赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

追補 トランプ次期大統領の人事——エネルギー長官他

2025-01-08 00:00:00 | 政治見解
追補 トランプ次期大統領の人事——エネルギー長官他




引き続き、日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人となりを含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。


トランプ政権の人事がほぼ固まりました。閣僚人事については上院の承認が必要ですが、主要な省庁のトップである長官の選任が進み、それに続く補佐官クラスの人事もほぼ大筋が決定しています。異例のスピード感で進められており、非常に好ましい展開と言えます。

その中で特筆すべき人物として挙げられるのが、エネルギー長官に指名されたクリストファー・ライト氏です。この人物は、1965年以来のエネルギー省長官として注目されています。ライト氏はCO2削減論を全面的に否定する立場を取っており、その背景には彼の経歴が大きく影響しています。

彼は、シェールオイルやシェールガスの採掘に用いられる水圧破砕法(フラッキング)の分野で、北米第2位のクラッキング会社のCEOを務めていました。そのため、石油や天然ガスの採掘を推進し、「人間活動がCO2排出によって地球温暖化を引き起こしている」という主張を完全に否定しています。経済成長を重視したこのような姿勢は、アメリカ経済のさらなる発展を期待させるものと言えるでしょう。

第2次トランプ政権の閣僚名簿はすでに完成しており、その速さは異例と言えるでしょう。他の大統領の政権移行チームと比較しても、非常に迅速に作業が進んでいます。

トランプ氏が11日に発表したメッセージでは、次のように述べられています。

(ここは前日の『⑤トランプ次期大統領の人事——司法長官、財務長官他』と重複している部分があります。)

「ここに私の政権移行に尽力してくれたハワード・ラトニック氏とリンダ・マクマホン氏に感謝の意を表したいと思います。」



このラトニック氏とマクマホン氏は、政権移行チームの中核を担い、各省庁の長官や要職を決定する役割を果たしました。新人事チームの中心メンバーである二人について、トランプ氏はこう続けています。

「私達は史上最高の、最も多様性に富んだ内閣を記録的な早さで任命しました。今後彼らは非常に重要な省庁である商務省と教育省の仕事に集中的に取り組みます。」

ラトニック氏が商務長官に、リンダ・マクマホン氏が教育省の主要業務を担うということです。

さらに、トランプ氏はこう述べています。

「現在、閣僚を決めましたし、閣僚の副官および補佐官ポストの任命も予定より早く行っています。まもなく米国史上最もアメリカファーストの政権が誕生します。ご期待ください。最高のときはまだこれからです。「The Best is Yet to Come.」というふうに結んでいます。

エネルギー省の長官に任命されたのは、クリストファー・ライト氏です。1965年生まれの59歳で、北米で2番目に大きな水圧破砕会社「リバティ・エナジー」のCEOを務めています。

「水圧破砕」とは、一般的に「フラッキング」と呼ばれる手法で、地中に高圧の水を注入し、地層を破砕することで天然ガスや石油を採掘する技術です。このフラッキング手法の確立によって、「シェールガス」や「シェールオイル」の生産が可能となり、北米、特にカナダやアメリカでのエネルギー産業の発展に大きく貢献してきました。



クリストファー・ライト氏がCEOを務めるリバティ・エナジーは、その業界で第2位の規模を誇る企業です。また、同氏は興行権のロイヤリティを管理する会社の取締役や、原子力関連技術企業の重役も務めています。

注目すべきは、ライト氏の環境問題に対するスタンスです。彼は、人間活動によるCO2増加が地球温暖化の原因であるという議論を完全に否定しています。そのため、CO2削減のために原子力推進を訴える論者とは異なります。

トランプ氏は「脱原子力」を掲げていますが、その理由として「原子力は規模が大きすぎ、仕組みが複雑で、費用がかかりすぎる」と非常に的確に指摘しています。ただし、原子力関連業界を完全に敵に回すつもりはないようです。その一環として、原子力技術会社の取締役も務めているライト氏を指名したことは、原子力推進派への配慮と考えられます。ちなみに、イーロン・マスク氏は原子力推進派として知られています。

ライト氏は2019年に興味深い行動をとっています。それは、水圧破砕液を自ら飲むことで、その液が人体に無害であることを実証したというものです。この出来事は、2019年にLinkedInに投稿された動画で紹介されています。水圧破砕には、特殊な化学物質を含んだ水が使われており、その水が地下水を汚染する可能性が指摘されていました。しかし、ライト氏はリバティ・エナジーの仲間とともにこの液体を飲み、その安全性を証明したのです。

さらに、ライト氏は2023年1月にLinkedInに投稿した動画の中で、「気候危機は存在しない」という考えを明確に表明しました。彼は「人間が化石燃料を燃やすことでCO2が増加し、それが地球温暖化を引き起こす」という一般的な見解を否定し、「エネルギー転換の必要性もない」と主張しています。


こうした考えを背景に、アメリカはシェールだけでなく、天然ガスや石油の採掘を積極的に進めていく方針です。安価なエネルギーを利用してインフレを抑制し、経済発展を促進する。その結果、AI革命を支える電力も確保し、さらなる進化を遂げようというスタンスを取っています。 

(了)


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