赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

④トランプ次期大統領の人事——大統領首席補佐官、国境管理責任者他

2025-01-06 00:00:00 | 政治見解
④トランプ次期大統領の人事
——大統領首席補佐官、国境管理責任者他




前回に引き続き、日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人となりを含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。


大統領の議会承認を必要としないポジションについても、数名を紹介します。


大統領首席補佐官に指名されたスージー・ワイルズ氏

まず、大統領首席補佐官に任命されたのはスージー・ワイルズ氏です。彼女は女性であり、1957年生まれの67歳です。見た目は上品で落ち着いた年配のアメリカ女性といった印象ですが、その実、極めて優れた戦略家でもあります。

スージー・ワイルズ氏は、今回の大統領選挙において、トランプ氏の最高参謀の一人として選挙戦を指揮し、彼を勝利に導いた功労者の一人とされています。ホワイトハウスの首席補佐官としては、ホワイトハウス全体の運営を取り仕切る役割を担います。今後、トランプ氏に面会を希望する者は、彼女の承認を得なければならないという、大統領の右腕ともいえる存在です。


トランプ氏は、女性差別主義者だと批判されることもありますが、ワイルズ氏のように優秀な女性に最も重要な役職を任せていることからも、そうした主張が事実ではないことが明らかです。同様に、トゥルシー・ギャバード氏のような人物を国家情報長官(Director of National Intelligence)のような重要なポジションに任命するなど、性別ではなく能力を重視する姿勢を一貫して示しています。これがトランプ流の人事方針なのです。


トランプ氏は、過去にトランプタワー建設の際、現場監督に女性を起用したというエピソードがあります。彼は「仕事ができる人」を重視し、当時としては珍しく、大規模な建設プロジェクトの最高責任者に女性を任命しました。これはアメリカにおける建設業界でもほぼ初めての試みであり、トランプ氏の先進的な姿勢を象徴するエピソードの一つといえるでしょう。


国境管理の最高責任者に指名されたトム・ホーマン氏

次に、国境管理の最高責任者についてですが、この役職は特定の省庁の長官ではなく、国境管理そのものを統括するポジションです。ここに指名されたのがトム・ホーマン氏です。1961年生まれの彼は、写真からも伺える威厳のある風貌で、「国境管理を任せるには最適な人物」と評価されています。



ホーマン氏は、アメリカの移民税関捜査局(ICE)の局長代理を務めた経験があります。このポジションには、トランプ氏自身が彼を指名しました。しかし、正式な局長としての任命には上院の承認が必要で、その過程で承認が得られませんでした。これは、ホーマン氏が仕事において極めて厳格で、違法移民に対する取り締まりや帰還プログラムの実施を強力に推進していたことが理由とされています。

彼はトランプ氏と同様、違法移民の本国送還計画を全面的に支持しており、この方針に基づいて強力な国境管理を実現する役割を果たすと期待されています。


国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名されたマイケル・ウォルツ氏

非常に重要な役職の一つとして挙げられるのが、国家安全保障問題担当大統領補佐官です。このポジションは英語で「National Security Advisor」と呼ばれ、かつてヘンリー・キッシンジャー氏が務めた役職としても知られています。大統領に対する外交、安全保障、軍事政策の最高顧問としての役割を担います。このポストに指名されたのは、元下院議員のマイケル・ウォルツ氏です。



ウォルツ氏は、1974年生まれのフロリダ州選出の連邦下院議員で、MAGA派として活動してきました。特筆すべきは、彼の軍歴です。陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の隊員として、アフガニスタン、中東、アフリカなどの地域で戦闘任務に従事し、その後、陸軍の退役大佐となりました。さらに、グリーンベレー出身者として初めて連邦下院議員に選出された人物でもあります。

ウォルツ氏は現場経験を持つ軍人であり、戦場でのリアルな知識を活かして活動しています。特に、中国のスパイ活動に対して厳しい姿勢を示しており、中国共産党の浸透を防ぐための法律を次々と提案してきました。また、2020年のアメリカ大統領選挙における不正選挙の疑惑に関する意見書を最高裁に提出した議員126人の一人としても知られています。このように、トランプ氏の活動に忠実に寄り添い、裏切ることなく支援を続けてきた人物です。


内務長官に指名されたダグ・バーガム氏

一方、内務長官にはダグ・バーガム氏が指名されました。内務長官(Secretary of the Interior)は、一般的に地味な役職と思われがちですが、実際には非常に重要な役割を担っています。アメリカ連邦政府が所有する広大な土地や国立公園の管理が主な業務です。しかし近年、内務長官の役割はエネルギー問題とも密接に関連してきています。

バーガム氏は、この分野でどのような活躍を見せるのか注目されています。彼の指導のもと、連邦政府の資産管理やエネルギー政策がどのように展開されるかが、今後のアメリカのエネルギー戦略において重要な鍵となるでしょう。

カナダからメキシコ湾岸までを結ぶ石油パイプライン「キーストーンXL」、通称「Xパイプライン」このプロジェクトは、一時オバマ政権によって中止されましたが、トランプ政権で復活。その後、バイデン政権により再び停止されるという経緯をたどっています。このパイプラインには、アメリカのエネルギー政策において非常に重要な意義があります。



この計画に深く関わるのが、1956年生まれでノースダコタ州知事を務めるダグ・バーガム氏です。キーストーンXLパイプラインは、国有地を通過するだけでなく、ノースダコタ州内も横断します。そのため、国有地の利用許可を管理する立場として、内務省の役割が非常に大きいのです。

アメリカでは、連邦政府が所有する土地をエネルギー開発業者にリースし、その土地で石油や天然ガスの採掘が行われます。大手石油会社が直接土地を所有している場合もありますが、広大な国有地をリースすることが一般的な手法です。このリース許可の管理を担う内務省は、エネルギー政策の中核をなす機関といえます。

トランプ氏は、エネルギー政策において積極的な姿勢を示し、「石油も天然ガスもどんどん採掘し、エネルギー輸出国としての地位を取り戻そう」と提唱しています。実際、トランプ政権時代にはアメリカがエネルギー輸出国となり、国内物価の安定にも寄与しました。エネルギー価格、特にガソリン価格の低下は、経済全体にポジティブな影響を与えるとされています。このような背景から、ダグ・バーガム氏の役割は一見地味に見えますが、非常に重要かつ責任の重い仕事といえるでしょう。

バーガム氏の経歴も注目に値します。ノースダコタ州立大学を卒業後、スタンフォード大学でMBAを取得。その後、家族が営む農業関連ビジネスに携わり成功を収めました。また、ソフトウェア企業やベンチャーキャピタル企業を自ら立ち上げ、いずれも大成功を収めた実業家でもあります。地方のビジネス界で築いた財閥の出身でありながら、自力で起業家としての道を切り開いた人物です。

彼がこのような重要な役職に就くことには、アメリカのエネルギー政策と経済において大きな意味があります。


まだ正式に決定はしていませんが、財務長官候補として最有力とされているのがハワード・ラトニック氏です。ラトニック氏は、今回のトランプ政権の人事チームにおいて、5人いる幹部の1人であり、トランプ氏から非常に厚い信任を受けています。ユダヤ系の彼は、債券市場で叩き上げのベテランとして知られ、現在、名門証券会社キャンターフィッツジェラルドのCEOを務めています。

キャンターフィッツジェラルドは、アメリカ連邦準備制度(FRB)のプライマリーディーラーに指定されている24社のうちの1社です。プライマリーディーラーとは、財務省が発行するアメリカ国債を直接購入できる特別な資格を持つ証券会社のことを指します。通常、財務省が発行する国債は、まずこれらのプライマリーディーラーが買い付け、その後、一般の投資家や企業に販売されます。この仕組みにより、キャンターフィッツジェラルドはアメリカの財政運営に深く関与する重要な立場にあります。

ラトニック氏は、債券市場の全体像を深く理解している人物として評価されています。トランプ政権が掲げる予算削減や無駄遣いの排除において、彼の知識と経験は極めて重要な役割を果たすと期待されています。イーロン・マスク氏やビベク・ラマスワミ氏らと協力し、連邦予算の効率化を進める中で、国債の発行残高を徐々に削減し、国家の財政健全化を図ることが目標とされています。

ラトニック氏のように債券市場に精通した人物と協力することで、アメリカの財政運営における課題の克服に向けた大きな一歩を踏み出せるのではないかと期待されています。

(つづく)
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