都路華香展(前期)
2007年1月19日から3月4日
前期:2007年1月19日~2月12日
後期:2月14日~3月4日
東京国立近代美術館
ちらしの《達磨図》(1917年頃、京都国立近代美術館蔵)。この絵は好みではないので、なかなかそそられず、殆どパスのつもりでいた。ところがjchzさんのBLOGを見ていて一寸気がかわってきた。京都画壇を代表する作家でありながら、「今や知る人ぞ知る存在」だという。
そのつもりで、東京国立近代美術館のHPを見てみれば、都路華香(つじ・かこう、1871-1931)は、竹内栖鳳、菊池芳文、谷口香嶠とともに、「幸野楳嶺門下の四天王」と並び称された日本画家。門下からは冨田溪仙らを輩出。1932年の遺作展以来の本格的な回顧展。京都四条派の流れをくむ。ここまで言われててしまうと見ないわけにはいかない。
よく見れば、前期と後期でかなり展示替えがある。ということで慌てて出かけてきた。
2 秋霽 1895 絹本着色 軸装;橋本雅邦を慕って描いたという。手足や関節には漢画系統の描き方がなされている。確かに。
3 大塔宮 1899 絹本着色 軸装 十念寺; 後醍醐天皇の第三皇子大塔宮護良親王は土牢に幽閉される図。ひげの柔らかい線。高貴な衣装が印象的。
18 吉野の桜 1903 絹本着色 軸装 218.5x174.0 島屋史料館; 高島屋の企画した染織作品の下絵として制作されたもの。竹内栖鳳の《ベニスの月》、山本春挙《ロッキー山の雪》とあわせて三点組になる下絵の一点。「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」で見た片割れ。となる。わお。丹念に描かれて霞のような吉野の桜。
33 松の月 1911 紙本墨画 軸装;題がなければ、満月を見落としそう。淡い墨色で満月の明るさをあらわす。晴れた日の樹木は、日高理恵子氏の作品(記録はこちら)の乾いた線とはちがった、朧月夜のような趣の湿った線。
34 緑波 c. 1911 絹本金地着色 屏風(四曲一隻) Collection of Griffith and Patricia Way
35 波千鳥 c. 1911 紙本墨画淡彩 屏風(六曲一双) Collection of Griffith and Patricia Way
里帰り作品に二点。前者は緑のリズミカルなタッチ、後者は、墨で描かれたリズミカルな波模様の線が美しい。
36 良夜 1912 紙本墨画 軸装 178.3x77.7 京都国立近代美術館
リズミカルな波、モダンに描かれた眼鏡橋、空の筋目描、中州の墨を流したような表現など、多様な水墨技法を駆使し、それでいながら、明るい画面に仕上がっている。
51 埴輪 1916 紙本着色 二曲一双 京都国立近代美術館;埴輪を制作する翁と娘。素晴らしい想像力に感服。
61 春雪図 c. 1918 絹本着色 軸装 113.8x33.9
63 雪中水禽図 c. 1918 絹本着色 軸装 124.5x41.0 Collection of Griffith and Patricia Way
装飾的に水禽を描く。前者の水の深緑、後者の雪の表現が秀逸。
65 好雨帰帆図 c. 1919 紙本墨画 軸装 183.0x93.6
66 萬年台の夕 1920 紙本着色 額装 対 168.1x90.5 京都市美術館
67 東莱里の朝 1920 紙本着色 額装 対 168.1x90.5 京都市美術館
79 十牛図 c. 1927 紙本着色 軸装(十幅) (各)46.3x53.8 株式会社ボークス
今回の最高傑作。河合忠次郎氏から霞中庵竹内栖鳳記念館の所蔵を経て、現在、ボークス社所蔵。
前期は、前期は6図。尋牛図、見跡図、見牛図、得牛図、牧牛図、騎牛帰家図。
鮮やかな秋の山水図の尋牛図、墨画の見跡図、橙色の背景に切り絵のように描かれた見牛図、青を背景に月夜の得牛図、緑を基調とした牧牛図、秋の収穫の頃を描いた騎牛帰家図。美しい色合いの六図にため息。見牛図については、図録で今井淳氏が、アッシジのジョットの壁画《聖フランチェスコ伝 小鳥への説法》との関連の可能性を指摘している。
89 黙雷禅師肖像 1931 紙本着色 軸装 239.0x101.6 京都・霊洞院;絶筆。禅師への恩を絶筆として描いた。図録で話を読んで、涙がでてきた。
日本画が好きな方にはMUSTの展覧会です。
2007年1月19日から3月4日
前期:2007年1月19日~2月12日
後期:2月14日~3月4日
東京国立近代美術館
ちらしの《達磨図》(1917年頃、京都国立近代美術館蔵)。この絵は好みではないので、なかなかそそられず、殆どパスのつもりでいた。ところがjchzさんのBLOGを見ていて一寸気がかわってきた。京都画壇を代表する作家でありながら、「今や知る人ぞ知る存在」だという。
そのつもりで、東京国立近代美術館のHPを見てみれば、都路華香(つじ・かこう、1871-1931)は、竹内栖鳳、菊池芳文、谷口香嶠とともに、「幸野楳嶺門下の四天王」と並び称された日本画家。門下からは冨田溪仙らを輩出。1932年の遺作展以来の本格的な回顧展。京都四条派の流れをくむ。ここまで言われててしまうと見ないわけにはいかない。
よく見れば、前期と後期でかなり展示替えがある。ということで慌てて出かけてきた。
里帰り作品に二点。前者は緑のリズミカルなタッチ、後者は、墨で描かれたリズミカルな波模様の線が美しい。
リズミカルな波、モダンに描かれた眼鏡橋、空の筋目描、中州の墨を流したような表現など、多様な水墨技法を駆使し、それでいながら、明るい画面に仕上がっている。
装飾的に水禽を描く。前者の水の深緑、後者の雪の表現が秀逸。
今回の最高傑作。河合忠次郎氏から霞中庵竹内栖鳳記念館の所蔵を経て、現在、ボークス社所蔵。
前期は、前期は6図。尋牛図、見跡図、見牛図、得牛図、牧牛図、騎牛帰家図。
鮮やかな秋の山水図の尋牛図、墨画の見跡図、橙色の背景に切り絵のように描かれた見牛図、青を背景に月夜の得牛図、緑を基調とした牧牛図、秋の収穫の頃を描いた騎牛帰家図。美しい色合いの六図にため息。見牛図については、図録で今井淳氏が、アッシジのジョットの壁画《聖フランチェスコ伝 小鳥への説法》との関連の可能性を指摘している。
日本画が好きな方にはMUSTの展覧会です。