徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

都路華香展(前期)  東京国立近代美術館

2007-01-28 | 絵画
都路華香展(前期)
2007年1月19日から3月4日
前期:2007年1月19日~2月12日
後期:2月14日~3月4日
東京国立近代美術館

ちらしの《達磨図》(1917年頃、京都国立近代美術館蔵)。この絵は好みではないので、なかなかそそられず、殆どパスのつもりでいた。ところがjchzさんのBLOGを見ていて一寸気がかわってきた。京都画壇を代表する作家でありながら、「今や知る人ぞ知る存在」だという。

そのつもりで、東京国立近代美術館のHPを見てみれば、都路華香(つじ・かこう、1871-1931)は、竹内栖鳳、菊池芳文、谷口香嶠とともに、「幸野楳嶺門下の四天王」と並び称された日本画家。門下からは冨田溪仙らを輩出。1932年の遺作展以来の本格的な回顧展。京都四条派の流れをくむ。ここまで言われててしまうと見ないわけにはいかない。

よく見れば、前期と後期でかなり展示替えがある。ということで慌てて出かけてきた。

  • 2 秋霽 1895 絹本着色 軸装;橋本雅邦を慕って描いたという。手足や関節には漢画系統の描き方がなされている。確かに。
  • 3 大塔宮 1899 絹本着色 軸装 十念寺; 後醍醐天皇の第三皇子大塔宮護良親王は土牢に幽閉される図。ひげの柔らかい線。高貴な衣装が印象的。

  • 18 吉野の桜 1903 絹本着色 軸装 218.5x174.0 島屋史料館; 高島屋の企画した染織作品の下絵として制作されたもの。竹内栖鳳の《ベニスの月》、山本春挙《ロッキー山の雪》とあわせて三点組になる下絵の一点。「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」で見た片割れ。となる。わお。丹念に描かれて霞のような吉野の桜。

  • 33 松の月 1911 紙本墨画 軸装;題がなければ、満月を見落としそう。淡い墨色で満月の明るさをあらわす。晴れた日の樹木は、日高理恵子氏の作品(記録はこちら)の乾いた線とはちがった、朧月夜のような趣の湿った線。

  • 34 緑波 c. 1911 絹本金地着色 屏風(四曲一隻) Collection of Griffith and Patricia Way
  • 35 波千鳥 c. 1911 紙本墨画淡彩 屏風(六曲一双) Collection of Griffith and Patricia Way
    里帰り作品に二点。前者は緑のリズミカルなタッチ、後者は、墨で描かれたリズミカルな波模様の線が美しい。
  • 36 良夜 1912 紙本墨画 軸装 178.3x77.7 京都国立近代美術館
    リズミカルな波、モダンに描かれた眼鏡橋、空の筋目描、中州の墨を流したような表現など、多様な水墨技法を駆使し、それでいながら、明るい画面に仕上がっている。

  • 51 埴輪 1916 紙本着色 二曲一双 京都国立近代美術館;埴輪を制作する翁と娘。素晴らしい想像力に感服。

  • 61 春雪図 c. 1918 絹本着色 軸装 113.8x33.9
  • 63 雪中水禽図 c. 1918 絹本着色 軸装 124.5x41.0 Collection of Griffith and Patricia Way
    装飾的に水禽を描く。前者の水の深緑、後者の雪の表現が秀逸。

  • 65 好雨帰帆図 c. 1919 紙本墨画 軸装 183.0x93.6
  • 66 萬年台の夕 1920 紙本着色 額装 対 168.1x90.5 京都市美術館
  • 67 東莱里の朝 1920 紙本着色 額装 対 168.1x90.5 京都市美術館

  • 79 十牛図 c. 1927 紙本着色 軸装(十幅) (各)46.3x53.8 株式会社ボークス
    今回の最高傑作。河合忠次郎氏から霞中庵竹内栖鳳記念館の所蔵を経て、現在、ボークス社所蔵。
    前期は、前期は6図。尋牛図、見跡図、見牛図、得牛図、牧牛図、騎牛帰家図。
    鮮やかな秋の山水図の尋牛図、墨画の見跡図、橙色の背景に切り絵のように描かれた見牛図、青を背景に月夜の得牛図、緑を基調とした牧牛図、秋の収穫の頃を描いた騎牛帰家図。美しい色合いの六図にため息。見牛図については、図録で今井淳氏が、アッシジのジョットの壁画《聖フランチェスコ伝 小鳥への説法》との関連の可能性を指摘している。

  • 89 黙雷禅師肖像 1931 紙本着色 軸装 239.0x101.6 京都・霊洞院;絶筆。禅師への恩を絶筆として描いた。図録で話を読んで、涙がでてきた。

    日本画が好きな方にはMUSTの展覧会です。



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