赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

財務省解体論(第五回)——国民の強い支持が官僚を黙らせる

2024-12-01 00:00:00 | 政治見解
財務省解体論(第五回)——国民の強い支持が官僚を黙らせる




話は続きます。講演者の特別の許可を頂いて掲載しています。(なお、本講演録は岸田首相在任期間に収録されたものです。)


官僚社会主義の日本

政治主導が夢のまた夢だということはどういうことかというと、我々が付託したわけでも選んだわけでもない人たちが、世の中のすべてを決めていくという、あまり民主主義とは言えないような官僚主義の社会が続くということになってしまうわけですね。

岸田さんは日銀総裁人事でも、元の緊縮財政派は総裁に選びませんでした。この辺も財務省としては面白くなくて、財務省から総裁を出すべきだと思っていたので はないかと思われます。一方で岸田さんは、その意味では中途半端で。安倍さんが 安倍内閣の時にやっていた人事と違う人事を、やはりいろいろしました。

例えば、安倍さんは海上保安庁長官を国土交通省の官僚の天下りポストではなく、海上保安官の生え抜きから初めて選びました。これがまた岸田政権になったら元の官僚に戻 ました。JBICの社長も、安倍さんは民間人から採っていたのが、岸田内閣では 財務官僚がJBICの社長になりました。そういうふうに中途半端ではあるのですが、逆らってきた岸田さんが面白くないというのが財務省の言い分なのかもしれません。
しかし今後、岸田さんがいつまでやるかも分かりませんけれども、やはり自民党 総裁で総理大臣であるということは、本気でやろうと思えば相当なことができる立場でもあります。安倍さんが集団的自衛権の容認というものを2次政権でやったの ですが、1次政権でもやろうと思って有識者会議を作って働きかけた時に、内閣法 制局が幹部全員辞めると言って抵抗したんですね。

その時の安倍さんはI年で辞め たこともあり、それ以上のことはできなかったわけですが、そんなことが起きたら 内閣不信任みたいな話であって、内閣はつぶれてしまうということですね。

だから安倍さんは第2次政権を発足させる時には、発足させる前から親しい我々に言っていたのは、今まで前例のない法制局長官を外務官僚から持って来るということを言っていましたが、実際そのとおりにしたんですね。

それまで内閣法制局というのは総務省とか、いくつか4つの省庁の縄張りだったわけです。外務省はそこに入っていなかったのを、持って来たわけですね。そして官僚を言うことを聞かなかったら本当にトップの首をすげ替えるとまでして脅して、それで結局、集団的自衛権の容認までいった。それまで内閣法制局はそれを認めていなかったわけですね。

そのように、政治家と官僚というのは、一見政治家が上のように見えて緊張関係があって、時に官僚のほうが強い状況がこれまでもこれからもまだ続くのだろうとは思っています。しかし、この財務省もさっき焦っていると言いましたけれども、 国民にこれだけ正体がばれて、いろいろ批判されるようになると、やはり徐々に 弱っていくと思います。優秀な学生が官僚になりたがらなくなっているとも言います。

それはそうで、その点については私も官僚に同情します。やたら労働時間は長い割に給料は民間より安いということを、よく言われており、彼らはそれを取り返そうとして天下り先で高収入を得ようという、そういう姿になっています。日本社会はずっとこれでやってきたとはいえ、いろいろいびつな部分がまだまだたくさんあるなということを感じています。


岸田首相の失敗

だから岸田さんは、いつまでやるかはともかく、安倍さんをいろいろと見習って 人事でそれは岸田さんが総理になる前に、総理になって何をやりたいかと聞かれて 「人事」と言ったぐらいですから、官僚人事をもっと大胆にやればいいんじゃないかなと、そのように思います。

やはり官僚と政治家というのは、今言ったような緊張関係はあるけれども、同時に「この人のためなら」という信頼関係を築けば、相当それは一体化します。第1次安倍政権の時に集った官僚たちが、第2次安倍政権で も結集した。これはすごいことだと思います。つまり、安倍さんのためなら出世も 何も要らないと。

例えば、有名な今井秘書官なんかは、経産省にいたら当然次官になれたのでしょうが、それを蹴ってまで安倍さんの一秘書官に徹した。首相補佐官にもなりました けれども、徹したわけです。つまり、そういう人間力というのは誰しも持っている わけではないのですが、総理総裁を目指そうという人は、そういうことも含めて目 指すべきだと思います。

今までの歴代総理を見てくると、やはり人望がない人、周囲に人が集まらないような人が総理になっても、その政権は絶対にうまくいきません。

これは官僚にも言えることで、やはり官僚の世界でもある程度偉くなる人というのは、それなりに人間力がある人が多いと思います。普通に話ができて普通に人当たりが良くてという、当たり前のことなんですけれども、それがなかなかできない人が結構いるというのが国会であり、霞ケ関であるという部分もついでだから指摘したいと思います。

岸田さんにはこの際言っておくと、今内閣支持率が落ちてしまいまして、今後も上がる要素というのはほとんどないんですね。それどころか、また不祥事が発覚したり、スキャンダルが出たりすると、またまたズルズルといく可能性も高い。

これは、当面は耐え忍ぶしかないわけです。そして、実績を上げる。実績とは何 か。岸田さん自身が憲法改正と安定的な皇位継承をやると言ったのだから、それは もう残り何カ月か分かりませんが、死に物狂いでやると。

例えば、衆参の憲法審査会だったら足を引っ張るばかりの立憲民主党なんかを切り離してでもやると。そのために私は先日新聞に書いたんすけれども、憲法改正に前向きな維新と国民民主、それと連立を組む公明党の人たちを自民党総裁として 自民党本部に呼んで、テレビカメラを入れた場で頭を深々と下げて、来年の通常国会で発議までいきたいと。それだけはやらせてくれと頭を下げたら、それはみんな応じざるを得ませんよ。

いかに公明党の山口那津男さんが頑迷であろうと、そこまで一国の総理にされてむげにすることは、なかなか難しいと思います。だから岸田さんは今、非常に厳しい状態になっているのは、本当のところは何がやりたいかが分からないと思われていることと、何を言っても今は信用されないよ うな、「どうせやらないんでしょ」みたいな状況になっている。

それを覆すにはそれぐらいのことはやらないといけない。仮にそれをやって憲法改正の発議までいけば、当然9月の自民党総裁選でも岸田さんの続投という話になるし、そして国民投票の結果、憲法改正がなれば、自民党の歴史上一番大きなことをした総理大臣と言 われるかもしれない。だから岸田さんは今、ものすごい危機にあると言いつつ、一 方で大きなチャンスにも恵まれていると私は思っております。

だから繰り返しますが、岸田さんには財務省だろうが外務省だろうが、どこでも 何を言っても俺の言うことを聞けということから始めなければならない。実際、例えばこんなことがありました。これは外務省ですけれども、佐渡金山を世界の記憶 遺産に登録しようか、しまいかというのを、岸田さんは相当悩んだんですね。

しか しこれは安倍さんに言わせると、「地元の佐渡市長が負けて選ばれなくてもいいから、とにかく推薦してくださいと言っているのに、推薦しない選択肢はないんだ。官僚はできない言い訳を十も二十も考えてくる。それに耳を傾けてばかりいてはだめだ。そうではなくて、これを何とかしろと言えば、逆に官僚はそれができる方法 を考えてくる」というふうなことを、私に言っていました。

岸田さんに対しても尻を叩く感じで「やれ」と言って、登録、推薦しようとしたのですが、文化庁の書類が不備で結局1年延びてしまうという、馬鹿げた結末を迎えました。

そんなふうに、できない言い訳をするというのが、それはもう別に霞ケ関だけでなくても、一般的に市役所の役人なんかはそうです。そういう人たちなんですか ら、それはもう無理やり「やれ」と言うしかないのだと、私は思っています。財務 省のハシゴ外し、だからそんなものに負けないでやるしかない。


国民の強い支持が官僚を黙らせる

そのためにはもっと国民を味方につけないと勝てない。国民を味方につけるのは、小規模減税とか対面キッチン減税とか、意味の分からないようなものじゃなくて、ちゃんと大きな結果。憲法改正であり、皇位継承資格者の確保であり、そしてその先にはもっともっ とたくさんのことが待ち構えているでしょうが、今の岸田さんはあちこちに手を出 しては全部小規模に終わったような、そんなイメージがありますから、それを払拭しなければならないと思っています。

そして、国民の支持が高くなったら、官僚もおいそれと逆らえないという状況がそこで生まれる。長期政権化が見えてきたら、 しばらくは大人しくしておこうとみんな思うわけですね。

いずれにしても、日本のためには政権があまりしょっちゅう替わると良くないの です。これは株価も下がるし、それ以上に外交的に日本が諸外国に相手にされなくなるわけですね。

例えばドイツの前のメルケル首相は、中国に7〜8回行っている間 に日本には1回も来ないで、すぐ隣なのに。

安倍さんの時代に8年ぶりぐらいに来たことがあります。そこで安倍さんが「なんで中国に来てこっちには来ないの」と聞 いたら、メルケルは「だって日本の首相は1年ごとに替わるから、会っても意味がないと思って」と答えました。

つまり、話し合う対象にすらなっていない。そういうことになりかねませんので、首相というのはやはり4年とか、そういう期間は最 低やってもらわないと本来はいけない。もちろん、鳩山や菅直人が4年もやったら 日本は今ごろないですけど、そういう例外ばかり考えても意味がないので、ちゃん とやって欲しいと、私はそう思っています。どうもありがとうございました。 

(了)

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