【関連】アサドとプーチンの残念な共通点
昨日と、今日午前0時掲載のシリア情勢についてのお話の【関連】情報です。
今回は、ロシアの事情通からの報告を頂きました。他に類のないご意見ですので、許可を得て掲載いたします。
★シリアの独裁者アサドとプーチンの共通点
皆さんも感じていらっしゃると思いますが、今、世界で不安定な国、地域が多くなっています。現状を見ると、韓国、ジョージア、シリアなどが大変なことになっています。今回は、長期独裁政権が倒れたシリアの話を。
2010年代はじめ、「アラブの春」というのが流行りました。チュニジア、エジプト、リビア、イエメンなどで、
長期政権が打倒されました。
シリアでも2011年から、アサド政権と反アサド派の対立が激しくなり、内戦が勃発。しかし、アサド大統領は優勢に戦いを続け、内戦勃発から13年経過しても、政権に留まり続けていました。なぜでしょうか?
「シリア内戦」は大国の「代理戦争」でした。
反アサド派を支援したのが、欧米とスンニ派の大国、サウジアラビア、トルコなどです。
一方、アサド派を支援したのが、ロシアとシーア派の大国イランです。
結局アサドがサバイバルできたのは、ロシアとイランの支援があったからなのです。
3年前の地図を見ると、アサドはシリアの8割ぐらいを支配しているように見えます。
※2021年の勢力図
反アサド勢力の支配地域は、ざっくり5%以下といったところでしょうか。ところが、反アサド勢力は息を吹き返しました。なぜでしょうか?
賢明な皆さんなら想像がつくでしょう。アサド政権最大の味方はロシア、2番目の味方はイランです。
ロシアは今、ウクライナ戦争で余裕がない。プーチンは強気を崩していませんが、弾薬を北朝鮮からもらい、戦場に北朝鮮兵を投入しています。余裕があれば、北朝鮮軍に頼らないでしょう。
イランは、どうでしょうか? イランは、「手下」を使って、イスラエルを攻撃させていました。具体的には、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派などです。
ところが、イスラエル軍は、ハマスとヒズボラに壊滅的打撃を与えました。そして、イスラエルは、トランプ新大統領のサポートを得て、イラン核施設を破壊する意向です。だから、イランは、イスラエル+アメリカとの戦争に備える必要がある。それで、シリアを支援する余裕がないのです。
アサドは、ロシアとイランからの支援をアテにできない状態で、反アサド派と戦わなければならない。だから、ボロボロになっていたのです。
「反体制派がシリア第2の都市アレッポを制圧した」とニュースが流れたのは11月30日でした。それからわずか8日で、首都ダマスカスは陥落。アサドは逃亡し、政権は崩壊しました。
2022年3月、国連総会でロシアのウクライナ侵略を肯定した国は4ヶ国だけでした。北朝鮮、ベラルーシ、エリトリア、そしてプーチンの親友アサド大統領のシリアです。プーチンは、数少ない盟友を失いました。これもプーチンの【 戦略的敗北 】といえるでしょう。
★独裁者アサドとプーチンの共通点
今回のアサド政権崩壊。「嗚呼、プーチン・ロシアと同じだな」と思いました。なぜでしょうか?
既述のように、シリアの反体制派が第2の都市アレッポを制圧したのは11月30日。首都ダマスカスが陥落し、アサド政権が崩壊するまで、わずか8日です。
反アサド派は、ほとんど抵抗を受けることなく、アサド政権を崩壊させることに成功しました。わいてくる疑問は、「シリア軍は何をしていたのだ?」ということです。
答えは、「何もしなかった」です。要するに、アサドの軍隊シリア軍には、アサドを守る意志や忠誠心が全然なかったということです。実をいうと、プーチン・ロシアも同じでした。
思い出されるのは、2023年6月23日から25日に起きた「プリゴジンの乱」。民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン。
ロシア正規軍がだらしない中、自ら前線に立ち、ウクライナ軍を大いに苦しめていました。それで、ロシアでは、「プリゴジンはウクライナ戦争の英雄だ!」と絶賛されていたのです。
ところが2023年5月、プリゴジンは、ショイグ国防相(当時)とゲラシモフ参謀総長を非難する動画を投稿。
「ショイグ~、ゲラーシモフ、弾薬はどこだ~!?」と鬼の形相で絶叫する動画が、世界に拡散されました。【動画】
この動画の翌月、彼は、ワグネルを率いてモスクワに向けて進軍したのです。
驚くべきは、プリゴジンが6月23日の1日だけで、人口114万人のロストフ・ナ・ドヌ、人口106万人のヴォロネジを制圧したことです。なぜそんなことが可能だったのでしょうか?
要するに、ロシア軍が全然動かなかったということでしょう。
ロストフ、ヴォロネジ、2つの100万人都市を制圧し、プリゴジン率いるワグネルは、破竹の勢いでモスクワに迫ります。しかし、モスクワから200キロの所で停止し、ロストフに引き返し、その後ウクライナにむかいました。
プーチンは、反乱に参加したプリゴジンとワグネルメンバーの罪は問わないとしました。
ところが2023年8月、プリゴジンの乗った飛行機が墜落し死亡。誰もが、「プーチンに殺された」と思ったのです。
シリア「反アサド派」とロシア「ワグネル」の共通点は、何でしょうか?
「正規軍がほとんど抵抗しなかったこと」です。
シリア「反アサド派」とロシア「ワグネル」の違う点は何でしょうか?
「反アサド派」は、決心して首都を制圧したことです。
プリゴジンには、クレムリンを制圧し、クーデターを実行する決意がありませんでした。その違いだけです。正規軍が無抵抗だったのは、シリアもロシアも同じ。
ここから何がわかるかというと、シリア軍もロシア軍も、アサドやプーチンに心服しているわけではない。「恐怖によって支配されているだけ」ということです。
忠誠心は全然ないので、あるきっかけで、あっという間に崩壊してしまう。そういう意味で、プーチンもアサドと同じ、「裸の王様」ということでしょう。
現在ロシア軍は、ドネツク州の戦場で、優勢です。トランプが大統領になれば、「現在の前線で停戦」「ウクライナをNATOに加盟させない」という条件で停戦交渉が始まるでしょう。そして、プーチンの要求が通る可能性は高いです。
とはいえ、プーチン政権もボロボロです。ロシアは、北朝鮮軍に参戦してもらわなければならないほど兵力が不足している。北朝鮮から弾薬をもらうほど、弾薬が不足している。軍事同盟国アルメニアやシリアを守れないほど余裕がない。
プーチン政権は盤石? 外からはそう見えます。アサド政権が盤石に見えたように。しかし、内部は腐ってボロボロです。何度も書いていますが、プーチンはすでに戦略的に敗北しているのです。