赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

④中国のロビー活動の実態——パンダロビー

2024-12-08 00:00:00 | 政治見解
④中国のロビー活動の実態 ——パンダロビー 




(続きです——本講演録は、特別に許可を頂いて公表いたしております。)


アメリカ議会で法案を通す一つのテクニックは、まったく関係のない法案の付帯決議として盛り込ませることなんですね。例えば、アメリカ連邦政府の予算案の付帯決議とし て、台湾に最新型のF16を売らなければならないという一文を、さらりと加えるんですね。

日本でもいろいろな重要法案、対決法案なんていうのがありますけれども、野党を説 得する時に、付帯決議に「3年後に見直さなければならない」みたいな一文を入れること によって、反対する相手側をだまらせて賛成に取り込むなんていうことは、よくあることなんですね。

アメリカのように、まったく関係のない法案の付帯決議として、この実現したい施策を盛り込むという高等テクニックというのは、日々議会の動きを細かくフォローしていなければ、なかなか気づかないものなんですね。だから、議会のルールに精通したプロでなければ、こうした動きを察知し、阻止できないために、ロビー会社が重宝されるわけなんです。

中国共産党政権がワシントンでのロビー活動を活発化させている現在、中国共産党政権のロビー会社、Kストリートのパットン・ボッグス社は、アメリカの国益の尊重は当たり前なんですけれども、台湾へのF16売却阻止に動いたりするあたり、巨額の金銭目当ての行動というのは、「パンダロビー」と呼ばれても仕方が無いのではないでしょうか。

この 「パンダロビー」というのは、私が勝手に作ったんですけどね。親中派のことをパンダ派がパンダを抱っこするという、そういう意味なんです。パンダロビーというのは私が名付けたんです。 

ワシントンにおける中国のロビー活動は、先ほど2010年頃から活発化し始めたと申し 上げましたが、ではそれ以前はどうだったのか。21世紀、2000年以降の動きを、アメリカの中国・ ロシア専門サイトのイースト・ビュープレスを参考に、具体的な例を引きなが ら、2010年前を振り返ってみたいと思います。

アメリカ通商代表部の中国事務所のストラトフォードという方がいらっしゃるんですけれども、ストラトフォード氏は2008年、ちょうど北京オリンピックの時ですね。北京に 事務所を開設した最大手のアメリカのロビー会社、Covington & Burlingのスタッフに加 わっているんですね。

同社の顧客の一つというのが、チャイナアメリカ、中国アメリカ交流財団でした。上院情報委員会のアシスタントとしてキャリアを始めた、このロビイスト のエンゴールド氏は、1993年から1995年にかけて、アメリカ上院の常任委員会の一つで 人事サービスを率いておったんですけれども、2009年から2015年までの間、この中国アメリカ交流基金、アメリカでのロビー活動に合計265万9,000ドル、約3億9,600万円を注ぎ込んでおります。

アメリカのロビイストの中国顧客リストには、主にアメリカ中国商工会議所、中国石油天然気集団、中国鉄鋼協会、中国海洋石油総公司などの企業組織が名を 連ねております。

2009年まで、Hogan & Hartsonという民間企業は、中国の公式顧客が取引するロビイスト企業の一つでした。2007年から2008年にかけて、同社は中国政府からサービス料と して66万4,000ドル、約1億円を受け取っておりました。まったくやっていなかったわけじゃないんですね。中国と2010年の前。

このHogan & Hartsonの活動に関する報告書に は、同社がアメリカの議会・政府、その他の政治機関が中国の利益に影響を与えたり関係したりできるかどうかについて、協議を行っていたということが記されております。 ちょっとこれだけだと、実際にどういうことを協議していたのか分かりづらいんですけれども。

ワシントンにおける中国ロビーの活動を語る上で、もうーつ申し上げたいのは中国系移民の存在。これも忘れてはなりません。ディアスポラとも呼ばれる、昔のユダヤの民ですけれどね。散り散りになっていろいろな所に住んでいるディアスポラ、移民ですよね。在米華人らがアメリカ中央政界に対し、陰に日向にロビー団体の役割、圧力団体の役割を果たしているから、無視できないと申し上げているわけでございます。

2000年頃に始まったワシントンにおける中国ロビー活動に、質的な変化が起きるんですけれども、これが活発化した2010年頃のことになります。中国サイドはアメリカのロビー会社に頼るには限度があることに気づいたんですね。2000年代。

いかに経済的に Win-Winの関係といっても、そこは共産党独裁の全体主義国家と、自由と民主主義のリー ダーであるアメリカですから、うまくいくはずがありません。中国にとっての大きな問題の一つは、自由の保護、そして天安門事件の参加者の迫害、そして現在の反体制派の問題。これは常にアメリカ側と議論しなければならない。これが彼らのとっての大きなストレスだったんですね。

1986年に起きました天安門事件に関して、実際アメリカ議会は共産党政権の残虐な対 応を非難する決議を、79採択しました。天安門で逮捕された人々を含む両親の囚人、政治犯の解放を求め、平和的な抗議者の殺害を非難しました。アメリカの議員らはまた、死刑 執行後に人体の臓器を利用する慣行、そして裁判も期限もなしに拘留すること、再教育の ための労働収容所を維持することを非難しました。

これらの決議は、武器禁輸を含む貿易制裁から、例えば国際オリンピック委員会に 2008年の夏のオリンピックを、北京から別の場所に移すよう求めるなどの政治制裁まで、さまざまな制裁措置を講じるよう、アメリカ大統領に求めるものでございました。アメリ カ議会ですね。天安門の関係でわーわーやっているわけです。いいことです。

アメリカ議会でもっとも積極的に中国の全体主義と戦った議員の一人とされるのが、ナンシー・ペロシ元下院議長です。2022年、台湾を夏に訪問した際、中国は怒り狂ってミサイルをバンバン飛ばして、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発、狙ったように飛ばしてきましたね。着弾しています。

彼女は中国のWTO (世界貿易機関)加盟にも反対し、これは日本は逆に外務省は入れろと言っていたんですよ。入れることが中国を国際慣行になじませて、民主化を進めることになるなんて日本政府は言っていましたけれども、なりませんでしたね。

それは置いておきまして、1990年、アメリカとの貿易における中国から 最恵国待遇を剥奪したほか、天安門事件の参加者や他の反体制派に対する迫害を非難する 決議を、ペロシさんはいくつか提出しているんですね。ペロシさんは、ここでは頑張っているんですけれども、トランプ前大統領の天敵でもございました。

下院議長となったペロシ氏は、反中国決議を支持し続けます。そして人権活動家やチベット、ウィグルの少数民族代表に対する迫害への報復として、アメリカ政府に北京オリ ンピックのボイコットを求めた議会の要請は、中国にとって大変な痛手になったんですね。

ペロシ氏はジョージ・ブッシュ大統領、子ブッシュですね、オリンピックの開会式に北京に行かないよう、勧告しています。彼女はインドで=前=仏教徒の精神的指導者であるダライ・ラマを訪問し、チベットで弾圧と迫害が続いていることを強く世界に印象づけました。

そこで動いたのが、ワシントンにおける中国ロビー最大手の、先ほどから何度も出てきているパットン・ボッグス社です。同社は2008年、アメリカ駐米中国大使館のために、ペロシ氏や上院民主党多数派のリーダーであるHリード、Jクライバーン、Hバーマン、 Hawk、ホイヤー、クローリーといった議員に影響力のあるアメリカ下院議員との会合を、たびたび手がけております。

そんなロビー活動も奏功しまして、ジョージ・ブッシュ 大統領はオリンピック開会式に北京を訪れました。

ただ、中国によるロビー活動の勝利かどうか、これはペロシ氏は2009年5月に中国を訪問しておりますけれども、ペロシ氏は人権侵害については一言も語っていないんですね。さらに彼女は、気候変動に関する会議で、地球温暖化はアメリカと中国が世界のルールを決めていくみたいな発言をして、皆を驚かせているんですね。あの対中強硬派だったペロシはどこに行ったんだという話なんですね。

(つづく)

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