コラム(479):
① 台湾侵攻が現実のものに――中国の動向
中国の台湾侵攻が現実のものとなりつつあります。共産党大会で党規約に「武力侵攻を放棄しない」と初めて明記したことで習近平氏の決意が本物であることを内外に示しました。
それでも、「プーチンのウクライナ侵略失敗の事例もあるし、そこまで習近平は愚かではないだろう」と思う人もいるようですが、はっきり言って習近平氏は愚かで一般常識で判断してはなりません。
習氏は独裁者になってしまって正常な判断力は失ってしまった上に、独裁者の機嫌をとるために過激な発言と行動を繰り返すしかなくなった共産党の幹部連中にとっては、軍事侵攻を率先すること以外に生き延びる道はありません。台湾侵攻は、成功するか否かにかかわらず、たとえ人民解放軍が海の藻屑になろうとも、絶対に成し遂げなければならない命令なのです。これで、台湾に隣接する沖縄も再び戦禍の悲しみを迎えざるを得なくなりました。
なお、中国軍が海の藻屑となる理由については、当ブログ『台湾有事と中国軍の動向』中の軍事アナリスト分析「台湾への侵攻能力」の項をご覧ください。)
現代中国人の行動原理
現在の中国で出世するための条件は、習近平氏に対する絶対的忠誠を示さなければなりませんが、それを具体的に示す方法の一つに、習氏への批判に対して徹底的な反論をすることが挙げられます。
諸外国から中国批判があった場合、趙立堅報道官がすさまじい反論を行います。顔をみれば、「あぁ、あの人か」と読者はすぐわかると思いますが、彼はもともと学者タイプの外交官でおとなしいとの評価でしたが、蓮舫さんなみのカミツキガメになって、いまや外交部報道局副局長にまで出世しました。
もう一人、例を上げるなら、国務委員兼外相から共産党政治局員に昇格し外交のトップとなった王毅氏でしょう。駐日大使も経験したことがある王毅氏も習近平体制の一期目までは温厚で良識的に振舞っていましたが、習体制二期目に入るとアメリカ相手に過激な発言を繰り返すようになりました。そうしなければ生き延びれないことを理解したからだと思います。今回、年齢制限を超えて異例の出世となりました。
先日、イギリス・マンチェスターの中国総領事館で、香港の民主化を求めるデモに参加していた男性が領事館内に引きずり込まれ暴行される事件がありました。この事件を主導したのが領事だと言われています。この処置で領事は覚えめでたく評価の対象となったようですが、これを取り締まらなければ逆に自分が処罰されていたと言われています。だから、外国であろうが自分の生き残りをかけて行動しなければならないのです。
これらから推論できることは、出世のためというよりは、生き延びることを優先させるために、習氏への忠義ぶりを具体的に行動に示さないといけないわけです。したがって、習氏が「台湾侵攻」を口にすれば、忠誠の証として、習氏の考え以上に「台湾侵攻」を実現せねばならならないのです。仮に反対でもしようものなら、胡錦涛前国家主席と同様に公開処刑されることになります。
米中の軍事衝突はすでに回避できない状況にある
すでに中国の台湾侵攻計画は開始されていると見た方がいい。それは米中双方とも戦争準備を始めているからです。中国軍、米軍ともに体制を整えつつあります。
中国軍の動向
台湾に侵攻する場合、最終的な決定を下すのは共産党最高指導部の政治局常務委員会(トップ7)ですが、戦闘計画の策定と実行は軍最高指導機関の中央軍事委員会の任務です。
共産党大会で発表された中央軍事委員会の人事では、習氏が軍の中で最も信頼するとされる張又侠上将を制服組トップの副主席に留任させました。張又侠氏は72歳で、これまでの中央軍事委員会の慣例ならば引退する年齢でした。習氏と張又侠氏は、父親同士が1949年の国共内戦で戦友という縁であったことが影響しているとの話です。
今回、中央軍事委員会には習氏の息のかかった3人の新メンバーが送り込まれましたが、上記の張又侠氏に次ぐ地位には、台湾を作戦区域に含む東部戦区の前司令官だった何衛東上将が就きました。今年8月、ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発して中国が台湾海峡付近で実施した軍事演習を統括した人物です。
これらの人事を背景にして、ある軍事専門家は「習氏が台湾侵攻で優位に立ちたければ素早く、電撃的に行動しなければならず、ためらう余地はない。ウクライナの事態で、補給態勢の構築が遅れて身動きできなくなるのを避けるため」と指摘しています。
台湾侵攻は想定外に早くなる可能性が高まってきました。
(つづく 次回は「② 台湾侵攻が現実のものに――米軍の動向」です。)
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