てを拝見するには4回も足を運ばないと東京展は見切れないと判り、あわてて5日に出かけた。午後3時過ぎだったが、なんとスリッパが出払っている。こんなことははじめてだけに吃驚。土足でいれていただいた。もう1年以上前から、NHKで今回のギメ美術館展は報道されていたが(記事はこちら)漸くの開催の運びというところで、前宣伝が効きすぎというところだろうか?とはいえ、館内はそれほど混雑でもなくゆっくりと鑑賞できた。
そして前半二回目、23日午前10時25分ぐらい、すでに長蛇の列。太田記念美術館で入場で並んだのは初めて。新日曜美術館の威力は絶大(迷惑)。とはいっても開館から5分ほどで入場できた。龍図、虎図に再度対面するのはあきらめて、版画のみ見て回る。一部展示替のために二度訪れる展覧会。料金的にも、時間的にも面白くはないが、それでも、二度目でも新たな発見のある展覧会だった。もともと発色がいい浮世絵が多数並んでいる、多数の絵師の作品がならんでいる、浮世絵はやはり細部に凝ったところがあり再発見がある、といったところが二度鑑賞しても楽しめる理由でしょうか?
でも、この調子で混雑するとなると先が思いやられますね。
展覧会は新発見の
から始まる。並んで掛けられている。地下1階で放映されていたビデオを先に見ればよかったのだが、それによれば、同じ九十老人卍筆、表装が同一というのが一つのポイント、もうひとつは阿吽で虎と龍が向かい合っていることなど。表装は中回し(紺地雲龍文金襴)、上下(緞子牡丹唐草文)、一文字、風帯までが同じ裂。などが決め手となり双幅の作品と判断されたとのこと。
さらに、
が肉筆画。河鍋暁斎の作品は、ギメが暁斎からプレゼントされたものとのこと。
版画の展示は、ほぼ時代順に多数の絵師をカバーするように構成されている。絵師ごとの説明も丁寧なので楽しめた。
杉村治兵衛の丹絵という類の版画。幕府の統制で古い話しか題材にとれなかったからでしょうか?闊達な画面が楽しい。
雛形若菜の初模様は、ファッション見本というのが良くわかります。「四つ目屋内歌川」の見栄をきったような所作がいいですね。
北尾重政は、最近の東博では状態のいい作品の展示が少なく、ぴんと来ていなかったが、今回のは優品。(野葡萄を食べる兎)はモダンで可愛らしい。
遠近法の豊国。
一筆斎文調は、今回初めて着目しました。役者絵の所作が決まっています。
役者絵と相撲絵が並ぶ
清長の健康的な美人像というのが良くわかりました。
三ヶ津草嫁美人合の三枚もの、よくみれば着物が洒落ています。
「二世坂東三津五郎の石井源蔵」「二世瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木」「三世坂東彦三郎の鷺坂左内」の三点を見てて、髪の(生え際の)表現が細かな技術にリアリティを感じました。
昨年の北斎展では疲れてしまって、ゆっくりと楽しめませんでしたが、今回は3首だけなので、歌と絵を比べて楽しみました。参議篁の海女は一寸おぼれ気味で怖いです。
柳々居辰斎の風景画と岳亭五岳は、はじめての作家。
版本