赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

アサド政権後のシリア情勢

2024-12-19 00:00:00 | 政治見解
アサド政権後のシリア情勢



シリアでは、12月8日、アサド政権が崩壊し、反政府勢力を主導した「シリア解放機構」のもとで暫定政権が発足しました。

その直後に、アサド政権の後ろ盾となってきたロシアが暫定政権側に接触し、ロシア軍の駐留の継続に期待を示したと伝えられています。一方、反政府勢力を支援してきた隣国トルコの高官も首都ダマスカスを訪問したと伝えられていて、シリアへの関与をめぐる各国の動きが活発になっています。

これらの背景を踏まえ、シリアの最新情勢について、国際政治学者の解説をお願いしました。


アサド政権崩壊後の全体像

アサド政権が予想外にもあっさりと崩壊するという事態が発生しました。特に注目すべきは、シャーム解放機構(HTS)の動向です。この組織はジャウラニという人物が率いており、首都を陥落させたと報じられています。しかし、ここからがさらに深刻な問題となります。(後半に詳しい解説あり)


このシャーム解放機構を支援しているのはトルコであり、さらにその背後には中東の混乱を意図的に引き起こしてきた英国守旧派の存在が指摘されています。これまでにも、イスラム原理主義を利用して中東を混乱させる戦略が展開されてきました。例えば、イスラム国やアルカイダといった組織の台頭を陰で支えた勢力が同じく関与していると見られます。今回も同様の構図が浮かび上がってきています。

表面的にはトルコのエルドアン政権がシャーム解放機構(HTS)を支援しているとされていますが、その背後には英国守旧派がいることはほぼ間違いありません。こうした動きに対して、アサド政権を支えてきたロシアとイランが弱体化しました。

ロシアはウクライナ戦争に注力しており、結果としてアサド政権への支援が手薄になっています。一方、イランはイスラエルとの衝突が激化しており、影響力が著しく低下しています。特に、イランの代理勢力であるヒズボラは、イスラエルの攻撃を受けてほぼ壊滅状態に陥っています。

ここで注目すべきは、トランプ氏の立場です。彼は一貫して「アメリカはこの問題に絶対に関与すべきではない」と主張しています。アサド政権は、アメリカにとって友好国でも同盟国でもなく、むしろ敵対的な立場にある国です。一方で、イスラム過激派もまたアメリカの敵です。したがって、このような状況にアメリカが関与することは無益であるとトランプ氏は明言しています。この姿勢は非常に理にかなったものと言えるでしょう。

さらにトランプ氏は、「チャイナが仲介に乗り出す可能性がある」と示唆しています。実際、イランとサウジアラビアの国交正常化においても、中国が仲介役を果たしました。これにより、中国共産党が国際的に良い役回りを担った形になっています。本来であれば、アメリカが果たすべき役割とも言えますが、現在の状況ではアメリカが手を出す余地はほとんどありません。

ロシアはアサド政権を支援しているため、この問題において仲介者として機能することは期待できません。結果的に、中国が大国として仲介の場に立つ可能性が高いでしょう。トランプ氏の立場としては、「中国がやりたければやればよい」という考え方に基づいているようです。このような中国の動きが一定の国際的影響力を持つことになるかもしれませんが、アメリカとしてはあえて関与しない方針を取るべきだというのがトランプ氏の主張です。


シャーム解放機構(HTS)のジャウラニ

シャーム解放機構のジャウラニさんについて話します。今のところ言われているのは、この人たちは元々スンニ派の宗教原理主義で、アルカイダの流れを汲んでいましたが、そこから分かれた存在だということです。


ただ、今回に関しては、シリアの中にもシーア派の人たちがいるわけです。そして、アサドファミリーというのは、アラウィー派というシーア派の中の少数派に属しています。これまでは少数派でしたが、アサド政権はシーア派の人たちに対しても弾圧を行わず、さらに一部のキリスト教徒に対してもクリスマスを祝うことを許しているようです。「弾圧はしない」という姿勢を示していて、今のところはソフトフェイスを装っているというわけです。つまり、自分たちのやり方を全て押し付けるわけではなく、あくまで目的はアサド政権の打倒に絞っているということですね。

一方で、スンニ派の宗教原理主義を押し付けないと言っていますが、これがどこまで続くのか、それとも本当にそうするのかは分かりません。そして、ロシアとしてはウクライナ戦争に忙殺され、イランとしてはイスラエルとの事実上の戦争に直面しています。その結果、ヒズボラも自分たちが支援してきた勢力がほとんど壊滅してしまった。ハマスも同様です。つまり、イランもロシアも弱体化している状況なんですね。そのため、ロシアとイランが支えていたアサド政権が崩壊してしまったというわけです。

これはある意味、ロシアにとってウクライナ戦争をやめるタイミングとも言えますよね。これまで大事にしてきた中東の非常に重要な拠点であるシリアを失うことになったわけですから。ロシアも、まだ余力があるとは言っていますが、かなり厳しい戦争を強いられているのは確かです。

特にアサド政権を強力に支援していたのはロシアの空軍でした。地上戦で制空権を確保し、上から爆弾を落とす、射撃するという形で、陸上の戦いを非常に有利に進めることができていました。しかし、ウクライナ戦争に注力しているため、ロシアの空軍の力は大幅に弱まっています。これが、シリアまで手が回らなくなった大きな要因だと言われています。

その結果、シリアでの力が弱まり、今回のような状況に至ったわけです。では、誰が資金を出しているのかというと、戦争屋にはお金が流れていて、兵器を供給しているのはどこか。例えばトルコのエルドアンだという話もあります。今のところ出ている情報ではそうですが、私としては裏で動いているのは英国守旧派だと思います。


イスラム原理主義の政権はイスラエルに脅威

英国の保守派は、これまでイスラム原理主義派を利用して中東をかく乱することを繰り返してきました。今回も中東の安定を崩し、混乱を招こうとしているのです。アサド政権は曲がりなりにも安定政権でしたが、それを混乱させ、イスラム原理主義的な勢力を再び台頭させる狙いがあるわけです。

ジャウラニがどうなるかは分かりませんが、イスラム原理主義の政権ができれば、イスラエルにとっても大きな脅威になります。そうなると、イスラエルもシリアと戦わざるを得なくなります。せっかくこれまで絶対的に有利に戦争を進めてきたのに、逆に巻き込まれる可能性があるわけです。

さらに、もしバイデン政権が慌ててシリア政権を叩こうとすれば、アメリカもイスラエルも巻き込まれて、中東全体が大戦争に発展する恐れがあります。そして、まさにそれを狙っているのが英国守旧派でしょう。今回、手先として動いているのがトルコのエルドアンということになります。

だから、ここでイランとロシアがこの挑発に乗らないことが非常に重要だと思います。もし挑発に乗ってしまえば、相手の策略に引き込まれてしまう可能性があります。残念ながら、アサド政権は崩壊してしまいました。しかし、アサド氏はおそらくロシアへ亡命したのではないかと思われます。



今回は、新しい政権に対して本格的に介入しないことが重要です。もし介入すれば、大規模な戦争に発展する恐れがあります。そのため、ここは介入せずに状況を見守るべきだという判断が必要です。


難民問題の深刻化

一方で、シリアにおいては難民問題がさらに深刻化するのかどうかが懸念されます。

現在、シャーム解放機構=HTS(タハリール・アル=シャーム)の指導者であるジャウラニ氏が主張しているのは、「我々は宗教的寛容を重視する政権を目指しており、これまでのアサド政権とは異なる」といった内容です。さらに、ヨーロッパに避難した難民がシリアに戻ってくる可能性もあると述べています。ただし、これが実現するかどうかは現時点では不明です。もしそれが本当ならば喜ばしいことですが、現実はまだ見通せません。

ここで重要なのは、英国守旧派が仕掛けた罠にイランやロシアが引っかかるかどうかです。もしイランやロシアが罠にかかり行動を起こせば、トランプ氏が進めようとしている中東和平やウクライナ和平の取り組みにも悪影響が及ぶでしょう。ロシアがこれらの和平に参加できなくなる可能性もあります。

さらに言えば、この状況はロシアとアメリカを再び戦争状態に追い込もうとする策略の一部とも関連していると考えられます。そのため、ロシアとイランがどのような対応をするのかが非常に重要なポイントになります。また、トランプ氏が主張しているように、アメリカも絶対に介入すべきではなく、不関与の立場を堅持することが求められます。

しかし、バイデン政権だから、一部の兵隊はシリアに駐留していて、アメリカも何百人が派遣されているんですよね。なので、変に関与すると、シリアでアメリカとロシアがぶつかることになりかねないので、絶対にやってはいけないことです。トランプはまだ大統領ではないが、絶対に不関与をすべきだと言って、圧力をかけているわけです。

「仲介をやるなら、中国にやらせたらどうだ」と言っています。これは中国とすればできないことはないです。残念ながら、我々としては中国にいい顔をさせるのは悔しいですけど、イランとサウジアラビアの国交正常化もやりましたしね。なので、そこには第三者的に関与できる大国として、役割があるのかもしれません。

こういうところは、意外にトランプさんは中国に対して寛容です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする