赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

苦境に立つバイデン政権  topics(633)

2022-11-03 00:00:00 | 政治見解



topics(633): 苦境に立つバイデン政権


11月8日はアメリカの中間選挙の日です。大方の予想ではバイデン政権の民主党の敗北か、と言われており、今後はバイデン政権によるエネルギー政策とか移民政策に変更が出るものと予測されています。

ただし、対中政策は変わりません。これは安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想をアメリカが対中政策の基本戦略に取り入れて、QUADとして結実させたからです。この対中戦略は中国がつぶれるまで変わることはありません。


エネルギー政策の失敗が過度のインフレに

バイデン政権が不人気なのはエネルギー政策に失敗し、ものすごいインフレを国内に引き起こしているからです。先日も書きましたが、うちの長女が米国在住ですが「年収1000万円でも低所得者」だというのです。今から20年くらい前までは、年収1000万円は中の上あたりだったのですが・・・。

10月31日付のウォール・ストリート・ジャーナル日本版の社説にはこんな皮肉を載せています。

――石油・ガス会社が先週発表した好調な決算を巡り、ジョー・バイデン大統領が28日に怒りをあらわにしたことを考えてみてほしい。バイデン氏は資金集めの集会で、大手6社が「四半期に700億ドル(約10兆3700億円)の利益を上げた」と述べた。これらの「過剰な利益は、ガソリン価格の引き下げにつながるのではなく、これらの企業の株主や幹部に還元される」と指摘した。米国における石油投資を制限するために力の及ぶ限りあらゆる措置を取ってきた同大統領は、自身がうまく達成したことに対して激怒している。――


カーボンニュートラルの推進が裏目に出た

アメリカのインフレ(イギリスも含む)は、バイデン政権やイギリスの前の前のジョンソン政権が、地球温暖化防止のために二酸化炭素排出量削減するのが至上の政策目標、これが最優先の政策課題と言い出して、自分たちで石油とか天然ガスとか石炭の値段を上げたことがそもそもの発端です。

そして、石炭石油だけじゃなくて天然ガスも全廃する、二酸化炭素排出量をカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)でゼロにするんだ、と叫んで、ロシアからの天然ガス輸送パイプライン、ノルドストリーム2の停止をドイツに迫り、ロシアのプーチン大統領を激怒させました【※1】。これが、ウクライナ侵略を決断させたかもしれません。

【※1】バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」。既に工事は完了し、稼働に向けてドイツのゴーサインを待つのみだったが、ロシアがウクライナ侵略を始める2日前の2月22 日、ドイツはロシア側が何十億ドルもの工費をつぎ込んだこの事業に待ったをかけた。

ノルドストリーム2が稼働すれば、ヨーロッパ、特にドイツはますますロシア産ガスにエネルギー供給を依存するようになると以前から懸念されていた。プーチンは今まで以上に強力な切り札を手に入れ、エネルギーに飢えたヨーロッパを脅すようになる、と言われていた。ロシアにとっては「晴天の霹靂」となった。


ウクライナ侵略戦争がはじまってからというもの、石油や天然ガスの値段が上がり、石炭の値段まで上がってしまい、いまはて石炭大復活、ヨーロッパでは、薪の値段まで上がってきています。これがエネルギー価格高騰の理由で、物価高騰の真因です。

したがって、化石燃料の生産拡大をすればエネルギー価格の高騰は押さえられます。とくに、化石燃料の宝庫のアメリカが、国内で生産すれば簡単な話です。トランプ政権のように、石炭も掘ろう、石油も、シェールガスもシェールオイルも、どんどん掘ろうじゃないかという風にやっていれば、アメリカもエネルギー輸出国のままでいれたわけです。

それをバイデン政権は、「環境問題だ、地球温暖化だ、二酸化炭素を減らせ」というので、国内で物すごい規制を厳しくして掘れなくした上に、値上げをしたわけです。この背景に、米民主党内に存在する極左の環境主義者が離反していくのを恐れたため、ということが考えられます。

そして、国内には手を付けず、石油輸出国機構(OPEC)の盟主である親米国家のサウジアラビアに頼みに行って、断られるという事態になりました【※2】。その上、独裁者国家のベネズエラにまで、経済制裁を解くから、「石油を増産してくれ」と頼んだという話もあるようです。

【※2】アメリカとサウジアラビアは長年の友好関係にあったが、バイデン政権はサウジアラビアの実質支配者であるムハンマド皇太子が反体制ジャーナリスト・カショギ氏殺害に関与していると非難した経緯があり、急激に関係性が冷え切った。

それが今日のエネルギー価格の高騰の理由であり、エネルギー価格はあらゆる価格の基礎に浸透してますから、これは当然インフレが起きてくる。それからコロナ対策で金のばらまきをやったら、これももうインフレになるしかありません。だから、ここで金利を上げていっても、なかなかインフレはおさまらないのです。

これがバイデン政権を窮地に立たせる原因となっており、中間選挙の敗北は確定的のようです。




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