コラム(430): メディアの「円安」報道に疑問あり
メディアのニュースはいつも「てぇへんだ、てぇへんだ!」で報じられます。現在の「てぇへんだ!」のニュースは、最も重要なウクライナ問題よりも円安問題にシフトしたようです。
円安もアベノミクスのせいにしたい?
円安でメディアは「日本経済が大変なことになる」と不安を煽っているのですが、一方で、なぜ「円安が悪いのか」という詳しい説明はありません。その原因は、メディアがマクロでの経済の動きを理解していないからだと思います。
もし仮に、急激な円高局面になったら、「てぇへんだ!」とまた国民を煽り立てることは目に見えています。メディアは円安であろうが円高であろうが関係なく条件反射的に騒ぎ立てることが快感であるように見えます。
しかも、現在の円安局面をめぐっては、ウクライナを侵略したロシアにその根本原因があるのにその問題を無視し、また経済の仕組みや生き物である為替が刻々と変動する事実を度外視して、このような円安局面に手を打たないのは日本政府と日銀に問題があり、最終的にはアベノミクスの失敗に起因すると結論づけようとしていることは間違いありません。
このことは、テレビ朝日の玉川さんや立憲民主党の国会質問の言葉の端々にアベノミクス批判が織り込まれているのですぐにわかります。いつまでたっても安倍批判から抜け出せない野党とメディアは、安倍元首相の存在なしには生きられないようです。
余談になりますが蓮舫さんもその一人で、安倍元首相が家で皿洗いをしていることに対してもかみつきました。結局、彼らは安倍元首相を批判することで、影としてしか、存在することが許されていないように見えます
物価高の円安と物価下落の円安
ところで、メディアが騒ぐほど現在の円安は悪いのでしょうか。
経済専門の日本経済新聞電子版は「135円20銭を超えて円安が進むと金融機関の破綻が相次ぎ『日本売り』ムードが強くなっていた1998年以来の安値に。世界との金融政策のスタンスの差を映します」とあります。
産経ニュースも「円安は輸入価格を引き上げ原材料価格の高騰による物価高を助長し、日銀や政府に対する風当たりは強まっている」と記しています。
また朝日新聞デジタルは「100円ショップや銭湯の閉店相次ぐ 増えるコスト、円安が追い打ち」との見出しで「海外で活動する大企業の利益は円安でふくらんでいますが、中小企業まで恩恵は及びにくいのが現状です。あなたの街の身近なお店は、大丈夫でしょうか」と記述しています。
これらを見ますと、とんでもない事態に日本が直面しそうですが、記事の正確さから言うと、意外にも朝日>産経>日経の順であるような気がします。その理由は以下に・・・。
円安の局面は、過去には1980年代、と1997、98年の2回です。
1980年代の円安は輸入物価を押し上げる円安で、「物価高での円安」の代表例となっています。一方、1997年からの円安は、大手の証券会社、銀行の経営破綻が相次ぐ中での円安で、物価も下落、デフレへの転落懸念も広がり、株価も下落傾向が広がりました。円安と株安の同時進行、それは日本経済を悲観したキャピタル・フライト(資本逃避)が懸念されるものでした。
今回の円安は1980年代の「物価高での円安」の再来と見られ、日経新聞のいう『日本売り』ムードとは異なる情勢で、むしろ朝日新聞のほうの認識が正しいと思われます。
円安、円高、あざなえる縄の如し
メディアは総じて「円安が悪い」と書き立てているのですが、果たしてそれが真実とは限りません。物価高では一般の人の生活を直撃しますが、一方で大きく収益を伸ばした企業もあります。たまたま目にした投資関連のサイトには「トヨタは6年ぶりに最高益を更新」、「オリンパスは14年ぶりに最高益を更新」、「イビデンは15年ぶりに最高益を更新」という見出しをみつけました。
要は、円安で儲かる企業もあれば、円高で儲かる企業もあるということです。「禍福はあざなえる縄の如し」と言う格言がありますが、結局、メディアは「福」を見ず「禍」ばかりを見ているということになります。
もし、円安が企業全体に大打撃を与えそうなら、経済界は黙っていないはずです。現時点で何も言わないということは経済化にとってまだ耐えられるということになります。
今回の円安は物価高を招来していることこそ問題だと思います。ただし、物価高への抑制については日本政府意外に頑張っているのも事実です。例えば、ガソリンは税以上の35円の補助金をつけて1リットル168円をめどに抑えられようとしていますが、イギリスでは1リットルあたり300円を超えた模様です。
しかも、物不足による物価高ですので日本政府もやることが限られます。したがって、国際的な資源高が原因であり、世界的な値上がり幅を抑えるためには、その主因であるロシアによる侵略戦争を止めさせることの方が重要だと思います。
それゆえ、メディアはロシアを痛烈に批判することに意識を集中すべきで、日本国政府を批判する必要はありません。何でもかんでも日本政府批判にもっていこうとする態度は改めるべきです。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz