①台湾侵攻のシミュレーション :230119情報
2023年1月9日 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)があるレポートを発表しました。そのタイトルは「The First Battle of the Next War」、中国の台湾侵攻のシミュレーションをまとめたレポートです。
このレポートに登場する主な関係国は4つ。台湾、中国、アメリカ、そして日本です。
公開された部分は160ページとそれほど多くはありませんがすぐに世界の主要のマスコミに取り上げられ、恐らく中国の当局、あるいは各国の軍事専門家や日本の自衛隊、現役の軍人たちもこのレポートを参考にしているのではないかと言われます。
では、このレポートの内容とは一体どんな内容なのか? そして日本はどう関わってくるのか? 国際政治の専門家による分析をお届けします。
■民間シンクタンクレポートの信頼性
アメリカ政府の行う戦争シミュレーションは大体が非常に悲観的です。例えば、これまで何回も米軍と中国人民解放軍との戦いのシミュレーションを出していますが、大体米軍が負けます。恐らくこれらのシミュレーションは軍事的秘密もたくさん入っているので公開する部分はほんの一部に過ぎません。しかし公開した部分は大抵米軍が弱い。
でも、これは国防予算を取る一つの手段であり一つの策略。米軍はこんなに弱いからもっと予算を増やせという、ある意味国会対策であり逆に信頼できません。
しかし、今回シミュレーションをしたのは民間のシンクタンク。政府と深い関係を持っていない民間の行うシミュレーションの方がより真実に近いとも言えるわけです。
シミュレーションを正確に行うためには、当事国の軍事状況、武器の数量、軍隊の数、軍の指揮系統といった内部の細かいことまで把握する必要があります。
特に、今回は、日米台が情報開示しても、侵略者である中国は情報を自ら提供することはありえません。そこで今回のCSISのシミュレーションの参加者は、だいたいがアメリカ軍のOB、そして国防総省のOBといった軍事状況も精通している専門家が集ってシミュレーションを行いました。
■シミュレーションされた4つのシナリオ
今回のシミュレーションには4つのシナリオがありました。
・Base(基本)
・Pessimistic(台湾からすると悲観的)
・Optimistic(台湾からすると楽観的)
・Taiwan Alone(台湾だけで戦争する)
全部で24回行われたシミュレーションの中で、中国が台湾を侵略して成功したのはたった1回だけ。それは「Taiwan Alone」―他国が手を差し伸べなかった時だけです。
中国が台湾に侵攻した際に、誰も助けない。アメリカも日本も武器も援助をせず、もちろん出兵もしないということはあり得るのでしょうか?
特に日本の政治家の場合こういう戦争になった場合の反応は大体予想はできます。「戦争はだめだ。平和は守れ」というような平和論を唱える。平和論を唱えれば、もう世界平和になる、恐らく日本の政治家たちはこのようなマインドを持っている人が多いのではないかと思います。
ただし、アメリカの場合は、今の民主党にしても共和党にしても、この平和論の信者は、そんなに多くはないと思います。
そして、米軍が介入すれば、他のどのシナリオも全て中国は失敗し、台湾を占領することはできませんでした。
■シナリオ成立のための4つの前提とその結果
では、このシナリオが成り立つ前提条件とは何でしょうか?
以下の4つの条件が挙げられます。
1.台湾による激しい抵抗
2.ウクライナモデル(武器提供のみの援助)は通用せず、即介入が重要
3.米軍の介入は日本の米軍基地を絶対利用しないといけない。 日本政府が協力的であることが必要
4.アメリカは敵基地を攻撃する長距離ミサイルの量を確保
これらにより、日本の協力のもと、米軍が介入することで中国の台湾侵攻は失敗します。
ですが、やはり戦争ですから、リスクがないということはあり得ません。
【続く】
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