赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

③トランプ次期大統領の人事——保険福祉長官他

2025-01-05 00:00:00 | 政治見解
③トランプ次期大統領の人事——保険福祉長官他




前回に引き続き、日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人となりを含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。


保健福祉長官に指名されたロバート・ケネディ・ジュニア氏

保健福祉長官にロバート・ケネディ・ジュニア氏が指名されました。彼はこの役職を強く望んでいたと言われています。その理由の一つに、巨大製薬会社が国民の健康よりも利益を優先する現在の厚生行政のあり方を改革するという使命感があります。ケネディ氏は弁護士として薬害問題などに取り組んできた経歴を持ち、製薬業界の利益優先主義に真っ向から対抗してきた人物です。

トランプ氏とは特に2023年7月13日の暗殺未遂事件後に急接近しました。その事件後すぐに会談を行い、ケネディ氏はトランプ支持を明確に打ち出しました。この時点から、次期トランプ政権の人事に関する話し合いが始まっていたと考えられます。ケネディ氏は、次期政権の重要な人事を決定する「インナーサークル」の一員として、トランプ氏から強い信頼を寄せられています。


特に彼が重視しているのはワクチン問題です。この問題は、新型コロナウイルス(武漢ウイルス)の起源やその拡散の経緯といった核心的なテーマに繋がります。彼は、国民に真実を伝えるべく積極的に行動し、製薬会社の利益のためではなく、本当に庶民の健康を守るための厚生行政を実現するために尽力する意志を持っています。こうした背景から、ケネディ氏が保健福祉長官として果たすべき役割は極めて重要です。

ロバート・ケネディ・ジュニア氏は、若い頃に薬物中毒を経験し、それを克服した過去があります。この経験から、違法薬物や麻薬の害といった薬害問題への取り組みにおいて、彼が最適な人物と言えるのではないでしょうか。これまでの経験が、薬害を含むさまざまな健康問題への深い理解と、改革への強い意志に繋がっています。

ただし、彼はCO2削減には反対の立場を取っており、この点についてはトランプ氏と意見が異なります。トランプ氏もこの違いを認識しており、「CO2削減の問題を除いて、他の分野で全力を尽くしてほしい」とケネディ氏に期待を寄せています。


政府効率省長官に指名されたイーロン・マスク氏とビベク・ラマスワミ氏

政府効率省(Department of Government Efficiency, DOGE)の長官には、イーロン・マスク氏とビベク・ラマスワミ氏が任命されました。この新設される官庁は、連邦政府の無駄遣いを徹底的に洗い出し、予算を大幅に削減することを目的としています。民間企業で効率的な経営を実践してきた2人がこの役割を担うことは非常に理にかなっています。彼らはすでに、最低でも2兆ドルの予算削減を目指すと明言しています。

DOGEという省の略称にちなみ、マスク氏とラマスワミ氏が共同で運営するアカウントから興味深いメッセージが発表されました。それは「現在、人材募集中」という内容で、その条件が非常にユニークです。「我々が求めているのは、小さな政府を実現する革命を推進するために、1週間80時間以上もの時間を費やし、地味な経費節減の仕事に取り組むことができる超高IQの人材です。そして、その仕事は給料なしです」というのです。


この募集にはさらに面白いニュアンスがあります。「将来的にテスラやイーロン・マスク氏の他の企業で雇用される可能性があるかもしれない」と暗に示唆されており、応募者にとっても魅力的な提案となっています。

また、応募プロセスについてもユニークです。「自分がまさにその人材だと思うなら、アカウントに履歴書を送ってください」と呼びかけており、特にトップ1%の候補者については、マスク氏とラマスワミ氏が直接その書類を検討するとしています。

トランプ氏は時折、「我々の政府には高いIQを持つ人材しか必要としない」というような発言をしています。また、各省庁の長官についても「IQの高い人材でなければならない」といった趣旨の発言をしてきました。ただ、このような表現は日本では少し受け入れにくいかもしれません。個人的には、こうした発言をあまり強調しない方が良いのではないかと感じることもあります。トランプ氏の演説の中でも、「IQの高さ」を強調する部分は控えた方が良いのでは、と思う場面があるのも事実です。

それはさておき、DOGE(Department of Government Efficiency)について、当初の人材募集では「無償で熱意を持って働ける人材」を求めているとしています。この姿勢は、効率的な政府運営への熱意を感じさせます。

ちなみに、この「DOGE」という名前は、イーロン・マスク氏が特に推奨している暗号通貨の名称とも一致しています。DOGEコインは柴犬をモチーフにしていることで知られていますが、今回のDOGE省の話題が出た後、この暗号通貨の価格が急騰したというエピソードもあります。ユーモアと時事が交差した、興味深い余談と言えるでしょう。


次期国連大使に指名されたエリス・ステファニク氏

次期国連大使には、エリス・ステファニク氏が指名されました。彼女はニューヨーク選出の下院議員で、1984年生まれです。今回のトランプ内閣においては珍しいハーバード大学出身者でもあります。

ステファニク氏が注目を集めたのは、アメリカの名門大学であるハーバード、イェール、プリンストンといったアイビーリーグで、反イスラエルや反ユダヤ主義的な運動が公然と行われていることに対し、各大学の学長を招致して責任を追及したことです。この公聴会では、彼女がこれらの超リベラルな学長たちを厳しく問い詰めた結果、辞任に追い込まれた学長も出ました。


ステファニク氏は多文化的な背景を持つ人物で、母親はイタリア系、父親はポーランド系とチェコ系の混血であり、カトリック信仰を持っています。


これらの長官級の人事は、上院の承認を得る必要があります。大統領が指名した候補者が否決されることは非常に稀であり、特に今回のようにトランプ氏が大統領選で圧勝し、上院でも過半数(100議席中53議席)を確保している状況では、その可能性はさらに低いと考えられます。ただし、上院内にはいわゆる「RINO(名ばかりの共和党員)」と呼ばれる反トランプ派議員も一定数存在します。

こうした状況下で、トランプ氏の人事に対して公然と反対するのは難しいものの、特にトランプ氏の方針を強力に実行しようとする人物、いわば「刀匠猛将」とも言える候補者に対しては、一定の反発や抵抗が予想されます。

(つづく)
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