赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

財務官僚の国防意識に喝! コラム(499)

2022-12-20 00:00:00 | 政治見解



コラム(499):財務官僚の国防意識に喝!
 


わが国の防衛費は2027年度におよそ9兆円となる新たな計画が閣議決定されました。

気になるのは、国防に関する議論よりも、防衛費が現在の1.6倍となることから財源確保に関する議論の方がまかり通っていることです。メディアでもそれが中心に報道され、国を守るという本質的な議論を避けているようにも見えます。問題の本質が財務省の意見に振り回されているからだと思います。

2022年度の防衛費はおよそ530億ドルです。米国の7,176億ドル、中国の3,242億ドルとなり大きく水をあけられています。中国の98年頃の防衛費は日本と同程度でしたので、中国の軍事的な脅威は、この数字を見るだけでもわかります。

欧州各国ではロシアによるウクライナ侵略を踏まえ防衛費増へ動いており、ドイツはGDP比1%台だった国防費を2%以上に引き上げる方針を打ち出しました。なお、GDP比2%という割合は北大西洋条約機構(NATO)の基準にもとづきます。


防衛費増大に伴い岸田首相は「国民の自らの責任」という発言で増税を示唆する発言が波紋を広げました。「防衛費のために増税する」という発言を反対側から読めば「増税がいやなら、防衛費増を行わない」というニュアンスで国民を脅してきましたが、こんなのは財務官僚のいかにも考えそうなことです。

財務省にとっては、国歌国民をまもることよりも財政のことの方が重要なのですが、中国や北朝鮮に攻め込まれて国が滅びてしまえば、財務省の考え方は本末転倒だということは誰にも理解できることです。

では、なぜ、財務省がお金のことばかり気になるのか。それは財源となる国が使えるお金(歳入)は2種類しかないからです。所得税や法人税、消費税などの税金を上げることか、国債(公債)と呼ばれる国の借金を増やすことしかありません。

増税は法人・個人の負担の増加として批判が起こりますし、一方で、国の借金は「借金=悪」という固定観念からこれまた議論は起こりますが、財務省にとっては、財政の健全化を理由に国の借金が増えることを極端に嫌がります。

では、本当に借金は悪なのでしょうか。ビジネスの世界では「赤字倒産」「黒字倒産」があります。損失がでていれば(赤字であれば)倒産することはイメージができます。黒字倒産という言葉があるのはなぜでしょうか。

黒字とは利益が出ていること(収入が支出より大きい)、赤字とは損失が出ていること(収入が支出よりも少ない)ことを指します。利益が出ていても(黒字であっても)、会社としての支払不能になることがあるからです。このことから、お金が回り続ければ会社は存続可能なのだということも理解できるのではないでしょうか。

つまり、お金を借り続けられ、利息の支払いさえできれば借金は怖くないといえます。では国(国債)に置き換えるとどうなるのでしょうか?

「国債60年償還ルール」というのがあります。国債は借換債を含めて全体を60年で償還(返済)すると決められています。財務省は財務健全化、プライマリーバランスの黒字化を掲げています。このような考えのもとでは国債発行は悪となり、増税を正義とする論調になりやすいともいえます。

もしも、60年償還ルールがなくなり、国債を借り続けられたならどうなるのか。60年ルールによって国の支出(歳出)に償還のための費用が計上されており、22年度の償還費は16兆円超にのぼります。この額を防衛費を含めた必要に迫られた費目に転用できる可能性があります。

また、国債は経済にどのような影響を与えるかといえば、個人が購入する国債は1つしかありません。これらは国によってしっかり管理されています。例えば、建設公債は公共事業に、復興債は東日本大震災からの復興事業に用途を制限しています。何らかの事業を行うためには民間の力が必要となり、結果的に経済活動の活性化にもつながるのです。

以上のようにみていくと、国の借金である国債を頭ごなしに否定するのではなく、経済発展にどう活用できるかという視点からの議論も必要だと思います。国債は「将来世代の負担」という言葉を用いて忌み嫌われていますから、「借金」としてとらえるなら、たしかに負担になります。しかし、民間への投資と考えると経済発展に寄与する原資になりえます。

低成長が続く経済インフラこそ、将来の負担とはいえないでしょうか。道路や橋は次の世代にインフラを届けるための建設国債が認められているわけで、防衛予算は消耗費といわれる方が間違っていますし、防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だといえるものではないでしょうか。政府はもっとそのことを強調すべきではないかと思います。

福井県立大学の島田洋一教授はこう語ります。財務官僚はその言葉を真剣に受け止めるべきと思います。
――レーガン米大統領は、「減税」「規制緩和」「国債による軍備拡張」を進め、成長の果実で国債を償還、ソ連を崩壊させました――



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